35 / 247
第一部
ヴィオーラ・シネンシス・ブーゲンビリア【1】
しおりを挟む
マキウスに連れられてやって来た騎士団の本拠地である騎士団本部は、王都の中心部にある大きなお城の中にあった。
「騎士団本部は、元々は王族が住んでいた城の一部にあるんです」
騎士団本部までの道すがら、マキウスが教えてくれた。
騎士団本部がある城は、元は王族が住んでおり、数百年前に王族が騎士団の為に城を解放したらしい。
それまでは、騎士団本部は城から少し離れた場所に建っていた。
非常事態の際に城まで駆けつけるのが大変なことと、当時の騎士団本部の建物が老朽化していたことや騎士団員の増加に伴い、狭くなっていたこともあり、当時の騎士団長が王族に交渉したらしい。
その結果、城の一部を騎士団が使用する許可を得たそうで、今ではすっかり騎士団の拠点は城の中に移っていた。
そんな元は王族の居城だったという名残のように、騎士団本部は古めかしいながらも白く頑丈な石造りの城壁の中に建てられていたのだった。
「今も王族の住まいと騎士団の本部は、同じ城の中にあるんですか?」
「いいえ。王族はあの小さな城に移り住んでいます」
マキウスが指差した先には、白亜の城よりもひと回り小さな黄色の外壁の城が建っていたのだった。
「なんだか、可愛いお城ですね」
「王族専用の城なんです。元は王族の宝物庫として使われていたのを建て直したそうです。黄色の外壁は目立つようにと聞いています。常に誰かの目に入るように目立たせておけば、非常時に誰かは気づくだろうと」
やがて、茶色のレンガ造りの門を抜けると、群青色の屋根と白色の石造りの城に近づいて行った。
城の前に馬車が止まると、モニカはマキウスの手を借りて、馬車から降りたのだった。
「わぁ、間近で見ても大きいですね!」
例えるなら、童話の『シンデレラ』に出てくるような、大きな城といえばいいのだろうか。
今にも、舞踏会が開かれて、王子様が出てきそうな雰囲気があった。
「城内は天井が高いんです。王族が使っていた頃の名残で、場所によっては、この国の歴史を表した天井画や壁画もあります」
マキウスに連れられて、建物の中を歩いていると、普段、マキウスが着ているのと同じ白の騎士団の制服を着た者たちとすれ違った。
彼らとすれ違う度に、マキウスは端に寄って頭を下げた。
意味はよくわからないが、モニカもそれに習ったのだった。
頭を下げて三回目、二人の前を騎士が通り過ぎると、マキウスは申し訳なさそうな顔をしたのだった。
「すみません。私の身分が低いばかりに、貴女にまで苦労をかけて」
「いいえ、私は気にしていないので」
どうやら、すれ違った騎士たちは、いずれもマキウスより身分の高い騎士だったらしい。
それから少し歩くと、急に大きな木製の扉の前で、マキウスが立ち止まった。
「この先が婚姻届の受付部屋となっています」
マキウスに続いて部屋に入ろうとすると、忙しなく人が行き来しており、話し声も絶えず聞こえていた。
なんとなく、モニカが入ったら邪魔になりそうな気がした。
「マキウス様、なんだか部屋の中が忙しそうなので、邪魔にならないように、ここで待っていますね」
「そうですか……。私が出してきますので、貴女はこの辺りで待っていて下さい」
「わかりました」
モニカが頷くと、どこか寂しげなマキウスは部屋の中に入って行ったのだった。
(まるで、童話の中に入ったみたい!)
マキウスの手前、ジロジロと城内を見渡すわけにはいかなかったので、一人になったことでようやく城内をゆっくり見渡せた。
古色な石造りの城内、どこまでも高い天井、時折見かけるひびの入った壁や床からは歴史を感じられた。
そんな風情ある城の中をオシャレなドレスを着て、これから夫となるマキウスと共に歩いていると、まるで童話に登場するお姫様か令嬢の気分になれたのだった。
物珍しそうに城内を見ていると、右側の通路の先に壁面が描かれているのが見えた。
(何の絵だろう……?)
モニカはもっとよく見ようと、壁画に近づいたのだった。
「騎士団本部は、元々は王族が住んでいた城の一部にあるんです」
騎士団本部までの道すがら、マキウスが教えてくれた。
騎士団本部がある城は、元は王族が住んでおり、数百年前に王族が騎士団の為に城を解放したらしい。
それまでは、騎士団本部は城から少し離れた場所に建っていた。
非常事態の際に城まで駆けつけるのが大変なことと、当時の騎士団本部の建物が老朽化していたことや騎士団員の増加に伴い、狭くなっていたこともあり、当時の騎士団長が王族に交渉したらしい。
その結果、城の一部を騎士団が使用する許可を得たそうで、今ではすっかり騎士団の拠点は城の中に移っていた。
そんな元は王族の居城だったという名残のように、騎士団本部は古めかしいながらも白く頑丈な石造りの城壁の中に建てられていたのだった。
「今も王族の住まいと騎士団の本部は、同じ城の中にあるんですか?」
「いいえ。王族はあの小さな城に移り住んでいます」
マキウスが指差した先には、白亜の城よりもひと回り小さな黄色の外壁の城が建っていたのだった。
「なんだか、可愛いお城ですね」
「王族専用の城なんです。元は王族の宝物庫として使われていたのを建て直したそうです。黄色の外壁は目立つようにと聞いています。常に誰かの目に入るように目立たせておけば、非常時に誰かは気づくだろうと」
やがて、茶色のレンガ造りの門を抜けると、群青色の屋根と白色の石造りの城に近づいて行った。
城の前に馬車が止まると、モニカはマキウスの手を借りて、馬車から降りたのだった。
「わぁ、間近で見ても大きいですね!」
例えるなら、童話の『シンデレラ』に出てくるような、大きな城といえばいいのだろうか。
今にも、舞踏会が開かれて、王子様が出てきそうな雰囲気があった。
「城内は天井が高いんです。王族が使っていた頃の名残で、場所によっては、この国の歴史を表した天井画や壁画もあります」
マキウスに連れられて、建物の中を歩いていると、普段、マキウスが着ているのと同じ白の騎士団の制服を着た者たちとすれ違った。
彼らとすれ違う度に、マキウスは端に寄って頭を下げた。
意味はよくわからないが、モニカもそれに習ったのだった。
頭を下げて三回目、二人の前を騎士が通り過ぎると、マキウスは申し訳なさそうな顔をしたのだった。
「すみません。私の身分が低いばかりに、貴女にまで苦労をかけて」
「いいえ、私は気にしていないので」
どうやら、すれ違った騎士たちは、いずれもマキウスより身分の高い騎士だったらしい。
それから少し歩くと、急に大きな木製の扉の前で、マキウスが立ち止まった。
「この先が婚姻届の受付部屋となっています」
マキウスに続いて部屋に入ろうとすると、忙しなく人が行き来しており、話し声も絶えず聞こえていた。
なんとなく、モニカが入ったら邪魔になりそうな気がした。
「マキウス様、なんだか部屋の中が忙しそうなので、邪魔にならないように、ここで待っていますね」
「そうですか……。私が出してきますので、貴女はこの辺りで待っていて下さい」
「わかりました」
モニカが頷くと、どこか寂しげなマキウスは部屋の中に入って行ったのだった。
(まるで、童話の中に入ったみたい!)
マキウスの手前、ジロジロと城内を見渡すわけにはいかなかったので、一人になったことでようやく城内をゆっくり見渡せた。
古色な石造りの城内、どこまでも高い天井、時折見かけるひびの入った壁や床からは歴史を感じられた。
そんな風情ある城の中をオシャレなドレスを着て、これから夫となるマキウスと共に歩いていると、まるで童話に登場するお姫様か令嬢の気分になれたのだった。
物珍しそうに城内を見ていると、右側の通路の先に壁面が描かれているのが見えた。
(何の絵だろう……?)
モニカはもっとよく見ようと、壁画に近づいたのだった。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる