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母上・2
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「母上」
オルキデアが呼びかけると、ようやくガラスの向こう側に息子が居ることに気づいたのか、ティシュトリアは顔を上げると目を見開いたのだった。
「オーキッド……」
「母上、事情は知り合いから聞きました。やはり、噂通りだったんですね」
「噂通り」の単語にティシュトリアは目を剥くと、「聞いて頂戴!」と声を荒げたのだった。
「私は何も知らないのよ! あの人が私を利用して、シュタルクヘルトに情報を渡していたなんて知らなかったの!」
「本当ですか?」
「本当よ! 確かに、私はあの人以外にも、軍に所属する兵士数人とも関係を持っていたわ! でも、私は何も話してないのよ! ただ、貴方に聞かれて答えただけで……!」
「俺について話したんですか?」
「そうよ!」と、ティシュトリアは今にもガラスを割りそうな勢いで興奮気味に話す。
「息子は兵士と聞いたが、どういう人物だとか、軍での階級や功績はどうだとか、軍ではどういった任務に就いたか、しか聞かれてないわ! それで、これまで関係を持っていた兵士たちから聞いた、貴方の話をしただけで……」
オルキデアは内心で溜め息をついた。
「それ、全て答えましたか?」
「も、勿論よ! 愛する息子について聞かれて、嬉しくない訳ないじゃない……!」
「愛する息子」と聞いて、ふつふつと内側から怒りが込み上げてくる。
だが、今は怒っている場合ではない。
「ありきたりな方法ですね。俺を理由に、母上から情報を得たのでしょう」
「そんな……」
「あの男に利用されたんですよ。母上は」
ティシュトリアの顔が歪んだ。
「そんな筈はないわ。だって、あの人は私を愛しているって……」
「それも演技です。見え透いた嘘ですね」
端的に、冷淡に聞こえなくもない話し方で返すと、ティシュトリアの顔はますます悲痛で歪んでいった。
「そんな……そんな……」
「自覚がなかったとはいえ、敵国のスパイに情報を流した行為は許されないでしょう。軍事裁判が開かれるまで、ここで大人しくしていて下さい」
話しは終わりというように受話器を置こうとした手を、傍らの親友が引き留める。
そのまま、オルキデアの手から受話器は奪われて、クシャースラの手に渡ったのだった。
「オルキデアのお母さん。おれはクシャースラ・オウェングスと申します。
オルキデアとは士官学校から付き合いのある同期で……まあ、親友ということになります」
「そう。オーキッドの……」
力なく返すティシュトリアに、「単刀直入に申し上げます」とクシャースラは話し出す。
「一つ教えて下さい。貴方がコイツを……オルキデアを気にする理由はなんですか?」
「おい、クシャースラ。一体、何を……」
慌てるオルキデアを片手で制すると、クシャースラは話しを続ける。
「貴方とオルキデアの関係は、一応、知ってるつもりです。セシリアやお義父さんから聞いているので……。
あっ、お義父さんというのは、メイソン・コーンウォールさんのことです」
「そう、コーンウォール家の……」
ティシュトリアが呟くと、クシャースラは微笑を浮かべたまま続ける。
「その上で不思議なんです。貴方は産まれたばかりのオルキデアを置いて家を出た。
その話を聞いた時、オルキデアと、オルキデアの父親に興味がないからだと思いました。
それなのに、貴方は軍でのオルキデアをずっと気にしている。
興味がないなら放っておけばいい、それなのにどうして気にするんですか?」
何も答えないティシュトリアに、クシャースラは諦めたように息をついた。
「貴方がオルキデアを気にする理由。それって、寂しいからでしょう?」
オルキデアが呼びかけると、ようやくガラスの向こう側に息子が居ることに気づいたのか、ティシュトリアは顔を上げると目を見開いたのだった。
「オーキッド……」
「母上、事情は知り合いから聞きました。やはり、噂通りだったんですね」
「噂通り」の単語にティシュトリアは目を剥くと、「聞いて頂戴!」と声を荒げたのだった。
「私は何も知らないのよ! あの人が私を利用して、シュタルクヘルトに情報を渡していたなんて知らなかったの!」
「本当ですか?」
「本当よ! 確かに、私はあの人以外にも、軍に所属する兵士数人とも関係を持っていたわ! でも、私は何も話してないのよ! ただ、貴方に聞かれて答えただけで……!」
「俺について話したんですか?」
「そうよ!」と、ティシュトリアは今にもガラスを割りそうな勢いで興奮気味に話す。
「息子は兵士と聞いたが、どういう人物だとか、軍での階級や功績はどうだとか、軍ではどういった任務に就いたか、しか聞かれてないわ! それで、これまで関係を持っていた兵士たちから聞いた、貴方の話をしただけで……」
オルキデアは内心で溜め息をついた。
「それ、全て答えましたか?」
「も、勿論よ! 愛する息子について聞かれて、嬉しくない訳ないじゃない……!」
「愛する息子」と聞いて、ふつふつと内側から怒りが込み上げてくる。
だが、今は怒っている場合ではない。
「ありきたりな方法ですね。俺を理由に、母上から情報を得たのでしょう」
「そんな……」
「あの男に利用されたんですよ。母上は」
ティシュトリアの顔が歪んだ。
「そんな筈はないわ。だって、あの人は私を愛しているって……」
「それも演技です。見え透いた嘘ですね」
端的に、冷淡に聞こえなくもない話し方で返すと、ティシュトリアの顔はますます悲痛で歪んでいった。
「そんな……そんな……」
「自覚がなかったとはいえ、敵国のスパイに情報を流した行為は許されないでしょう。軍事裁判が開かれるまで、ここで大人しくしていて下さい」
話しは終わりというように受話器を置こうとした手を、傍らの親友が引き留める。
そのまま、オルキデアの手から受話器は奪われて、クシャースラの手に渡ったのだった。
「オルキデアのお母さん。おれはクシャースラ・オウェングスと申します。
オルキデアとは士官学校から付き合いのある同期で……まあ、親友ということになります」
「そう。オーキッドの……」
力なく返すティシュトリアに、「単刀直入に申し上げます」とクシャースラは話し出す。
「一つ教えて下さい。貴方がコイツを……オルキデアを気にする理由はなんですか?」
「おい、クシャースラ。一体、何を……」
慌てるオルキデアを片手で制すると、クシャースラは話しを続ける。
「貴方とオルキデアの関係は、一応、知ってるつもりです。セシリアやお義父さんから聞いているので……。
あっ、お義父さんというのは、メイソン・コーンウォールさんのことです」
「そう、コーンウォール家の……」
ティシュトリアが呟くと、クシャースラは微笑を浮かべたまま続ける。
「その上で不思議なんです。貴方は産まれたばかりのオルキデアを置いて家を出た。
その話を聞いた時、オルキデアと、オルキデアの父親に興味がないからだと思いました。
それなのに、貴方は軍でのオルキデアをずっと気にしている。
興味がないなら放っておけばいい、それなのにどうして気にするんですか?」
何も答えないティシュトリアに、クシャースラは諦めたように息をついた。
「貴方がオルキデアを気にする理由。それって、寂しいからでしょう?」
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