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イッヌ、走る
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椿はこの春異動になった。
とある町の交番に配属された。
「梅はちょっと変わったヤツだが
助けてやってくれ。」
恩師の言葉に少々不安を感じたが
異動なので仕方ない。
荷物と共に
東京のとある町にやって来た。
交番は駅前にあった。
田舎といっても駅前では
朝の通勤通学時間帯
それなりに人の往来があった。
駅前から商店街が伸びていた。
バンド and more の地元ということで
訪れるファンもいたので
平日でも商店街を散策する者がいた。
商店街を抜けると
とある運送会社があった。
ここが and more の事務所も兼ねており
交番ではよく道を聞かれた。
商店街ではお買い物情報満載の
周辺地図を作り配っていた。
駅にも置かれている。
椿は挨拶周りをしながら
商店街を歩いてみようと思っていた。
が、交番内に入ると
そんなことはすぐに忘れてしまった。
そこには
「財布を落とした」と言う人
「道に迷った」と言う人
「ちょっと、お巡りさん!」
といっている人
それらを見ながら入口に立っている人
がいた。
ついでに電話も鳴っていた。
梅はすでにパニックになっていた。
「あー。もう。こんないっぺんに声かかられたら
どうしたらいいのかわからないよ!」
漫画のように両手で頭を抱えて
頭をブンブン振りながら
叫んでいた。
椿はそういう大人を見たのは
初めてだった。
「どうされましたか?」
とりあえず交番に来た人たちに
声をかけた。
出入口にいた人は
「先に来てる方からお願いします。」
と言った。
梅は電話対応を始めた。
ひとりひとりの処理が終わり
交番は静かになった。
「今日からこちらに配属になりました。
椿です。よろしくお願いします。
梅さん。」
梅は自分より歳下の椿を見ると
ふたりしかいない部屋で
偉そうに「仕事とは」を語った。
椿は素直にその話を聞いていた。
交番にはパトカーもあったが
車が通れる道を通るよりは
周辺は自転車やバイクで商店街を
抜けた方が早かった。
新人の椿にはバイクは貸してもらえなかった。
商店の人たちには「椿ちゃん」
と呼ばれるようになった。
田舎町には凶悪事件は起こらず
平和な日々が続いている。
一度だけ、丑三つ時に運送会社に強盗が入った
と通報があったが、特に被害は無かった。
椿は自転車で商店街を抜け
全速力で現場に向かったが
犯人は椿の到着前に逃走し
外にいたおばあちゃんに
「何でパトカーで来なかったの?」
と言われただけだった。
最近では
その運送会社で飼っているイッヌが
散歩中に逃げるようになっていた。
いつも小学生の通学時間帯にイッヌの散歩をしている
はなおばあちゃんが連れているラム。
ビー玉みたいな目をしている
小さくて可愛い見た目ではあったが
なかなかやんちゃなイッヌであった。
朝通勤客に紛れて改札を抜けようとしたり
勝手に商店の中に入って行く。
はなおばあちゃんもわざと手を離しているのではない。
いつもは良いヌッコなのである。
椿に捕まり腕の中におさまると
人懐っこい目で椿のことを見るのだった。
これには椿も怒れない。
最近では交番の前に来ると
椿を呼ぶように「ワン」
と鳴くようになった。
椿を見ると尻尾を振る。
とある町の交番に配属された。
「梅はちょっと変わったヤツだが
助けてやってくれ。」
恩師の言葉に少々不安を感じたが
異動なので仕方ない。
荷物と共に
東京のとある町にやって来た。
交番は駅前にあった。
田舎といっても駅前では
朝の通勤通学時間帯
それなりに人の往来があった。
駅前から商店街が伸びていた。
バンド and more の地元ということで
訪れるファンもいたので
平日でも商店街を散策する者がいた。
商店街を抜けると
とある運送会社があった。
ここが and more の事務所も兼ねており
交番ではよく道を聞かれた。
商店街ではお買い物情報満載の
周辺地図を作り配っていた。
駅にも置かれている。
椿は挨拶周りをしながら
商店街を歩いてみようと思っていた。
が、交番内に入ると
そんなことはすぐに忘れてしまった。
そこには
「財布を落とした」と言う人
「道に迷った」と言う人
「ちょっと、お巡りさん!」
といっている人
それらを見ながら入口に立っている人
がいた。
ついでに電話も鳴っていた。
梅はすでにパニックになっていた。
「あー。もう。こんないっぺんに声かかられたら
どうしたらいいのかわからないよ!」
漫画のように両手で頭を抱えて
頭をブンブン振りながら
叫んでいた。
椿はそういう大人を見たのは
初めてだった。
「どうされましたか?」
とりあえず交番に来た人たちに
声をかけた。
出入口にいた人は
「先に来てる方からお願いします。」
と言った。
梅は電話対応を始めた。
ひとりひとりの処理が終わり
交番は静かになった。
「今日からこちらに配属になりました。
椿です。よろしくお願いします。
梅さん。」
梅は自分より歳下の椿を見ると
ふたりしかいない部屋で
偉そうに「仕事とは」を語った。
椿は素直にその話を聞いていた。
交番にはパトカーもあったが
車が通れる道を通るよりは
周辺は自転車やバイクで商店街を
抜けた方が早かった。
新人の椿にはバイクは貸してもらえなかった。
商店の人たちには「椿ちゃん」
と呼ばれるようになった。
田舎町には凶悪事件は起こらず
平和な日々が続いている。
一度だけ、丑三つ時に運送会社に強盗が入った
と通報があったが、特に被害は無かった。
椿は自転車で商店街を抜け
全速力で現場に向かったが
犯人は椿の到着前に逃走し
外にいたおばあちゃんに
「何でパトカーで来なかったの?」
と言われただけだった。
最近では
その運送会社で飼っているイッヌが
散歩中に逃げるようになっていた。
いつも小学生の通学時間帯にイッヌの散歩をしている
はなおばあちゃんが連れているラム。
ビー玉みたいな目をしている
小さくて可愛い見た目ではあったが
なかなかやんちゃなイッヌであった。
朝通勤客に紛れて改札を抜けようとしたり
勝手に商店の中に入って行く。
はなおばあちゃんもわざと手を離しているのではない。
いつもは良いヌッコなのである。
椿に捕まり腕の中におさまると
人懐っこい目で椿のことを見るのだった。
これには椿も怒れない。
最近では交番の前に来ると
椿を呼ぶように「ワン」
と鳴くようになった。
椿を見ると尻尾を振る。
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