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第一部
★本当の夫婦として
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次の日、目が覚めると、これまでとは何かが違っていた。
マキウスと交ざり合った身体は、ズキズキと身体の内側から痛みを訴えており、若干の疲労も残っていた。
それなのに、心はまるで蒼穹の様に澄んでいた。
(なんだろう。身体の中が澄み渡っているような不思議な感じ……)
そんなことを思いながら、ベッドから降りて、床に足をつけると、わずかに身体の内側がズキリと痛む。
「……っ!」
痛みから足に力が入らず、ベッドに倒れそうになるが、なんとか踏み止まると、そっと立ち上がる。
そして昨晩と同じ一糸纏わぬ姿のまま、わずかに開いたカーテンに向かう。
カーテンを開けて外に目を向けると、家々の煙突からは白い煙が昇り、今日という日の始まりの用意をしていた。
ふと、目線を正面に向けると、そこには朝陽を浴びて輝くような金髪に、海の様な青い瞳を持った何も身に纏っていない女性ーーモニカが窓ガラスに映っていた。
そっと掌で窓ガラスに触れると、同じ様に窓ガラスに映ったモニカも掌を伸ばして、ガラスに触れた。
まだ少女特有の愛らしさが残る顔立ちに向かって、モニカは呟く。
「おはよう。モニカ」
窓ガラスに映った「モニカ」は、一瞬笑ったように見えたのだった。
その時、窓ガラスに映る「モニカ」の後ろに人影が見えたかと思うと、後ろから抱き竦められたのだった。
「随分と早起きなんですね。身体はもう大丈夫なんですか?」
「マキウス様……」
モニカと同じく裸身で現れたマキウスは、窓ガラスに一瞬だけ目線を移した。
そこに何かを見つけると、すぐに目線をモニカに戻したのだった。
「これなら昨晩は遠慮せずに、意識を失うか、ベッドから起き上がれなくなるまで続けるべきでしたね」
「あれでも、結構、苦しくて、痛かったんです……」
意識を失うまで交じり合うというのは、どういうことだろうか。気にならなくもないが、モニカにはまだ早いような気がした。
尻すぼみになりながら答えるが、マキウスは「そうでしたか」と端的に言って、左手でモニカの金髪を耳に掛けてくれた。
手が離れる際に、マキウスの薬指に嵌ったシルバーの指輪に気づいて、目を丸く見開くが、夫は静かに微笑んだだけであった。
「さて、もう一眠りしましょうか。使用人たちには誰も部屋に近づかないように指示したので、今朝はゆっくり二人だけの時間を過ごせそうです」
「で、でも、ニコラの授乳の時間が……!」
「それはアマンテに任せましょう。ニコラの乳母なのですから」
言い募ろうとすると、マキウスはモニカの唇に口づけて言葉を封じ込めてきた。
長く静かに口づけた後、ようやくマキウスは離してくれたのだった。
「ここも貴女の弱点なんですね」
羞恥で頬を赤く染めていると、意地悪くマキウスは微笑む。
再びカーテンを閉められ、昨晩、姿見の前で脱いだまま放り投げていたバスローブを肩からかけられると、そのまま抱き上げられて、ベッドまで運ばれる。
ニコラを寝かせる時の様に、そっとベッドに寝かされると、その上にマキウスが覆い被さってくる。
マキウスの白に近い灰色の長い髪が顔の上に落ちてきたので、それを振り払うと、間近にはマキウスの顔があったのだった。
「……っ!」
デコルテに口づけを落とされると、モニカの身体は小さく身震いした。
そんなモニカにマキウスは微笑むと、隣にやって来て横になる。
その弾みでスプリンクラーが音を立てて、ベッドが小さく揺れた。
手を伸ばして、モニカの頬を軽く撫でると、次いで肩に触れてきた。
モニカがじっと身構えていると、肩に触れた手は背中に回され、そのままマキウスの腕の中に抱き寄せられたのだった。
「たまには二人きりの朝を過ごしましょう。二人だけの穏やかな朝を……」
マキウスが言い終わった直後に、遠くから赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。ニコラが起きたのだろう。
母親として、愛娘の元に行かなければならない。
けれども、マキウスは腕を離してくれなかった。
口を開いて抗議の言葉を発しようとすれば、マキウスの口に塞がれてしまった。
そうしている内にアマンテがやって来たのか、ニコラの泣き声は静かになっていき、やがてピタリと止まった。
ようやく口を離したマキウスは、得意気に笑ったのだった。
「先程言った通りです。ニコラは任せて大丈夫だと。今朝だけは、貴女を独り占めします。相手が娘でも貴女は渡しません」
「娘に嫉妬しないで下さい……!」
わずかに捲れたカーテンから、朝陽が差し込んできた。
薄明るい部屋で見上げた夫の顔は、いつも以上に端麗な顔に見えたのだった。
マキウスと交ざり合った身体は、ズキズキと身体の内側から痛みを訴えており、若干の疲労も残っていた。
それなのに、心はまるで蒼穹の様に澄んでいた。
(なんだろう。身体の中が澄み渡っているような不思議な感じ……)
そんなことを思いながら、ベッドから降りて、床に足をつけると、わずかに身体の内側がズキリと痛む。
「……っ!」
痛みから足に力が入らず、ベッドに倒れそうになるが、なんとか踏み止まると、そっと立ち上がる。
そして昨晩と同じ一糸纏わぬ姿のまま、わずかに開いたカーテンに向かう。
カーテンを開けて外に目を向けると、家々の煙突からは白い煙が昇り、今日という日の始まりの用意をしていた。
ふと、目線を正面に向けると、そこには朝陽を浴びて輝くような金髪に、海の様な青い瞳を持った何も身に纏っていない女性ーーモニカが窓ガラスに映っていた。
そっと掌で窓ガラスに触れると、同じ様に窓ガラスに映ったモニカも掌を伸ばして、ガラスに触れた。
まだ少女特有の愛らしさが残る顔立ちに向かって、モニカは呟く。
「おはよう。モニカ」
窓ガラスに映った「モニカ」は、一瞬笑ったように見えたのだった。
その時、窓ガラスに映る「モニカ」の後ろに人影が見えたかと思うと、後ろから抱き竦められたのだった。
「随分と早起きなんですね。身体はもう大丈夫なんですか?」
「マキウス様……」
モニカと同じく裸身で現れたマキウスは、窓ガラスに一瞬だけ目線を移した。
そこに何かを見つけると、すぐに目線をモニカに戻したのだった。
「これなら昨晩は遠慮せずに、意識を失うか、ベッドから起き上がれなくなるまで続けるべきでしたね」
「あれでも、結構、苦しくて、痛かったんです……」
意識を失うまで交じり合うというのは、どういうことだろうか。気にならなくもないが、モニカにはまだ早いような気がした。
尻すぼみになりながら答えるが、マキウスは「そうでしたか」と端的に言って、左手でモニカの金髪を耳に掛けてくれた。
手が離れる際に、マキウスの薬指に嵌ったシルバーの指輪に気づいて、目を丸く見開くが、夫は静かに微笑んだだけであった。
「さて、もう一眠りしましょうか。使用人たちには誰も部屋に近づかないように指示したので、今朝はゆっくり二人だけの時間を過ごせそうです」
「で、でも、ニコラの授乳の時間が……!」
「それはアマンテに任せましょう。ニコラの乳母なのですから」
言い募ろうとすると、マキウスはモニカの唇に口づけて言葉を封じ込めてきた。
長く静かに口づけた後、ようやくマキウスは離してくれたのだった。
「ここも貴女の弱点なんですね」
羞恥で頬を赤く染めていると、意地悪くマキウスは微笑む。
再びカーテンを閉められ、昨晩、姿見の前で脱いだまま放り投げていたバスローブを肩からかけられると、そのまま抱き上げられて、ベッドまで運ばれる。
ニコラを寝かせる時の様に、そっとベッドに寝かされると、その上にマキウスが覆い被さってくる。
マキウスの白に近い灰色の長い髪が顔の上に落ちてきたので、それを振り払うと、間近にはマキウスの顔があったのだった。
「……っ!」
デコルテに口づけを落とされると、モニカの身体は小さく身震いした。
そんなモニカにマキウスは微笑むと、隣にやって来て横になる。
その弾みでスプリンクラーが音を立てて、ベッドが小さく揺れた。
手を伸ばして、モニカの頬を軽く撫でると、次いで肩に触れてきた。
モニカがじっと身構えていると、肩に触れた手は背中に回され、そのままマキウスの腕の中に抱き寄せられたのだった。
「たまには二人きりの朝を過ごしましょう。二人だけの穏やかな朝を……」
マキウスが言い終わった直後に、遠くから赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。ニコラが起きたのだろう。
母親として、愛娘の元に行かなければならない。
けれども、マキウスは腕を離してくれなかった。
口を開いて抗議の言葉を発しようとすれば、マキウスの口に塞がれてしまった。
そうしている内にアマンテがやって来たのか、ニコラの泣き声は静かになっていき、やがてピタリと止まった。
ようやく口を離したマキウスは、得意気に笑ったのだった。
「先程言った通りです。ニコラは任せて大丈夫だと。今朝だけは、貴女を独り占めします。相手が娘でも貴女は渡しません」
「娘に嫉妬しないで下さい……!」
わずかに捲れたカーテンから、朝陽が差し込んできた。
薄明るい部屋で見上げた夫の顔は、いつも以上に端麗な顔に見えたのだった。
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