【第一部完結・改稿版】ハージェント家の天使

夜霞

文字の大きさ
178 / 247
第一部

流星群と明かされた過去・下【6】

しおりを挟む
「それでは、貴女に失礼でしょう。貴女以外の女性も想うなどと……」
「それこそ、勝手に決めつけないで下さい。私はマキウス様が『モニカ』を想っていても怒りません! 自分の罪から目を逸らさずに、それと向き直って、『モニカ』を想い続ける……そんな真摯的なマキウス様が好きです!」

 モニカの言葉に、マキウスは顔を歪めて泣きそうになっていたが、決して泣くことは無く、ただモニカをじっと見つめていた。

「……こんな私で良いと、貴女は言うんですか? 私を許してくれると」
「許すも許さないも無いです。私は『モニカ』のことも大切に想っているマキウス様が良いんです」
「『モニカ』を想い続けることで、もしかしたら貴女を苦しませるかもしれません。それでもいいんですね?」
「いいんです。ここでマキウス様が『モニカ』を忘れると言ったら、私が『薄情者!』と言って、平手打ちをします」

 モニカが悪戯っぽく言っただろうか。マキウスは一瞬だけ目を見張った後に、モニカと同じように悪戯っぽく笑って返してきたのだった。

「今後、貴女と交わっている時も、『モニカ』を考えているかもしれませんよ?」
「そ、それは……。でも、マキウス様ならいいです……」
「モニカ。こういう時は、『交わっている時は、私だけを見てくれなきゃ嫌です!』と言って、嫉妬するところです」
「そ、そうなんですか……!?」
「冗談です」
「もう……」
「ですが、貴女を前にしている時は、貴女のことだけを想います。それは約束しますよ」

 ようやく、いつもの二人に戻ってきた。
 二人は安堵した様に顔を見合わせると、互いに笑みを浮かべたのだった。

「マキウス様こそ、私でいいんですか? 私は相応しくないかもしれませんよ?」
「私も貴女がいいんです。どんなに辛く苦しい状況でも、耐えてきた貴女が。……今まで、よく耐えてきました。でも、もう耐える必要はありません。これからはいついかなる時も、私が守ります。貴女はただ私の側に居てくれればいい」

 これまでの御國だった頃の凄惨な過去と傷を受け止めてもらい、苦労を労われて、モニカの目に涙が溢れてくる。
 けれども、なんとか言葉を振り絞ると、「守られるだけは嫌です」と返したのだった。

「私も、マキウス様の役に立ちたいです……。守られてばかりは嫌なんです……」
「そうでしたね。貴女はそういう方でした。だからこそ、私は貴女に心惹かれていったのでしょう」

 目尻から溢れた涙を、マキウスの指先が払ってくれる。
 もうマキウスの太くて温かい指先が怖いとは思わなかった。
 もっと触れて欲しいと、心だけでなく、身体中がマキウスを欲していた。

「これでもまだ相応しく無いと思うのなら、相応しいと思えるようになりましょう。お互いに」
「はい……」

 その時、モニカが星屑を散りばめた空を見上げると、一際大きな流星が流れて行った。

「マキウス様、見ましたか? 今、大きな星が流れて……」
「モニカ」

 モニカが呼ばれて振り向くと、目の前には幾千の星々にも引けを取らない、マキウスの端正な顔があった。
 目を見開いたまま、固まっていたモニカの唇に、マキウスは口づけてきたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

処理中です...