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お出掛け・1
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次にアリーシャが目を覚ますと、そこは見慣れぬ部屋であった。
そのまま天井を見つめていたアリーシャだったが、頭が覚醒してくるにつれて昨日のことを思い出したのだった。
(そっか、オルキデア様の屋敷に来て、そのオルキデア様の部屋で寝たんだっけ……)
軍部から移送ーーではなく引っ越しをしたアリーシャは、仮初めの夫となったオルキデアの屋敷にやって来た。
その日の夜、初めてオルキデアと離れたからか不安で心細くなると、オルキデアの部屋にやってきた。
たまたま出くわしたオルキデアに誘われるまま、アリーシャはオルキデアのベッドに入ると、オルキデアの昔話を聞いた後にそのまま一緒に寝たのだった。
(一緒に寝ていいって言われたからって、ちょっと図々しかったかな。オルキデア様だって疲れていたのに遅くまで付き合わせて、ベッドまで借りてしまって)
一緒に寝たといっても、オルキデアの宣言通りにただ添い寝しただけで、着衣に乱れもなければ身体に違和感もなかった。ただわずかにオルキデアの温もりが残っているだけ。
アリーシャはベッドから出ると、カーテンを開けて外を見る。昨夜の強風が嘘のように、外は綺麗な秋晴れであった。
(庭の花、大丈夫かな。後で見に行こうかな)
澄んだ青い空を眺めていると、不意に昨夜オルキデアに抱きしめられた感触を思い出して、自分の身体を抱きしめる。
(オルキデア様にも苦手なものがあったなんて)
アリーシャと違って、なんでも出来て弱点なんて無さそうなオルキデア。
そんなオルキデアも、「寒さ」という弱点を持っていた。
意外と言えば意外だったが、生まれ育った国は違っても、やはりオルキデアもアリーシャと同じ人間なのだと思えた。
どこか遠い存在に思えていた彼のことがますます身近に感じられたのだった。
窓から離れて、着替えをしに部屋に戻ろうとしたところで、部屋の主の姿が無いことに気づく。室内を見渡して、どこにも姿が見つからなかった瞬間、顔から血の気が引いたのだった。
(まさか、寝過ごした……?)
昨夜が夢ではなかったことは身体に残る熱からわかる。オルキデアに触れられたところだけ妙に温かく、心地良い熱が残滓のように残っていた。
アリーシャは部屋を飛び出すと、オルキデアを探しに行ったのだった。
居間、書斎、他の客間と順に確認したアリーシャは、とうとう一階の厨房までやってきた。
音を立てながら勢いよく扉を開けると、そこにようやく目的の人物がいたのだった。
「もう起きたのか」
白色のシャツに黒のズボン姿、首元の後ろでダークブラウンの髪を纏めて、今まで見た中でもかなりラフな格好をしたオルキデアは、ポットを片手に不思議そうな顔をする。
「どうした? そんなに血相を変えて」
「あ……の……。寝過ごしたのかと思って……」
「まだ朝も早い時間だから大丈夫だ」
オルキデアの目線を辿ると、壁に掛かっている時計は、まだ九時前を指していた。
早い時間と言っても、軍部にいた頃よりは遅い起床時刻の気もするが……。
「熟睡しているようだったから、そのまま寝かせていたが……。起こした方が良かったか?」
「いえ、朝食の用意を……」
「それは様子を見に来たマルテがやってくれた。丁度さっき帰ったところだ」
どうやら、アリーシャが寝ている間に、二人の様子を見に来たマルテが朝食を用意してくれたらしい。
悪いことをしてしまったと、アリーシャは肩を落とす。
ポットのお湯をテーブルに置かれていたカップに注ぎながら、「そういえば」とオルキデアは思い出したように話し出す。
「やはり昨夜の強風で庭の梯子が倒れていたらしい。マルテと一緒に様子を見に来たメイソン氏が言っていた」
「そうでしたか……」
お湯を注いだカップから、コーヒーの芳ばしい香りが漂ってきた。
ポットを置いたオルキデアは、再びアリーシャに視線を向けてくる。
「で、いつまで寝間着姿でいるんだ?」
オルキデアに言われて身体を見下ろすと、自分がまだ寝間着のネグリジェ姿だったことに気づく。
「これは、その……」
羞恥で赤くなりながらアリーシャが口ごもっていると、察したのか穏やかな表情を浮かべる。
「朝食は俺が用意するから、先に着替えて来い」
「ありがとうございます……」
「朝食が済んだら外に出掛ける。そのつもりでな」
「はい……。あれ、私も一緒に行っていいんですか?」
「当然だろう。君に必要なものでもあるのだからな」
そうして、オルキデアは小さく笑うとカップに口をつけたのだった。
そのまま天井を見つめていたアリーシャだったが、頭が覚醒してくるにつれて昨日のことを思い出したのだった。
(そっか、オルキデア様の屋敷に来て、そのオルキデア様の部屋で寝たんだっけ……)
軍部から移送ーーではなく引っ越しをしたアリーシャは、仮初めの夫となったオルキデアの屋敷にやって来た。
その日の夜、初めてオルキデアと離れたからか不安で心細くなると、オルキデアの部屋にやってきた。
たまたま出くわしたオルキデアに誘われるまま、アリーシャはオルキデアのベッドに入ると、オルキデアの昔話を聞いた後にそのまま一緒に寝たのだった。
(一緒に寝ていいって言われたからって、ちょっと図々しかったかな。オルキデア様だって疲れていたのに遅くまで付き合わせて、ベッドまで借りてしまって)
一緒に寝たといっても、オルキデアの宣言通りにただ添い寝しただけで、着衣に乱れもなければ身体に違和感もなかった。ただわずかにオルキデアの温もりが残っているだけ。
アリーシャはベッドから出ると、カーテンを開けて外を見る。昨夜の強風が嘘のように、外は綺麗な秋晴れであった。
(庭の花、大丈夫かな。後で見に行こうかな)
澄んだ青い空を眺めていると、不意に昨夜オルキデアに抱きしめられた感触を思い出して、自分の身体を抱きしめる。
(オルキデア様にも苦手なものがあったなんて)
アリーシャと違って、なんでも出来て弱点なんて無さそうなオルキデア。
そんなオルキデアも、「寒さ」という弱点を持っていた。
意外と言えば意外だったが、生まれ育った国は違っても、やはりオルキデアもアリーシャと同じ人間なのだと思えた。
どこか遠い存在に思えていた彼のことがますます身近に感じられたのだった。
窓から離れて、着替えをしに部屋に戻ろうとしたところで、部屋の主の姿が無いことに気づく。室内を見渡して、どこにも姿が見つからなかった瞬間、顔から血の気が引いたのだった。
(まさか、寝過ごした……?)
昨夜が夢ではなかったことは身体に残る熱からわかる。オルキデアに触れられたところだけ妙に温かく、心地良い熱が残滓のように残っていた。
アリーシャは部屋を飛び出すと、オルキデアを探しに行ったのだった。
居間、書斎、他の客間と順に確認したアリーシャは、とうとう一階の厨房までやってきた。
音を立てながら勢いよく扉を開けると、そこにようやく目的の人物がいたのだった。
「もう起きたのか」
白色のシャツに黒のズボン姿、首元の後ろでダークブラウンの髪を纏めて、今まで見た中でもかなりラフな格好をしたオルキデアは、ポットを片手に不思議そうな顔をする。
「どうした? そんなに血相を変えて」
「あ……の……。寝過ごしたのかと思って……」
「まだ朝も早い時間だから大丈夫だ」
オルキデアの目線を辿ると、壁に掛かっている時計は、まだ九時前を指していた。
早い時間と言っても、軍部にいた頃よりは遅い起床時刻の気もするが……。
「熟睡しているようだったから、そのまま寝かせていたが……。起こした方が良かったか?」
「いえ、朝食の用意を……」
「それは様子を見に来たマルテがやってくれた。丁度さっき帰ったところだ」
どうやら、アリーシャが寝ている間に、二人の様子を見に来たマルテが朝食を用意してくれたらしい。
悪いことをしてしまったと、アリーシャは肩を落とす。
ポットのお湯をテーブルに置かれていたカップに注ぎながら、「そういえば」とオルキデアは思い出したように話し出す。
「やはり昨夜の強風で庭の梯子が倒れていたらしい。マルテと一緒に様子を見に来たメイソン氏が言っていた」
「そうでしたか……」
お湯を注いだカップから、コーヒーの芳ばしい香りが漂ってきた。
ポットを置いたオルキデアは、再びアリーシャに視線を向けてくる。
「で、いつまで寝間着姿でいるんだ?」
オルキデアに言われて身体を見下ろすと、自分がまだ寝間着のネグリジェ姿だったことに気づく。
「これは、その……」
羞恥で赤くなりながらアリーシャが口ごもっていると、察したのか穏やかな表情を浮かべる。
「朝食は俺が用意するから、先に着替えて来い」
「ありがとうございます……」
「朝食が済んだら外に出掛ける。そのつもりでな」
「はい……。あれ、私も一緒に行っていいんですか?」
「当然だろう。君に必要なものでもあるのだからな」
そうして、オルキデアは小さく笑うとカップに口をつけたのだった。
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