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不審な手紙と不穏な影・4
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(まさか……!?)
食堂を飛び出して、着の身着のまま庭に出る。
すると、玄関前で呆然とした顔で立ち尽くすアリーシャの姿があったのだった。
「アリーシャ!」
掃き掃除をしていたのか、側には箒とちりとりが落ちていた。
オルキデアが声を掛けると、アリーシャは弾かれた様に真っ青な顔で振り返ったのだった。
「オルキデア様……」
「何があった!? 無事か!? 怪我は……!!」
「大丈夫です。大丈夫なんですが……」
アリーシャの白い指が示した方を向くと、そこには庭の片隅に並べていたいくつかの植木鉢が割れていた。
草地の上に土やハーブ、紫や白の花々が落ち、植木鉢の破片が辺りに飛び散っていたのだった。
「銃声が聞こえてきたので様子を見に来たんです。そうしたら植木鉢が割れていて……」
「お前はどこにいたんだ?」
「裏口です。最近、屋敷内にゴミを投げ込まれるようになったので、定期的に掃き掃除をしていて……」
アリーシャの足元のちりとりには、生ゴミや屑といった可燃物やタバコの吸い殻が入っていた。
その時近くで車のタイヤが滑ったのか、キキーッと甲高いスキール音が聞こえてきた。
銃声と思ったのか、アリーシャは身体を縮めると、小さな悲鳴を上げたのであった。
「ひとまず屋敷に入るぞ。銃声音が聞こえたのなら、ここは危険だ」
「はい……」
アリーシャの肩を支えると辺りを警戒しつつ屋敷に入る。
ペルフェクトの法律には銃を規制する法律が存在しない。
平民でも少し手を伸ばせば購入出来る銃火器は、昔から犯罪やクーデター、デモなどに使われ、国や警察が頭を悩ませる原因の一つでもあった。
これまで何度か国が主体となって規制に乗り出してきたが、毎回軍や国民によって反対され、規制法は遅々として進んでいなかった。
屋敷に入ると、すぐに鍵とチェーンを掛けて厳重に戸締りをする。
これで屋敷に押しかけられても、こじ開けられるまで時間を稼げる。
閉め切られたカーテンをそっと捲って、オルキデアは周囲を確認する。今のところ、特に不審な動きはなかった。
離れたところで不安そうな表情を浮かべる愛妻に小さく頷くと、ようやく安堵したようだった。胸を撫で下ろすと、オルキデアに近づいて来たのだった。
「びっくりしました。急に銃声が聞こえてきたので……」
「そうだな。怪我がなくて安心した」
そのままアリーシャの華奢な身体を抱き寄せると、アリーシャ自身も身を委ねてくる。
平気そうに見えても、やはり怖かったのだろう。アリーシャの身体は小刻みに震えていた。
オルキデアの身体にしがみついて震え続ける愛妻の頭を、オルキデアはそっと撫でたのであった。
屋敷に向かっての発砲も不安にもなるが、ひとまず怪我もなく無事な姿に安心した。
アリーシャが落ち着くと、肩を抱いたまま食堂に向かう。
テーブルの上にはすっかり冷めてしまった食べかけの料理が残されていた。
「お料理、どうしますか。温め直しますか?」
「そうしてくれるか」
本当は食力などすっかり失せていたが、せっかくの申し出を断るのも気が引けた。
それにじっと座っているより、アリーシャも何かしている方が気が紛れるだろう。
(それに、この発砲もーー)
二日前に届いた手紙に書かれていた『奥方に危害を加える』の一つに違いない。
アリーシャが料理を温め直している間、食堂の電話機に近づくと受話器を持ち上げる。
番号を押して警察に掛けると、今の発砲音と庭の植木鉢が割れた件について話したのだった。
対応してくれた警察官は「すぐに警官を向かわせる」と言って電話を切った。その頃には温め直した料理を持ってアリーシャが戻って来ていたので、オルキデアは警察が来るまで、温め直してもらった料理を掻き込んだのだった。
食堂を飛び出して、着の身着のまま庭に出る。
すると、玄関前で呆然とした顔で立ち尽くすアリーシャの姿があったのだった。
「アリーシャ!」
掃き掃除をしていたのか、側には箒とちりとりが落ちていた。
オルキデアが声を掛けると、アリーシャは弾かれた様に真っ青な顔で振り返ったのだった。
「オルキデア様……」
「何があった!? 無事か!? 怪我は……!!」
「大丈夫です。大丈夫なんですが……」
アリーシャの白い指が示した方を向くと、そこには庭の片隅に並べていたいくつかの植木鉢が割れていた。
草地の上に土やハーブ、紫や白の花々が落ち、植木鉢の破片が辺りに飛び散っていたのだった。
「銃声が聞こえてきたので様子を見に来たんです。そうしたら植木鉢が割れていて……」
「お前はどこにいたんだ?」
「裏口です。最近、屋敷内にゴミを投げ込まれるようになったので、定期的に掃き掃除をしていて……」
アリーシャの足元のちりとりには、生ゴミや屑といった可燃物やタバコの吸い殻が入っていた。
その時近くで車のタイヤが滑ったのか、キキーッと甲高いスキール音が聞こえてきた。
銃声と思ったのか、アリーシャは身体を縮めると、小さな悲鳴を上げたのであった。
「ひとまず屋敷に入るぞ。銃声音が聞こえたのなら、ここは危険だ」
「はい……」
アリーシャの肩を支えると辺りを警戒しつつ屋敷に入る。
ペルフェクトの法律には銃を規制する法律が存在しない。
平民でも少し手を伸ばせば購入出来る銃火器は、昔から犯罪やクーデター、デモなどに使われ、国や警察が頭を悩ませる原因の一つでもあった。
これまで何度か国が主体となって規制に乗り出してきたが、毎回軍や国民によって反対され、規制法は遅々として進んでいなかった。
屋敷に入ると、すぐに鍵とチェーンを掛けて厳重に戸締りをする。
これで屋敷に押しかけられても、こじ開けられるまで時間を稼げる。
閉め切られたカーテンをそっと捲って、オルキデアは周囲を確認する。今のところ、特に不審な動きはなかった。
離れたところで不安そうな表情を浮かべる愛妻に小さく頷くと、ようやく安堵したようだった。胸を撫で下ろすと、オルキデアに近づいて来たのだった。
「びっくりしました。急に銃声が聞こえてきたので……」
「そうだな。怪我がなくて安心した」
そのままアリーシャの華奢な身体を抱き寄せると、アリーシャ自身も身を委ねてくる。
平気そうに見えても、やはり怖かったのだろう。アリーシャの身体は小刻みに震えていた。
オルキデアの身体にしがみついて震え続ける愛妻の頭を、オルキデアはそっと撫でたのであった。
屋敷に向かっての発砲も不安にもなるが、ひとまず怪我もなく無事な姿に安心した。
アリーシャが落ち着くと、肩を抱いたまま食堂に向かう。
テーブルの上にはすっかり冷めてしまった食べかけの料理が残されていた。
「お料理、どうしますか。温め直しますか?」
「そうしてくれるか」
本当は食力などすっかり失せていたが、せっかくの申し出を断るのも気が引けた。
それにじっと座っているより、アリーシャも何かしている方が気が紛れるだろう。
(それに、この発砲もーー)
二日前に届いた手紙に書かれていた『奥方に危害を加える』の一つに違いない。
アリーシャが料理を温め直している間、食堂の電話機に近づくと受話器を持ち上げる。
番号を押して警察に掛けると、今の発砲音と庭の植木鉢が割れた件について話したのだった。
対応してくれた警察官は「すぐに警官を向かわせる」と言って電話を切った。その頃には温め直した料理を持ってアリーシャが戻って来ていたので、オルキデアは警察が来るまで、温め直してもらった料理を掻き込んだのだった。
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