210 / 247
第一部
★介添え【1】
しおりを挟む
「モニカ、まさかとは思いますが……一人で入っているんですか。手伝いもなく」
「はい。お風呂くらいは、ゆっくり一人で入りたいので」
沐浴の用意が出来たとティカに呼ばれて、浴室にやって来たモニカだったが、何故か外で待つと言っていたマキウスは中までついてきた。
「あの、マキウス様がついて来る必要はないとは思いますが……」
「貴女の夫として、屋敷の主人として、沐浴に不備がないか確認するのは当然のことです。いつも使用人たちに任せていたら、彼らも主人の目がないからと、気を抜いてしまうこともあるでしょう」
「つまり、抜き打ちテストってことですか……」
浴室の扉を開けると、バスタブらしき白い陶器の箱の中には、既に熱そうな湯気が立つお湯がたっぷりと入っていた。
その側には足し湯用として、別に湯を溜めた盥がいくつか置かれていた。
棚にも石鹸やタオル類が並べられており、特に不足しているものは無さそうだった。
「特に問題はなさそうなので、それではマキウス様は……」
「モニカ、貴女はもう少し男爵夫人としての自覚を持って下さい」
モニカが振り返ると、マキウスは呆れたように溜め息をついたところだった。
「自覚ですか……」
「使用人が沐浴に付き添うのは、何も世話をするだけではありません。無防備な姿を晒している主人やその家族に危険が及ばないように守る意味もあるんです」
「でも、そんな危険は無いですし、それに使用人の人数も少ないのに、私に付き合わせるのも……恥ずかしいですし……」
「屋敷の外からだけではなく、中からも危害を加えられるかもしれません。何があってもおかしくはないんです。使用人もそれが仕事なので、貴女の身体に関して何も思いません」
「そ、そうでしょうか……」
「そうです。……説教はこれくらいにしましょう。さあ、貴女は服を脱いで入って下さい。今日は私が貴女の介添えをします」
モニカは自分の顔が赤面していくのを感じていた。
「マキウス様がするんですか……?」
「嫌ですか?」
「嫌というよりは……恥ずかしいです……」
「先程の続きをするようなものです。恥ずかしがらずに、これも慣れだと思って下さい。勿論、嫌なら無理強いはしません」
「い、いえ! 大丈夫です」
そう言って、どこか項垂れているようにも見えるマキウスを放っておけず、モニカは慌てたのだった。
「恥ずかしいですが……お願いします」
「それは良かった。では、早速」
先程の項垂れようはなんだったのかというくらい、マキウスはすぐにいつもの顔に戻ると、モニカのドレスのボタンに手を掛けていった。
「自分で脱げます! 大丈夫です……!」
「これも使用人の仕事です。今日は私が介添えをするので、私の仕事です」
慣れた手つきで前開きのボタンを全て外されて、腰のリボンも解かれると、床にドレスが落下する。
更にその上に、コルセット、ペチコート、下着の順に脱がされていき、止める間も無く、モニカは生まれた時の姿になっていったのだった。
「こうして、何も身につけていない貴女の姿を見るのは初めてですが……美しいですね」
「は、恥ずかしいので見ないで下さい……!」
すぐに手近にあったタオルで胸元まで隠すが、マキウスによって身体を抱き寄せられる。
「もっと良く見せて下さい。私の『天使』」
そう耳元で囁かれて、モニカの胸は激しく高鳴る。
「で、でも……やっぱり、恥ずかしい」
「ですが、ここでは風邪を引いてしまいますね。中に入ってしまいましょう。私も服を脱いだら、すぐに行きます」
その言葉に、モニカは顔を上げる。
「マキウス様も一緒に入るんですか!?」
「当然です。今の私は貴女の介添えです。貴女の世話をしなくてどうします」
そうして、マキウスによって浴室の中に送り出されつつ、モニカが後ろを振り返ると、マキウスは部屋着のシャツを脱いでいたのだった。
「はい。お風呂くらいは、ゆっくり一人で入りたいので」
沐浴の用意が出来たとティカに呼ばれて、浴室にやって来たモニカだったが、何故か外で待つと言っていたマキウスは中までついてきた。
「あの、マキウス様がついて来る必要はないとは思いますが……」
「貴女の夫として、屋敷の主人として、沐浴に不備がないか確認するのは当然のことです。いつも使用人たちに任せていたら、彼らも主人の目がないからと、気を抜いてしまうこともあるでしょう」
「つまり、抜き打ちテストってことですか……」
浴室の扉を開けると、バスタブらしき白い陶器の箱の中には、既に熱そうな湯気が立つお湯がたっぷりと入っていた。
その側には足し湯用として、別に湯を溜めた盥がいくつか置かれていた。
棚にも石鹸やタオル類が並べられており、特に不足しているものは無さそうだった。
「特に問題はなさそうなので、それではマキウス様は……」
「モニカ、貴女はもう少し男爵夫人としての自覚を持って下さい」
モニカが振り返ると、マキウスは呆れたように溜め息をついたところだった。
「自覚ですか……」
「使用人が沐浴に付き添うのは、何も世話をするだけではありません。無防備な姿を晒している主人やその家族に危険が及ばないように守る意味もあるんです」
「でも、そんな危険は無いですし、それに使用人の人数も少ないのに、私に付き合わせるのも……恥ずかしいですし……」
「屋敷の外からだけではなく、中からも危害を加えられるかもしれません。何があってもおかしくはないんです。使用人もそれが仕事なので、貴女の身体に関して何も思いません」
「そ、そうでしょうか……」
「そうです。……説教はこれくらいにしましょう。さあ、貴女は服を脱いで入って下さい。今日は私が貴女の介添えをします」
モニカは自分の顔が赤面していくのを感じていた。
「マキウス様がするんですか……?」
「嫌ですか?」
「嫌というよりは……恥ずかしいです……」
「先程の続きをするようなものです。恥ずかしがらずに、これも慣れだと思って下さい。勿論、嫌なら無理強いはしません」
「い、いえ! 大丈夫です」
そう言って、どこか項垂れているようにも見えるマキウスを放っておけず、モニカは慌てたのだった。
「恥ずかしいですが……お願いします」
「それは良かった。では、早速」
先程の項垂れようはなんだったのかというくらい、マキウスはすぐにいつもの顔に戻ると、モニカのドレスのボタンに手を掛けていった。
「自分で脱げます! 大丈夫です……!」
「これも使用人の仕事です。今日は私が介添えをするので、私の仕事です」
慣れた手つきで前開きのボタンを全て外されて、腰のリボンも解かれると、床にドレスが落下する。
更にその上に、コルセット、ペチコート、下着の順に脱がされていき、止める間も無く、モニカは生まれた時の姿になっていったのだった。
「こうして、何も身につけていない貴女の姿を見るのは初めてですが……美しいですね」
「は、恥ずかしいので見ないで下さい……!」
すぐに手近にあったタオルで胸元まで隠すが、マキウスによって身体を抱き寄せられる。
「もっと良く見せて下さい。私の『天使』」
そう耳元で囁かれて、モニカの胸は激しく高鳴る。
「で、でも……やっぱり、恥ずかしい」
「ですが、ここでは風邪を引いてしまいますね。中に入ってしまいましょう。私も服を脱いだら、すぐに行きます」
その言葉に、モニカは顔を上げる。
「マキウス様も一緒に入るんですか!?」
「当然です。今の私は貴女の介添えです。貴女の世話をしなくてどうします」
そうして、マキウスによって浴室の中に送り出されつつ、モニカが後ろを振り返ると、マキウスは部屋着のシャツを脱いでいたのだった。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる