ともかの物語

みどり

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逆まつげ

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ここは東京といっても田舎の

とある小さな音楽事務所。


若干名のスタッフが働いている。


トワは併設する運送会社のドライバーだったが

社長の孫娘・ゆいが女子大生だった頃

学園祭のイベントにこの音楽事務所に所属するバンドが

ゆいたち女子大生のバックバンドとしてボランティア出演し

事務員みちよの計らいでドライバーとして参加するも

ひょんなことからピアノを披露することになり

参加者はもとよりスタッフの度肝を抜き

音楽事務所にヘッドハンティングされていた。


それもそのはず

トワは幼少期からピアノを始め神童と呼ばれ

某有名音大卒であった。

大学卒業後は音楽から離れていたが

またこうして音楽に関わっていた。


女子大のイベントに参加していた時に

幼稚園児だった女の子から

「スケートの試合で流す音楽をピアノで弾いて欲しい。」

と言われ「いいですよ」と言い

その子には無料で曲を提供。

練習場に見に行くなどし交流を深める。

その子は一生懸命練習し、最近頭角を表しつつある。


バンドのメンバーになって!と言われるも

濃い面々とずっと一緒は苦手だったので

サポートメンバーとして参加。

普段は事務所で地味な作業をしていた。


そんなトワは夢の国オタであった。

隠しているつもりが隠し切れておらず

ファンの方から夢の国グッズが届いていた。


今日もいつものように

パソコンに向かって作業していた。



事務所に赤ちゃんの泣き声が聞こえ始める。


スタッフのひとり、ともかは赤ちゃん連れで出勤していた。

まだ10代のシングルマザーで見た目はギャルそのもの。

両親の許可を得て、社長の平次の家に居候していた。

赤ちゃんは女の子で、ベビーグッズは平次の孫たちからの

お下がりがたくさんあり、それを使っている。


ここの事務所では赤ちゃんも一員だった。

スタッフは皆、赤ちゃんに癒されている。


ベビーカーで寝ていた赤ちゃんが泣き始める。



トワの斜め向かいの席のともかは

ベビーカーから赤ちゃんを抱き上げると

授乳を始めた。


トワは、あっけらかんとしたともかが苦手だった。

ギャルの格好もあまり好きではなかった。


パソコンを見ているだけなのに

誤解されないか、目のやり場に困るトワ。


すかさずともかが話しかける。


「トワもアタシのおっぱい飲んでみたい?」

目が合うとニカっと笑う、ともか。


素朴なトワはしどろもどろになる。


「ちょっと、ともちゃん、あんまりトワを困らせないで。」

お姉さんスタッフが声をかける。


「だって、トワが飲みたそうな目で見るから。」


「見てないよ!見てないだろ!」

トワも赤い顔で直ぐに反論する。


「トワが辞めちゃうと、うちとっても困るんだからね。

 からかうのもほどほどにしてね。」


「ほどほどにしてね、じゃなくて、禁止にしてくださいよ。」

トワは上司に訴える。上司は微笑みを返す。


「だって、トワ、面白いんだもん。」

ともかには悪気は無かった。




ともかは翌日から2日間仕事が休みだった。



「おはようございま~す。」


「誰??」


事務所のスタッフは目が点になった。


見覚えのある赤ちゃんを抱き

会社の制服を着た黒髪のショートボブの女子がいた。


「誰?ってなによ!トワ!」


「ともちゃん?」


「どうしたの?」


「だって、おじいちゃんとみっちゃんにずっと制服着ろって言われてたし。

 逆まつげが痛くて病院で抜いてもらったら、カラコンつけたまま寝たらダメって言われるし。

 クマゴロウの店行ったら、黒髪の方がカワイイよって言われたし。

 そんなに変かな?」


めずらしく、ともかは泣きそうな声で言った。



「変じゃないよ。その方がかわいいよ。」


「トワに言われるとなんかムカツク!ギャルの格好がかわいくてなかったってことよね!」


「そんなこと言ってないよ。」


赤ちゃんが泣き出す。


「やっぱり、トワにはおっぱい飲ませてやんないからね!」



 


※クマゴロウの店とは近くの商店街の中にある美容室です。杏の同級生が夫婦でやっています。

 美容室の名前は別にあるのですが、ゆいがクマゴロウの店と言い出したのが始まりです。

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