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第一部
「モニカ」になれない【2】
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マキウスはじっとモニカを見つめた。
「リュド殿が期待する『モニカ』ですか?」
モニカは何度も頷いたのだった。
「お兄ちゃんは、一緒に暮らしていた頃の『モニカ』を求めていました。髪を切って欲しいと言われた時も」
モニカがリュドヴィックに言われて、リュドヴィックの髪を切ろうとしていたのを、マキウスは使用人から聞いていた。
そして、切らずに終わったことも。
「お兄ちゃんは『いつもの長さに切って欲しい』と言いました。一緒に暮らしていた頃のように。
けれども、私はお兄ちゃんと一緒に暮らしていた『モニカ』じゃない。だから、お兄ちゃんが言っている『いつもの長さ』が、わからなかったんです……!」
「リュド殿に『いつもの長さがわからない。いつもの長さを教えて欲しい』とは、言わなかったんですか?」
「でも、それを言ったら、お兄ちゃんに私が『モニカ』じゃないって、バレてしまうじゃないですか……。私が「モニカ」じゃないって知ったら、お兄ちゃんはどう思うんだろうってーーどんな顔をするんだろうって……。そう考えたら、怖くなってしまって……」
「モニカ……」
「お兄ちゃんを悲しませたくないんです……! お兄ちゃんの期待を裏切りたくないんです! そんなこと、きっと『モニカ』は望んでいない!」
モニカは両手で顔を覆って泣き出した。
「やっぱり、私は『モニカ』じゃないんです。『モニカ』になれないんです! それなのに、どうして私はモニカになったのでしょうか? モニカになれないのに、どうして私が……!」
あの日、マキウスがモニカの正体を問い詰めた時、モニカは自身の中から『モニカ』が旅立つ際に、モニカを託されたと話していた。
「みんなを、よろしくね」と、言われたと。
「『モニカ』にならないといけないのに……『モニカ』の言う「みんな」の為にも。私が「モニカ」にならないといけないのに……」
マキウスはモニカが顔を覆っていた両手首を掴んだ。
ゆるゆるとモニカの両手を下ろさせると、そこには潤んだ青い目で、じっとマキウスを見つめてくるモニカがいたのだった。
「マキウス様……?」
「貴女は『モニカ』にはなれません。どんなに『モニカ』の真似や振りをしても。何故なら……」
マキウスはそっと息をつくと、モニカに顔を近づけた。
そうして、囁いたのだった。
「貴女は、『モニカ』ではないからです」
モニカは大きく目を見開いた。
「そうですよね……。私では『モニカ』にはなれないですよね……」
「仮に貴女ではなく、私が『モニカ』の真似をしても、『モニカ』にはなれません。アマンテやアガタ、姉上、他の誰がやっても同じです。誰一人として、『モニカ』にはなれません」
「それは、どうして……?」
マキウスはモニカの両頬を流れる涙を吸い取り、涙の跡を舌で舐めとると、そっと顔を離す。
「貴女がモニカを託されたのは、貴女が『モニカ』になる為ではありません」
マキウスは「これはあくまで私の想像ですが……」と、前置きをしてから続ける。
「貴女がモニカを託され、貴女がモニカになったのは、貴女なりに『モニカ』の代わりに、みんなを見守って欲しかったからではないでしょうか」
「リュド殿が期待する『モニカ』ですか?」
モニカは何度も頷いたのだった。
「お兄ちゃんは、一緒に暮らしていた頃の『モニカ』を求めていました。髪を切って欲しいと言われた時も」
モニカがリュドヴィックに言われて、リュドヴィックの髪を切ろうとしていたのを、マキウスは使用人から聞いていた。
そして、切らずに終わったことも。
「お兄ちゃんは『いつもの長さに切って欲しい』と言いました。一緒に暮らしていた頃のように。
けれども、私はお兄ちゃんと一緒に暮らしていた『モニカ』じゃない。だから、お兄ちゃんが言っている『いつもの長さ』が、わからなかったんです……!」
「リュド殿に『いつもの長さがわからない。いつもの長さを教えて欲しい』とは、言わなかったんですか?」
「でも、それを言ったら、お兄ちゃんに私が『モニカ』じゃないって、バレてしまうじゃないですか……。私が「モニカ」じゃないって知ったら、お兄ちゃんはどう思うんだろうってーーどんな顔をするんだろうって……。そう考えたら、怖くなってしまって……」
「モニカ……」
「お兄ちゃんを悲しませたくないんです……! お兄ちゃんの期待を裏切りたくないんです! そんなこと、きっと『モニカ』は望んでいない!」
モニカは両手で顔を覆って泣き出した。
「やっぱり、私は『モニカ』じゃないんです。『モニカ』になれないんです! それなのに、どうして私はモニカになったのでしょうか? モニカになれないのに、どうして私が……!」
あの日、マキウスがモニカの正体を問い詰めた時、モニカは自身の中から『モニカ』が旅立つ際に、モニカを託されたと話していた。
「みんなを、よろしくね」と、言われたと。
「『モニカ』にならないといけないのに……『モニカ』の言う「みんな」の為にも。私が「モニカ」にならないといけないのに……」
マキウスはモニカが顔を覆っていた両手首を掴んだ。
ゆるゆるとモニカの両手を下ろさせると、そこには潤んだ青い目で、じっとマキウスを見つめてくるモニカがいたのだった。
「マキウス様……?」
「貴女は『モニカ』にはなれません。どんなに『モニカ』の真似や振りをしても。何故なら……」
マキウスはそっと息をつくと、モニカに顔を近づけた。
そうして、囁いたのだった。
「貴女は、『モニカ』ではないからです」
モニカは大きく目を見開いた。
「そうですよね……。私では『モニカ』にはなれないですよね……」
「仮に貴女ではなく、私が『モニカ』の真似をしても、『モニカ』にはなれません。アマンテやアガタ、姉上、他の誰がやっても同じです。誰一人として、『モニカ』にはなれません」
「それは、どうして……?」
マキウスはモニカの両頬を流れる涙を吸い取り、涙の跡を舌で舐めとると、そっと顔を離す。
「貴女がモニカを託されたのは、貴女が『モニカ』になる為ではありません」
マキウスは「これはあくまで私の想像ですが……」と、前置きをしてから続ける。
「貴女がモニカを託され、貴女がモニカになったのは、貴女なりに『モニカ』の代わりに、みんなを見守って欲しかったからではないでしょうか」
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