【第一部完結・改稿版】ハージェント家の天使

夜霞

文字の大きさ
37 / 247
第一部

ヴィオーラ・シネンシス・ブーゲンビリア【3】

しおりを挟む
 ユマン族との争いから逃れる為、国を空に浮かべることを思いついたカーネ族だったが、完全に国を空に浮かべる技術を持っていなかった。

 魔法を使って国を浮かべるも、それはほんの一時だけ。永久的に浮かべることは出来なかった。
 いたずらに時間だけが過ぎていく中、突然、空から一人のユマン族がやってきた。

 そのユマン族をカーネ族は警戒をするが、ユマン族はカーネ族が持っていなかった知識や技術を彼らに見せた。
 その中に、国を空に浮遊させる知識と技術があったのだった。
 カーネ族はユマン族の言葉を信じて、再度、国を造った。
 そうして、ユマン族の力を借りて、国を空に浮かべたのだった。
 
 力を使い果たしたユマン族は、天に還った。
 そんな不思議な知識と技術を持っていたユマン族を、カーネ族は「大天使」と呼び、国の守り神として祀ることにした。
 いつの日か、また「大天使」がやってきてくれることを信じてーー。
 
「そのユマン族さんーー大天使様が、皆さんのご先祖様を救ってくださったんですね!」
「ええ。この騎士団の原型も、大天使様が作ったと言われています」

 女性騎士と話していると、「モニカ」と後ろから呼び掛けられた。

「マキウス様!」

 後ろを振り向くと、婚姻届を提出しに行っていたマキウスが慌てたようにやって来たのだった。

「モニカ、探しましたよ。こちらにいたんですね」
「心配をおかけしてすみません。こちらの壁画が気になってしまって……」
「全く、貴女という人は……」

 やれやれと、呆れたように、モニカに近づいてきたマキウスだったが、隣に立っていた女性騎士の姿に気づいたのか足を止めた。
 そうして、何故か、顔を強張らせたのだった。

「マキウス様?」

 モニカが首を傾げると、マキウスは顔を強張らせたまま女性騎士に声を掛けたのだった。

「……隊長、今日はお休みだったはずでは?」 
「ええ。忘れ物をしたので、取りに来たんです」

 隊長と呼ばれた女性騎士は、マキウスを見つめたまま答えた。
 マキウスは女性騎士を一瞥すると、モニカに向き直ったのだった。

「……用は済みました。さあ、行きましょう」

 マキウスはモニカの手を取ると、そのまま立ち去ろうとした。
 その時ーー。
 
「マキウス」
 
 女性騎士が静かに呼び掛けると、マキウスはピタリと足を止めた。
 危うく、急に立ち止まったマキウスの背にぶつかるところだった。

「マキウス様……?」

 先程から、いつものマキウスらしくない態度に戸惑っていると、女性騎士が話し出したのだった。
 
「姉である私に、義妹いもうとを紹介してくれないのですね」

 その言葉に、モニカに背を向けていたマキウスの身体がビクリと震えた。
 モニカの手を掴んだマキウスの手に、力が込められた。
 
「えっ? 姉? 義妹?」 

 モニカが困惑していると、マキウスは顔を強張らせたまま、女性騎士に向き直ったのだった。

「……失礼しました。隊長・・。彼女は、モニカ・ハージェントです。今日を持って、正式に私の妻となりました」

 マキウスは次いでモニカの方を向くと、「そして」と話し出す。
 
「モニカ。彼女の名前はヴィオーラ。私が所属している小隊の隊長です。……そして、私の異母姉あねでもあります」
 
 女性騎士ーーヴィオーラは、胸に手を当てると、モニカに向かって優雅に一礼をしたのだった。
 
「初めまして、モニカさん。弟がお世話になっております。
 私はヴィオーラ・シネンシス・ブーゲンビリアと言います。
 ブーゲンビリア侯爵家の当主であり、マキウスの姉になります」
 
 そうして、ヴィオーラは顔を上げると、微笑んだのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

処理中です...