【第一部完結・改稿版】ハージェント家の天使

夜霞

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第一部

★介添え【1】

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「モニカ、まさかとは思いますが……一人で入っているんですか。手伝いもなく」
「はい。お風呂くらいは、ゆっくり一人で入りたいので」

 沐浴の用意が出来たとティカに呼ばれて、浴室にやって来たモニカだったが、何故か外で待つと言っていたマキウスは中までついてきた。

「あの、マキウス様がついて来る必要はないとは思いますが……」
「貴女の夫として、屋敷の主人として、沐浴に不備がないか確認するのは当然のことです。いつも使用人たちに任せていたら、彼らも主人の目がないからと、気を抜いてしまうこともあるでしょう」
「つまり、抜き打ちテストってことですか……」

 浴室の扉を開けると、バスタブらしき白い陶器の箱の中には、既に熱そうな湯気が立つお湯がたっぷりと入っていた。
 その側には足し湯用として、別に湯を溜めた盥がいくつか置かれていた。
棚にも石鹸やタオル類が並べられており、特に不足しているものは無さそうだった。

「特に問題はなさそうなので、それではマキウス様は……」
「モニカ、貴女はもう少し男爵夫人としての自覚を持って下さい」

 モニカが振り返ると、マキウスは呆れたように溜め息をついたところだった。

「自覚ですか……」
「使用人が沐浴に付き添うのは、何も世話をするだけではありません。無防備な姿を晒している主人やその家族に危険が及ばないように守る意味もあるんです」
「でも、そんな危険は無いですし、それに使用人の人数も少ないのに、私に付き合わせるのも……恥ずかしいですし……」
「屋敷の外からだけではなく、中からも危害を加えられるかもしれません。何があってもおかしくはないんです。使用人もそれが仕事なので、貴女の身体に関して何も思いません」
「そ、そうでしょうか……」
「そうです。……説教はこれくらいにしましょう。さあ、貴女は服を脱いで入って下さい。今日は私が貴女の介添えをします」

 モニカは自分の顔が赤面していくのを感じていた。

「マキウス様がするんですか……?」
「嫌ですか?」
「嫌というよりは……恥ずかしいです……」
「先程の続きをするようなものです。恥ずかしがらずに、これも慣れだと思って下さい。勿論、嫌なら無理強いはしません」
「い、いえ! 大丈夫です」

 そう言って、どこか項垂れているようにも見えるマキウスを放っておけず、モニカは慌てたのだった。

「恥ずかしいですが……お願いします」
「それは良かった。では、早速」

 先程の項垂れようはなんだったのかというくらい、マキウスはすぐにいつもの顔に戻ると、モニカのドレスのボタンに手を掛けていった。

「自分で脱げます! 大丈夫です……!」
「これも使用人の仕事です。今日は私が介添えをするので、私の仕事です」

 慣れた手つきで前開きのボタンを全て外されて、腰のリボンも解かれると、床にドレスが落下する。
 更にその上に、コルセット、ペチコート、下着の順に脱がされていき、止める間も無く、モニカは生まれた時の姿になっていったのだった。

「こうして、何も身につけていない貴女の姿を見るのは初めてですが……美しいですね」
「は、恥ずかしいので見ないで下さい……!」

 すぐに手近にあったタオルで胸元まで隠すが、マキウスによって身体を抱き寄せられる。

「もっと良く見せて下さい。私の『天使』」

 そう耳元で囁かれて、モニカの胸は激しく高鳴る。

「で、でも……やっぱり、恥ずかしい」
「ですが、ここでは風邪を引いてしまいますね。中に入ってしまいましょう。私も服を脱いだら、すぐに行きます」

 その言葉に、モニカは顔を上げる。

「マキウス様も一緒に入るんですか!?」
「当然です。今の私は貴女の介添えです。貴女の世話をしなくてどうします」

 そうして、マキウスによって浴室の中に送り出されつつ、モニカが後ろを振り返ると、マキウスは部屋着のシャツを脱いでいたのだった。
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