アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ

夜霞

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アリーシャ【下】・5

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「わがまま……」
「我が儘じゃなくても、自分の意見で構わない。今すぐじゃなくていい、少しずつ自分の気持ちを話してくれ」

壁にかかっている時計を見ると、夕食の時間が過ぎていた。
いつもなら、食堂が混雑する前に二人分の食事を取りに行っていたが、今行くと混雑しているだろう。
それでも、今取りに行かなければ、二人分を確保するのは難しそうだ。

オルキデアがソファーを立つと、「あの!」とアリーシャは声を上げて立ち上がる。

「実は、ずっと言おうか迷っていたことがあって……」

もじもじとするアリーシャに、「なんだ?」と安心させるように優しい声音で話しかける。

「あ……。や、やっぱり、いいです……。大したことじゃないので……」
「大したことじゃなくてもいい。言ってみろ」

みるみる内に顔が真っ赤になっていくアリーシャに、オルキデアは近づいていく。

「本当に大したことじゃないので……」
「構わない。俺に話しづらいことなのか?」

否定するように首を振るアリーシャに、オルキデアは更に近づく。
後ろに身を引こうとしたアリーシャだったが、ソファーに躓いて後ろに倒れそうになった。
慌ててオルキデアが腕を伸ばしてアリーシャの左手首を掴むと、反対の手もアリーシャの腰に回して、華奢な身体を支えたのだった。

「あ、す、すみません……」

支えたアリーシャの身体はほっそりとしていて、これまで抱いたどの女よりも細く感じた。

「随分と細いんだな。あっちでは食事も満足に出されなかったのか?」
「そうですね……。忘れられたことも多々ありました。でも、その分、自分で料理が出来るようになったので!」
「ほう。料理が出来るのか。いつか君が作る料理を食べてみたいものだな」

オルキデア自身は食にこだわりは無いが、アリーシャが作る食事がどんなものなのか気になった。
アリーシャは「大したものじゃありません」と否定したが、それでも興味があった。

「オルキデア様の口に合わないかもしれませんし……」
「食べてみなければわからないだろう。だが、アリーシャの作るものなら、きっと美味いだろう。……それで、話したいこととは何だ?」

態勢を立て直したアリーシャから手を離すと、「あの……」とアリーシャは俯きながら話し出す。

「オルキデア様はコーヒーがお好きなんですか?」

「いつも飲まれてますよね?」と聞かれて、オルキデアは考える。

「気にしたことは無いが、言われてみればそうかもしれん」

言われてみれば、仕事中や来客時だけではなく、いつも食後にも飲んでいた。

ーー思えば、戦場以外では、飲み物はコーヒーか酒しか飲んでいない気がする。

「それがどうかしたか?」
「食後に、私の分のコーヒーも持って来て頂けるとのは嬉しいです。でも、私、本当は……」

アリーシャは覚悟を決めると、じっと見上げてきたのだった。

「本当は、コーヒーじゃなくて、紅茶が飲みたいんです」

怒られると思ったのか、身を縮めたアリーシャに、しばらくぽかんとしてしまう。
オルキデアは瞬きを繰り返すと、ようやく呟いたのだった。  

「紅茶が……?」
「コーヒーも嫌いではありませんが、時間帯によっては飲んだ後に眠れなくなるんです。なので、紅茶とか、なければ、お水がいいんですが……」
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