ともかの物語

みどり

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思い起こせば

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ここはとある会社の社員食堂


ランチのピークが終わり

一旦、一般の入口は閉める。


ひと息ついたところでスタッフは食事をとる。


いつメンの

トミ、マツ、ナミ、はなおばあちゃんと

パートの主婦たち数名で食べる。


ナミおばあちゃんは夕方から浴室の番台の担当があるので

出勤前の食事タイム。

ナミおばあちゃんに番台にいて欲しい、との

ドライバーたちの要望でナミがシフトに入ることが多い。



ご婦人が集まると自然と井戸端会議が始まる。


今日の話題は

「社長・平次の隠し子疑惑」


元はといえば、食堂で同僚とランチを食べていた

シングルマザーのともかが連れているベビーカーの赤ちゃんに

平次が「ばぁ!パパでちゅよ~」と言ったのが始まり。(笑)



それを見ていた他のスタッフたちが

本当の父親なのか?

だから居候させているのか?

妻・トミは知らずに同居しているのか?

噂に尾鰭が付いて独り歩きしている。


主婦 「で、トミさんはどう思ってるんですか?噂で持ちきりですよ。」


マツ 「全く、ヒマなヤツらだね。」


主婦 「でも、昼ドラみたいで面白いじゃないですか。」


トミ 「そうねぇ。事実だとしたら慰謝料いくら取れるかしら?」


主婦 「会社ごと全部いただけるんじゃないですか?」


マツ 「出て行くのは平次に決まってるわよ。」


はな 「でも、平次さんはトミさんが怖いから絶対浮気とかできないと思います。」


トミ 「私ずっと専業主婦だったから。自分の貯金が無いのよ。

    マツさんたちみたいに若い頃働いたことが無いのよ。」


はな 「トミさん、随分若い頃から、おばあちゃんって呼ばれてましたもんね。」


主婦 「そうなんですか?夫婦で二人三脚で会社やってると思ってました。」


トミ 「確か、ここが建替えでこんな風になってからだから、

    社会人1年生は65歳の時だったかしら?ふふ。自分の歳忘れちゃうわ。」


主婦 「お給料初めてもらったのが65歳?新卒の65歳ですか。素敵‼︎」


トミ 「食堂があるから家でご飯作ること少なくなったのよ。」


マツ 「いいのよ。働く女性が家事を全部することない。使えるものは使えばいいのよ。」


ナミ 「炊事する場所が変わっただけで。トミさんの作るご飯はここのスタッフを支えているのよ。」


主婦 「皆さんの段取りは私たちも勉強になります。

    前働いてた所と違って、ここの人、意地悪な人がいないんですよね。」


主婦 「あ~それ、私も思った。」


ナミ 「口が悪い人が約1名いるけど気にしないで。」


マツ 「意地悪して何になるのさ。アホくさ。」


主婦 「でも、絶対マツさんはヤンキーですよね?」


みんなで笑った。




事務所では


「社長、知ってますか?ともちゃんの赤ちゃんの父親の噂。社長だって。」

事務員のカエデがわざと言う。


平次は豪快に笑い飛ばす。







平次の家では


居候のともかと赤ちゃんが寝室に行く。



平次は徐ろにいつもは入れないお茶を入れ出す。


カエデが知っているということは妻も知っているに違いない。


トミはそんな平次の様子を見て知らんぷりでお茶を飲む。


「あ、あのさぁ、変な噂が流れてるよな。全く無責任なヤツがいたもんだ。」


「何の噂ですか?」


「いや、知らなければ、それでいいんだ。無理に知ることはない。」


「今、家で眠っているともちゃんと赤ちゃんのことですか?

 見ず知らずの女の子を突然住まわせたのは、やはり…」


「そ、そんなことないだろ!何言ってるんだよ。」

平次の全身から変な汗が出る。


「ちょっとオレもう一回風呂行ってくるわ。」


平次は社員寮の大浴場へと向かった。


「オレにこんな思いをさせやがって‼︎噂の出所を絶対突き止めてやる!見つけたらコ○ス!」


「あら、平次さん。どうしたんですか?お顔がタコみたいに真っ赤ですよ。」


他の男たちには絶対言えないようなこともナミはサラっと言う。


浴室では「何かよくわからないけど、触らぬ神に祟りなし」と皆距離を取っていた。


今日も平和な一日であった。


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