食堂のおばあちゃん物語

みどり

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ピンチヒッター、シンコ

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おじさん英(A)に代わりまして、シンコ




桜木シンコは運送会社でドライバーをしている女子だった。

夫がいて扶養の範囲で働いていた。

なので、仕事は軽自動車で近回りを担当していた。

日焼け止めを塗っていても日焼けが気になるお年頃だった。


「旦那さんの給料いくら?アンタ働かなくていいんじゃないの?」

「女の言うことは聞かないぜ。」

「たいした仕事できないじゃないか。アンタこそお荷物なんだよ。」



帰宅して「ホンマにク○!」と言うのが日課だった。



洗面所で手を洗いながらシンコは思った。


水回りはいつも綺麗にしているつもりでも

汚れがついてくる

洗剤や時にはパイプクリーナーも必要になる。

私の心にも汚れがついているのかも知れない。

漂白剤のようなキツい薬が必要なのかな?


好きな音楽を聴いたら?

映画を観たら?

心が晴れるの?


紅葉の綺麗な葉も

排水溝に落ちて集まったら

それを見てため息が出るの?




やっぱ美味しいものでしょ!

今日も社員食堂でご飯を食べていた。




数時間後

ク○と叫びたい指数が上がってきたシンコは

一刻も早くタイムカードを退勤にしたくなり

事務所へ急いだ。



「シンコさんちょっとお願いがあるんですけど。」

事務員のみちよに呼び止められた。


「はい。」


「英(A)さんが体調不良で明日も出勤できそうにないんです。

 急で申しわけないのですが、明日どうしても行かないといけない所が

 あるんです。長時間になるんですがお願いできませんか?

 シンコさんの明日の分は別の人にお願いしますから。」


「わかりました。詳しく聞かせてください。」


「いいの⁉︎助かります。では、こちらで掛けてお話しましょう。」




翌朝


シンコの運転する大型トラックは颯爽と車庫を出て行った。


同僚のおじさんたちはびっくりし過ぎて言葉も出なかった。


シンコは所定の場所で荷物を受け取ると

高速に乗り県外へ行った。


そして、夜になると

何事もなかったかのように

トラックは車庫のいつもの場所に停まっていた。



結婚する前はシンコは遠距離専門のトラガールであった。



結婚を機に家の近所の平次の会社で働いていた。

前の職場では人間関係で悩むことはあまりなかった。



おじさん英はシンコをクレーマー呼ばわりしたり

「アンタここの(男たちの)嫌われ者だね。」

と言っていた。





「今日から仕事行くんでしょうね?」

「ああ。」

「まったく。自分の体調管理くらいちゃんとしてよね。大人なんだから。」

「すまない。」

「アンタが寝込んでた間家事が溜まってんのよ。ちゃんとしてよね。」

「もう、時間だから。帰って来たらするよ。」

「ゴミ出しといてよ。あっ、ゴミ箱に新しい袋かけといてよね。

 この前袋かかってなかったからさぁ、アタシが新しい袋かけたのよ。」

「じゃ、行くよ。」

英が振り向くと奥さんはテレビを見ている。



「オレ、家でも職場でもゴミ袋新しいのかけるの嫌なんだよ。」



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