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お祭り・7
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二人で柵に寄り掛かって通りを眺めること数十分。人々の歓声が一際大きくなった。
歓声が聞こえてきた方を向くと、前後を厳重に警備された黒いオープンカーがゆっくりと通りにやって来たのだった。
「あのオープンカーで手を振っているのが、第二王子ですか?」
「そうだ。あの茶色の髪の青年が、祭りの主役である第二王子だ」
アリーシャが示したのは、鳶色の髪を短く刈り上げ、黒い軍服姿の青年だった。
青年は両手を振りながら、笑顔を浮かべて、彼を祝うペルフェクト王国民の歓声や拍手に応えていたのだった。
ゆっくりと進む第二王子のオープンカーの両側にも、バイクに乗った警官が数人ついており、周囲を警戒しているようだった。
「他の王族はパレードに参加しないんですか?」
「最近は参加しないな。王子たちが幼い頃は一緒についていたが」
三人いる王子が成人した今となっては、国王夫婦は王子たちのパレードに参加せず、王城での式典やパーティーのみの参加となる。
もし、国王夫婦も参加するとなれば、今よりも厳重な警備にしなければならず、警察ばかりではなく軍部にも負担がかかる。それを国王夫婦も分かっているのか、最近では自分たちの祝いの時か、国の創立を記念する式典以外ではパレードに参加せず、王子たちのパレードに関しては、主役となる王子たち自身に全て任せているようだった。
警備を担当する側としては、王子たちの警備だけで充分なので、国王夫婦の気遣いはありがたいというのが正直な気持ちであった。
「他の王子たち同様に、王城で待機しているのだろう。祝典やパーティーもあるからな」
「王族って、大変なんですね」
「そういうお前も、生まれるのがあと数百年早かったら、王族だったんだが……」
すっかりパレードに見入っている敵国の元王族の血を引く愛妻に言いながら、ふと考える。
(もし王族だったら、今頃こうして、一緒にパレードを見ていないか)
あの襲撃事件でアリーシャと出会っていなければ、今年も執務室で惰眠を貪るか、あの人混みの中で警備をしているだけだった。
祭りの人混みの中に入って、この場所に来ようとは考えなかっただろう。
オルキデアが考えている内に、オープンカーは二人が見下ろしている集合住宅の前を通過するところだった。
傍らのアリーシャが手を振る中ーー身を乗り出して転落しないように、オルキデアがしっかりと腰を抱いていた。オルキデアは第二王子をじっと見つめる。
(成長したな)
沿道の国民に向かって手を振る第二王子は、オルキデアたちが在学した士官学校の一学年下の後輩だった。
直接的な関わりは無かったが、常に周辺を護衛に囲まれ、いつも不安そうにおどおどして、女性の様な小さな細身が、遠目から見ても目立っていた。
王族であり、周囲を護衛に囲まれているから何も無かっただろうが、それこそ平民だったら、目を付けられていてもおかしくない。
士官学校を卒業した後は、軍に所属しなかったようだが、時折、慰問として軍部や各方面の基地に顔を出しているらしい。
最近では、プロキオン中将の上官ーーオルキデアが所属する部隊の大将、が第二王子の麾下となった。
軍事以外の文官の仕事が増えたとのことで、軍事に関する仕事は、プロキオンを始めとする各中将に任されるようになったのだった。
その状況をオルキデアの上官は、「仕事が増えた」とよくぼやいていたのを思い出す。
オルキデアは顔しか知らないが、プロキオン曰く、人柄の良い上官なので、仕事を増やされても怒りはするが、恨みは感じないとのことだった。
歓声が聞こえてきた方を向くと、前後を厳重に警備された黒いオープンカーがゆっくりと通りにやって来たのだった。
「あのオープンカーで手を振っているのが、第二王子ですか?」
「そうだ。あの茶色の髪の青年が、祭りの主役である第二王子だ」
アリーシャが示したのは、鳶色の髪を短く刈り上げ、黒い軍服姿の青年だった。
青年は両手を振りながら、笑顔を浮かべて、彼を祝うペルフェクト王国民の歓声や拍手に応えていたのだった。
ゆっくりと進む第二王子のオープンカーの両側にも、バイクに乗った警官が数人ついており、周囲を警戒しているようだった。
「他の王族はパレードに参加しないんですか?」
「最近は参加しないな。王子たちが幼い頃は一緒についていたが」
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もし、国王夫婦も参加するとなれば、今よりも厳重な警備にしなければならず、警察ばかりではなく軍部にも負担がかかる。それを国王夫婦も分かっているのか、最近では自分たちの祝いの時か、国の創立を記念する式典以外ではパレードに参加せず、王子たちのパレードに関しては、主役となる王子たち自身に全て任せているようだった。
警備を担当する側としては、王子たちの警備だけで充分なので、国王夫婦の気遣いはありがたいというのが正直な気持ちであった。
「他の王子たち同様に、王城で待機しているのだろう。祝典やパーティーもあるからな」
「王族って、大変なんですね」
「そういうお前も、生まれるのがあと数百年早かったら、王族だったんだが……」
すっかりパレードに見入っている敵国の元王族の血を引く愛妻に言いながら、ふと考える。
(もし王族だったら、今頃こうして、一緒にパレードを見ていないか)
あの襲撃事件でアリーシャと出会っていなければ、今年も執務室で惰眠を貪るか、あの人混みの中で警備をしているだけだった。
祭りの人混みの中に入って、この場所に来ようとは考えなかっただろう。
オルキデアが考えている内に、オープンカーは二人が見下ろしている集合住宅の前を通過するところだった。
傍らのアリーシャが手を振る中ーー身を乗り出して転落しないように、オルキデアがしっかりと腰を抱いていた。オルキデアは第二王子をじっと見つめる。
(成長したな)
沿道の国民に向かって手を振る第二王子は、オルキデアたちが在学した士官学校の一学年下の後輩だった。
直接的な関わりは無かったが、常に周辺を護衛に囲まれ、いつも不安そうにおどおどして、女性の様な小さな細身が、遠目から見ても目立っていた。
王族であり、周囲を護衛に囲まれているから何も無かっただろうが、それこそ平民だったら、目を付けられていてもおかしくない。
士官学校を卒業した後は、軍に所属しなかったようだが、時折、慰問として軍部や各方面の基地に顔を出しているらしい。
最近では、プロキオン中将の上官ーーオルキデアが所属する部隊の大将、が第二王子の麾下となった。
軍事以外の文官の仕事が増えたとのことで、軍事に関する仕事は、プロキオンを始めとする各中将に任されるようになったのだった。
その状況をオルキデアの上官は、「仕事が増えた」とよくぼやいていたのを思い出す。
オルキデアは顔しか知らないが、プロキオン曰く、人柄の良い上官なので、仕事を増やされても怒りはするが、恨みは感じないとのことだった。
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