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謀反の疑い・2
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「お帰りなさいませ。今日は遅かったんですね」
「ああ。ただいま」
その日、オルキデアが屋敷に帰れたのは日付が変わる頃であった。
寝ずに待っていてくれたのか、アリーシャは寝間着に肩からショールを掛けた姿で出迎えてくれたのだった。
「まだ起きていたのか。病み上がりだろう。もう休め」
「すぐ休みます。オルキデア様をお迎えしたかったので……」
コートを脱いでいたオルキデアは、頬を赤く染める愛妻に瞬きを繰り返すと、小さく微笑む。
「それは嬉しいが、しばらくは明日以降も今日と同じくらいの帰宅になる」
「えっ……」
「もしくは、軍部に泊まり込むことになるかもしれん。身体に触るから出迎えなくていい」
「お仕事忙しいんですか……?」
「……ああ。そうだな」
本当は違うのだが、心配をかけさせたくないあまりに嘘をつく。
アリーシャは「わかりました……」と、渋々納得したようだった。
「お腹空いていますよね。すぐに夕食を用意します」
「いや、疲れているからもう休む。明日以降も作らなくていい」
「食べないんですか……?」
「帰って来れないかもしれないからな。今夜は疲れているから、もう休ませてくれ。おやすみ。アリーシャ」
「おやすみなさい……」
アリーシャと口づけを交わすと、振り返ることなく自室に戻る。
中に入って、自室の扉を閉めると、大きく息をついて、その場に座り込んだのだった。
「なんとか誤魔化せたか……」
愛妻にバレなかったことに安堵しつつ、オルキデアは伸ばしっぱなしにしていた前髪を掻く。
心配をかけさせたくないばかりに、嘘をついてしまった。
バレた時にきっとまた不貞腐れてしまうだろう。
白い頬を膨らませる愛妻の姿を思い浮かべると、つい口元が緩んでしまったのだった。
(今は、そんな場合ではないというのに)
ボーンボーンと遠くから音が聞こえてきた。
結婚祝いで貰った壁掛け時計が、日付が変わったことを教えてくれる。
明日はこの時間に帰って来られるだろうか。
オルキデアは溜め息をつくと、暗闇に包まれた室内を眺める。
昼間の取調べの影響なのか、これまで経験したことがないくらい、いつになく弱気になってしまったのだった。
昼間、審問と称された取調べを受けたオルキデアは、そこで衝撃の事実を知った。
オルキデアの母であるティシュトリアが関係を持っており、スパイ容疑で軍に捕らわれた敵国の元高級士官が、取り調べの際にオルキデアを共犯者として名前を上げたらしい。
それも用意周到なことに、謀叛を起こす際に必要となる武器や食料といった物資を手配した書類や、同じ謀叛を企てる仲間に対する指示書といったオルキデアの名前入りの偽造書類も、高級士官の屋敷から押収したそうだ。
高級士官とは全く面識はないと否定をしたが、母親が今回の件に深く関わりを持っており、証拠品まで揃っている以上、言い逃れは出来ないの一点張りであった。
それなら、高級士官か母のティシュトリアと会わせて欲しいと頼めば、母は国外追放が決まり、高級士官はまだ裁判が閉廷していないので会わせられないと断られたのだった。
そこからは、もう同じ話の繰り返しであった。
高級士官と通じて、どこまで情報を流したのか、ペルフェクトを乗っ取ろうというのか、国に忠誠を誓った一軍人として恥ずかしくないのか、と延々と聞かされた。
当然、こっちは無関係を主張するが、相手は聞く耳を一切持っておらず、ただ一方的に責められるだけとなったのだった。
「ああ。ただいま」
その日、オルキデアが屋敷に帰れたのは日付が変わる頃であった。
寝ずに待っていてくれたのか、アリーシャは寝間着に肩からショールを掛けた姿で出迎えてくれたのだった。
「まだ起きていたのか。病み上がりだろう。もう休め」
「すぐ休みます。オルキデア様をお迎えしたかったので……」
コートを脱いでいたオルキデアは、頬を赤く染める愛妻に瞬きを繰り返すと、小さく微笑む。
「それは嬉しいが、しばらくは明日以降も今日と同じくらいの帰宅になる」
「えっ……」
「もしくは、軍部に泊まり込むことになるかもしれん。身体に触るから出迎えなくていい」
「お仕事忙しいんですか……?」
「……ああ。そうだな」
本当は違うのだが、心配をかけさせたくないあまりに嘘をつく。
アリーシャは「わかりました……」と、渋々納得したようだった。
「お腹空いていますよね。すぐに夕食を用意します」
「いや、疲れているからもう休む。明日以降も作らなくていい」
「食べないんですか……?」
「帰って来れないかもしれないからな。今夜は疲れているから、もう休ませてくれ。おやすみ。アリーシャ」
「おやすみなさい……」
アリーシャと口づけを交わすと、振り返ることなく自室に戻る。
中に入って、自室の扉を閉めると、大きく息をついて、その場に座り込んだのだった。
「なんとか誤魔化せたか……」
愛妻にバレなかったことに安堵しつつ、オルキデアは伸ばしっぱなしにしていた前髪を掻く。
心配をかけさせたくないばかりに、嘘をついてしまった。
バレた時にきっとまた不貞腐れてしまうだろう。
白い頬を膨らませる愛妻の姿を思い浮かべると、つい口元が緩んでしまったのだった。
(今は、そんな場合ではないというのに)
ボーンボーンと遠くから音が聞こえてきた。
結婚祝いで貰った壁掛け時計が、日付が変わったことを教えてくれる。
明日はこの時間に帰って来られるだろうか。
オルキデアは溜め息をつくと、暗闇に包まれた室内を眺める。
昼間の取調べの影響なのか、これまで経験したことがないくらい、いつになく弱気になってしまったのだった。
昼間、審問と称された取調べを受けたオルキデアは、そこで衝撃の事実を知った。
オルキデアの母であるティシュトリアが関係を持っており、スパイ容疑で軍に捕らわれた敵国の元高級士官が、取り調べの際にオルキデアを共犯者として名前を上げたらしい。
それも用意周到なことに、謀叛を起こす際に必要となる武器や食料といった物資を手配した書類や、同じ謀叛を企てる仲間に対する指示書といったオルキデアの名前入りの偽造書類も、高級士官の屋敷から押収したそうだ。
高級士官とは全く面識はないと否定をしたが、母親が今回の件に深く関わりを持っており、証拠品まで揃っている以上、言い逃れは出来ないの一点張りであった。
それなら、高級士官か母のティシュトリアと会わせて欲しいと頼めば、母は国外追放が決まり、高級士官はまだ裁判が閉廷していないので会わせられないと断られたのだった。
そこからは、もう同じ話の繰り返しであった。
高級士官と通じて、どこまで情報を流したのか、ペルフェクトを乗っ取ろうというのか、国に忠誠を誓った一軍人として恥ずかしくないのか、と延々と聞かされた。
当然、こっちは無関係を主張するが、相手は聞く耳を一切持っておらず、ただ一方的に責められるだけとなったのだった。
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