アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ

夜霞

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おれから見た親友・9

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「セシリアさんは何色のカーネーションがお好きですか?」
「ピンクでしょうか。でも、好きな女性にお渡しするならオレンジがいいです。花言葉にも『熱愛』や『純粋な愛』という意味があります」

クシャースラは迷った末に、「ピンクとオレンジのカーネーションを六本ずつ使って花束を作って頂けませんか?」とセシリアに頼む。

花束を作るセシリアに、リボンやラッピングに使用する不織布の色を聞かれる。
その都度、クシャースラはセシリアに何色が好きか尋ねていく。
そうして、赤色の不織布で花を巻き、ピンク色のリボンをつけて、二色のカーネーションの花束が完成すると、クシャースラは決して高くはない代金を払って、受け取ったのだった。

「あの……」

花束を受け取ったクシャースラは、覚悟を決めてセシリアに話しかける。

「はい?」
「この後、お時間を頂けませんか? セシリアさんにお話ししたいことがあるんです」
「この後ですか? ですが私はこの後、牛乳屋の仕事を手伝わないといけませんし……」

セシリアの両親に聞いたが、最近、セシリアは夕方に花屋の仕事を終えると、父親が働く新聞の印刷工場の得意先である牛乳屋の仕事を始めたらしい。
それが終わると、家に戻ってきて、今度は日付が変わるまで内職をするそうだ。
このままでは、益々、セシリアは身体を壊すだろう。早くなんとかしなければならない。

「お時間は取らせません。少しだけ、おれと話す時間を下さい!」
「でも……」

すると、そんな二人を焦ったく思ったのか、店主の女性が「セシリア、休憩に入っていいよ」と声を掛けてくれる。

「まだ休憩には早い時間ですが……」
「いいから、いいから。お店も空いている事だし、休憩しておいで」

セシリアはしばし迷った後に、クシャースラに頷いたのだった。

「あまりお店からは離れられませんが、それでもいいですか?」
「ありがとうございます。では、お店の裏側でお話ししませんか」

セシリアが頷くと、二人はお店の裏側にある勝手口前までやって来たのだった。

「あの、セシリアさん……。その……」

セシリアと二人きりになるのは、これが初めてであった。
ただ、いざ二人きりになると、緊張から何を話せばいいの分からなかった。

「はい?」

存在感を表すように、クシャースラが抱えていた花束が音を立てる。

ーーこういう時、アイツならどうする?

こんな時、親友なら言葉で表すのか、身体で表すのか。
いや、さすがに身体はまずいか。
急に抱きついて、怖がらせて、嫌われたら意味がない。
そうなると、言葉で表すしかない。
ただ、何と言えばいいのかーー。

「あの、オウェングス様?」

訝しむように、セシリアは首を傾げる。
クシャースラは覚悟を決めると、「セシリアさん!」と、セシリアに近づくと花束を差し出す。

「これをどうぞ」
「これって……今買った花束ですよね?」
「はい! 貴女の為に選びました! 受け取って下さい!」

セシリアは花束を受け取ると、「ありがとうございます」と礼を述べる。

「花束を作ることは多々ありますが、プレゼントされたことはないのでとても嬉しいです。それで、私の好きな花や色を聞いたんですね」

花束を作っている時も気づいたが、受け取る時に見えたセシリアの手は、以前に比べてあかぎれや細かい切り傷が増えていた。
おそらく働き詰めで、手入れをする時間も無いのだろう。または手入れをしても追いつかないのだろう。そんなセシリアを思うと、胸が痛くなる。

そうして、心の底から花束を嬉しげに見つめているセシリアに向かって、クシャースラは頭を深く下げたのだった。

「セシリアさん!」
「はい?」
「おれは初めて出会った時から、ずっとセシリアさんのことが好きです!」

そうして、右手を差し出したのだった。

「結婚を前提におれと付き合って下さい!」
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