106 / 357
おれから見た親友・9
しおりを挟む
「セシリアさんは何色のカーネーションがお好きですか?」
「ピンクでしょうか。でも、好きな女性にお渡しするならオレンジがいいです。花言葉にも『熱愛』や『純粋な愛』という意味があります」
クシャースラは迷った末に、「ピンクとオレンジのカーネーションを六本ずつ使って花束を作って頂けませんか?」とセシリアに頼む。
花束を作るセシリアに、リボンやラッピングに使用する不織布の色を聞かれる。
その都度、クシャースラはセシリアに何色が好きか尋ねていく。
そうして、赤色の不織布で花を巻き、ピンク色のリボンをつけて、二色のカーネーションの花束が完成すると、クシャースラは決して高くはない代金を払って、受け取ったのだった。
「あの……」
花束を受け取ったクシャースラは、覚悟を決めてセシリアに話しかける。
「はい?」
「この後、お時間を頂けませんか? セシリアさんにお話ししたいことがあるんです」
「この後ですか? ですが私はこの後、牛乳屋の仕事を手伝わないといけませんし……」
セシリアの両親に聞いたが、最近、セシリアは夕方に花屋の仕事を終えると、父親が働く新聞の印刷工場の得意先である牛乳屋の仕事を始めたらしい。
それが終わると、家に戻ってきて、今度は日付が変わるまで内職をするそうだ。
このままでは、益々、セシリアは身体を壊すだろう。早くなんとかしなければならない。
「お時間は取らせません。少しだけ、おれと話す時間を下さい!」
「でも……」
すると、そんな二人を焦ったく思ったのか、店主の女性が「セシリア、休憩に入っていいよ」と声を掛けてくれる。
「まだ休憩には早い時間ですが……」
「いいから、いいから。お店も空いている事だし、休憩しておいで」
セシリアはしばし迷った後に、クシャースラに頷いたのだった。
「あまりお店からは離れられませんが、それでもいいですか?」
「ありがとうございます。では、お店の裏側でお話ししませんか」
セシリアが頷くと、二人はお店の裏側にある勝手口前までやって来たのだった。
「あの、セシリアさん……。その……」
セシリアと二人きりになるのは、これが初めてであった。
ただ、いざ二人きりになると、緊張から何を話せばいいの分からなかった。
「はい?」
存在感を表すように、クシャースラが抱えていた花束が音を立てる。
ーーこういう時、アイツならどうする?
こんな時、親友なら言葉で表すのか、身体で表すのか。
いや、さすがに身体はまずいか。
急に抱きついて、怖がらせて、嫌われたら意味がない。
そうなると、言葉で表すしかない。
ただ、何と言えばいいのかーー。
「あの、オウェングス様?」
訝しむように、セシリアは首を傾げる。
クシャースラは覚悟を決めると、「セシリアさん!」と、セシリアに近づくと花束を差し出す。
「これをどうぞ」
「これって……今買った花束ですよね?」
「はい! 貴女の為に選びました! 受け取って下さい!」
セシリアは花束を受け取ると、「ありがとうございます」と礼を述べる。
「花束を作ることは多々ありますが、プレゼントされたことはないのでとても嬉しいです。それで、私の好きな花や色を聞いたんですね」
花束を作っている時も気づいたが、受け取る時に見えたセシリアの手は、以前に比べてあかぎれや細かい切り傷が増えていた。
おそらく働き詰めで、手入れをする時間も無いのだろう。または手入れをしても追いつかないのだろう。そんなセシリアを思うと、胸が痛くなる。
そうして、心の底から花束を嬉しげに見つめているセシリアに向かって、クシャースラは頭を深く下げたのだった。
「セシリアさん!」
「はい?」
「おれは初めて出会った時から、ずっとセシリアさんのことが好きです!」
そうして、右手を差し出したのだった。
「結婚を前提におれと付き合って下さい!」
「ピンクでしょうか。でも、好きな女性にお渡しするならオレンジがいいです。花言葉にも『熱愛』や『純粋な愛』という意味があります」
クシャースラは迷った末に、「ピンクとオレンジのカーネーションを六本ずつ使って花束を作って頂けませんか?」とセシリアに頼む。
花束を作るセシリアに、リボンやラッピングに使用する不織布の色を聞かれる。
その都度、クシャースラはセシリアに何色が好きか尋ねていく。
そうして、赤色の不織布で花を巻き、ピンク色のリボンをつけて、二色のカーネーションの花束が完成すると、クシャースラは決して高くはない代金を払って、受け取ったのだった。
「あの……」
花束を受け取ったクシャースラは、覚悟を決めてセシリアに話しかける。
「はい?」
「この後、お時間を頂けませんか? セシリアさんにお話ししたいことがあるんです」
「この後ですか? ですが私はこの後、牛乳屋の仕事を手伝わないといけませんし……」
セシリアの両親に聞いたが、最近、セシリアは夕方に花屋の仕事を終えると、父親が働く新聞の印刷工場の得意先である牛乳屋の仕事を始めたらしい。
それが終わると、家に戻ってきて、今度は日付が変わるまで内職をするそうだ。
このままでは、益々、セシリアは身体を壊すだろう。早くなんとかしなければならない。
「お時間は取らせません。少しだけ、おれと話す時間を下さい!」
「でも……」
すると、そんな二人を焦ったく思ったのか、店主の女性が「セシリア、休憩に入っていいよ」と声を掛けてくれる。
「まだ休憩には早い時間ですが……」
「いいから、いいから。お店も空いている事だし、休憩しておいで」
セシリアはしばし迷った後に、クシャースラに頷いたのだった。
「あまりお店からは離れられませんが、それでもいいですか?」
「ありがとうございます。では、お店の裏側でお話ししませんか」
セシリアが頷くと、二人はお店の裏側にある勝手口前までやって来たのだった。
「あの、セシリアさん……。その……」
セシリアと二人きりになるのは、これが初めてであった。
ただ、いざ二人きりになると、緊張から何を話せばいいの分からなかった。
「はい?」
存在感を表すように、クシャースラが抱えていた花束が音を立てる。
ーーこういう時、アイツならどうする?
こんな時、親友なら言葉で表すのか、身体で表すのか。
いや、さすがに身体はまずいか。
急に抱きついて、怖がらせて、嫌われたら意味がない。
そうなると、言葉で表すしかない。
ただ、何と言えばいいのかーー。
「あの、オウェングス様?」
訝しむように、セシリアは首を傾げる。
クシャースラは覚悟を決めると、「セシリアさん!」と、セシリアに近づくと花束を差し出す。
「これをどうぞ」
「これって……今買った花束ですよね?」
「はい! 貴女の為に選びました! 受け取って下さい!」
セシリアは花束を受け取ると、「ありがとうございます」と礼を述べる。
「花束を作ることは多々ありますが、プレゼントされたことはないのでとても嬉しいです。それで、私の好きな花や色を聞いたんですね」
花束を作っている時も気づいたが、受け取る時に見えたセシリアの手は、以前に比べてあかぎれや細かい切り傷が増えていた。
おそらく働き詰めで、手入れをする時間も無いのだろう。または手入れをしても追いつかないのだろう。そんなセシリアを思うと、胸が痛くなる。
そうして、心の底から花束を嬉しげに見つめているセシリアに向かって、クシャースラは頭を深く下げたのだった。
「セシリアさん!」
「はい?」
「おれは初めて出会った時から、ずっとセシリアさんのことが好きです!」
そうして、右手を差し出したのだった。
「結婚を前提におれと付き合って下さい!」
2
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる