「脇役人生」の生活日記

わっしー

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2.騎士学校選抜試験

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それから3年後。新暦219年。僕は宿屋の庭に向かう。
「ポチ。ご飯だよ。」
そうしてやってきたのは、あれから3年で成長したシルバーウルフのポチだった。体は今では僕よりも大きい。
(今日もおいしそうですね・・・。)
「そりゃ、そうだよ。なんせ、お母さんのお手製なんだから・・・。」
そう言って僕はポチの背中をさする。最近はポチの毛皮に包まれて眠るのが僕のマイブームだ。僕は餌を食べているポチを見ながら本に視線を戻した。
(イーグルはいつも本を読んでいますね?)
「そうかな?」
(はい。今日は何の本を読んでいるんですか?)
「魔物使いの本だよ。僕は将来魔物使いになりたいと思っているんだ。」
(魔物使いですか?)
ポチはよくわかんないような表情をする。
「うん。モンスターと契約して仲良くなるんだって。僕は色んなモンスターと仲良くなりたいんだ。」
(そうなのですか。イーグルならきっと成れますよ。)
「うん。ありがとう。」
そう話しているとポチはご飯を食べ終えたようだ。
(ごちそうさまです。イーグル、今日はどうします?)
「そうだね・・・。今日はゆっくり本を読んでいようかなと思っているんだけど・・・。」
(そうですか・・・。なら、私も一緒に居ます。)
「そんな・・・。僕のことは気にしないで散歩でも行って来ればいいよ。」
(いえ、私はイーグルと一緒に居たいんです。)
「ポチも物好きだね・・・。」
そうして、僕は本を読む。ポチはそんな僕の身体を包むように体を丸くする。とても暖かくてお日様の匂いがする。
そんなことをしていると向こうから走ってくる人影があった。
「おーい!イーグル!」
それはアルスだった。今日も元気に外で遊んでいるようだ。
「アルス?どうしたのこんな所に?」
「お前な・・・。今日は何の日か忘れたのか?」
「え?・・・誰かの誕生日だったっけ?」
そう言うとアルスは呆れたようにため息を吐く。
「今日は、王国から騎士学校の選抜試験があるだろ?」
騎士学校選抜試験。中立都市カーディナル共和国に置かれた騎士を養成する学校だ。その学校にはアーガスやアンクート、カーディナルの騎士や冒険者を目指す若者たちが集まってくる。
「ああ・・・。でも、それって僕には関係ないよ・・・。」
「なんでだ?」
アルスは不思議そうに首をかしげる。
「だって、騎士学校ってアルスみたいに剣を使える人や兄さんみたいな魔法使いじゃないと入れないところじゃないか。」
「お前だって、魔法が使えるだろ。」
「あのね・・・。僕は基礎的な魔法が使えるだけだよ。魔力量だって平凡だし・・・。」
「そんなの、受けてみないと分からないじゃないか?ほら、行くぞ!」
そう言ってアルスは僕を引っ張る。
「わかった・・・。わかったから・・・。ポチ、行こう。」
(わかりました。では、私の背に乗って・・・。)
そう言ってポチは僕たちの前でお座りをする。
「ポチは何て?」
「私の背中に乗ってだって・・・。じゃあ、行こうアルス。」
「ああ!」
そうして僕たちはポチに乗って選抜試験が行われている広場に向かった。
そこには、僕たちと同じぐらいの年頃の子供たちが集まっていた。そこで、試験が行われる。
「じゃあ、俺達も騎士の試験を受けるか。」
そう言ってアルスはその試験が行われている一角に向かった。僕はアルスについていく。
「うん。でも、僕は自信がないな・・・。」
「大丈夫だ。お前なら騎士の試験に合格できる。」
「その自信はどこから出てくるんだ?」
そう言っているとアルスの番になる。試験の内容は試験官と一対一の模擬戦を行う。武器を使うのも魔法を使うのもあり、使役するモンスターを使うのもあり、つまり何でもありのものだった。
「では、これより試験を開始する。受験者は前へ!」
「はい!酒場の息子アルスです。」
そう言ってアルスは用意された木剣を引き抜く。
「ほう・・・。その年にしてはいい構えをする。」
そう言って若い試験官が言う。そして、その試験官も木剣を構える。
「では、試験を開始する!では、始め!!」
次の瞬間、アルスは試験官に肉薄する。そして剣を振るう。しかし、そのアルスの剣を軽くいなす。体勢を崩したアルスに試験官は剣を振るう。アルスは剣を持っていない方で魔法を編む。
「フラッシュ!」
次の瞬間、閃光が瞬く。試験官は両眼を庇って一瞬動きが止まる。アルスはその隙にまた肉薄する。そして、試験官の木剣を弾く。弾かれた木剣は乾いた音を立てて地面に落ちるのだった。
「そこまで、勝者、酒場の息子アルス!」
その時、観戦していた村人たちが歓声を上げる。僕もアルスが勝ったことにホッとする。
(やっぱり、アルスさんはすごいですね・・・。)
「うん。アルスはとても強いから・・・。」
そうして、アルスが戻ってくる。
「お疲れさま。アルス。」
「ああ!楽勝だったぜ!」
そういうアルスはとても嬉しそうだった。次の試験官はとてもガタイの良い騎士だった。
「次の受験者前へ!」
「イーグル!頑張れよ!」
「う・・うん・・・。行こう、ポチ。」
(わかりました。)
そうして僕はポチと共に前に出る。その瞬間ざわつく。
「あれって・・・。シルバーウルフだよな?」
「あれってありなのか?」
「ほう・・・。君の武器はそのシルバーウルフか・・・。」
「武器じゃないです。僕の友達です!」
「ああ、気分を悪くしたのなら悪かった。ただ、シルバーウルフを使う魔物使いが珍しくてな・・・。」
「そうなんですか?」
「ああ、・・・今回はどうやら当たりのようだな。」
そのガタイの良い騎士が何かを呟く。
「えっ?」
「いや、なんでもない。それより君、名前は?」
「イーグルです。宿屋のイーグル。」
「そうか・・・。では、イーグル。試験を始めるぞ!」
そう言ってガタイの良い騎士は剣を構える。それを合図に審判の騎士がフラグを上げる。
「ポチ・・・。無理しないでよ・・・。」
(わかっています。いつも通りで行きましょう。)
「うん!」
そう言って僕は魔法の準備をする。
「では・・・。試合開始!」
そうして、フラグが下ろされると同時にポチがガタイの良い騎士に突っ込む。それは難なく避けられてしまう。そして、騎士は僕に向かってくる。それを察してポチがその前に躍り出る。
(行かせません!)
そう言ってポチが吠え、突っ込む。その間に僕は魔法の延唱を終える。その時、射線上にポチと騎士がいた。
「ポチ!下がって!!」
僕はポチに下がるように命令する。
(はい!)
ポチは一回体当たりをした後に後方に下がる。そうして、僕は騎士に杖を向ける。
「アイス・ニードル!!」
次の瞬間、氷の針が騎士に殺到する。
「なるほど・・・。連携は上手い・・・。だが!」
そう言って騎士は氷の針を木剣で切り払う。僕は決まったと思った攻撃が効かなかったことに戸惑いながらもまた魔法の延唱に入る。しかし、騎士は切り払った勢いのまま、ポチに向かって木剣を振るった。ポチは何とか避けるが、騎士が続けざまに蹴りを入れる。避けた時に体勢を崩したポチは避けることが出来ずに蹴り飛ばされてしまう。
(きゃん!)
「ポチ!」
僕は、ポチが蹴り飛ばされた様子を見て魔法の延唱を中断してしまった。それが大きな隙を作ってしまう。
「余所見をするな!まだ、戦いは終わっていない!!」
その瞬間、騎士は僕に肉薄する。僕は咄嗟に杖を盾にするが、その衝撃はすさまじく僕は後方に吹き飛ばされる。僕は何とか体勢を立て直したがその瞬間僕の鼻先に木剣が突きつけられる。
「勝者、グスタフ騎士団長!」
そして僕とポチは敗北した。僕が唖然としているとグスタフ騎士団長が手を差し出す。
「良い連携だった。正直少し肝を冷やしたぞ。」
そう言って、グスタフ騎士団長が僕に握手をする。
「しかし、少し素直過ぎる。もう少し相手の動きをよく見るんだな・・・。」
「はい・・・。」
僕は、悔しくて首を垂れる。そんな僕にポチが近づいてくる。
(すみません。イーグル。)
「ううん・・・。ゴメンね。僕がもう少しうまく指示を出していれば・・・。」
そう言って僕はポチの頭を撫でる。そこに気まずそうにアルスが近づいてきた。
「残念だったな。」
「あはは・・・。ほら、言った通りでしょ。僕じゃ、騎士にはなれないよ・・・。」
「でもすごかったぞ。ポチとの連携はとても上手く出来ていた!」
そう言ってアルスは励ましてくれる。でも僕は素直に喜べなかった。
「でも、負けちゃった・・・。グスタフ騎士団長に言われちゃったよ・・・。もう少し相手の動きを見ろって・・・。」
そう言って僕は泣きそうになりながらもなんとか笑うことが出来たと思う。その後にも試験は行われた。僕の後で勝った子は居なかった。
そしてすべての受験者の試験が終わり、合格発表が行われた。
「今回は試験合格者を発表する!」
そう言って試験官のグスタフ騎士団長が合格者を読み上げていった。
「鍛冶屋の息子、ハリス!」
「はい!」
力自慢のハルスが返事をする。ハルスは僕たちが来る前には、試験を終えたようだ。
「酒場の息子、アルス!」
「はい!」
アルスも合格したようだ。これで幼馴染とは離れ離れになるがしょうがない。僕は素直に親友の合格を喜んだ。
「宿屋の息子、イーグルとその使い魔ポチ!」
「えっ・・・。」
僕は耳を疑った。
「以上3名。君たちはこれからカーディナル騎士養成学校に入学することを許可する!君たちの今後の活躍に期待する。」
僕は唖然とした。アルスはそんな僕の背中を叩く。
「やったな!イーグル!合格だぞ!」
「う・・うん・・・。でも、なんで?僕、模擬戦で負けたのに・・・。」
僕は頭の中が混乱していた。そんな僕に声を掛けたのはグスタフ騎士団長だった。
「模擬戦の勝敗は関係ない。」
「え?」
「確かに、君はまだまだ未熟だ。しかし、これから成長する可能性がある。だから、俺が推薦した。」
「あの・・・。」
「それに、君は扱いが難しいと言われているシルバーウルフをしっかりと使役している。そんな才能をこの村で埋もれさせるのは惜しい。だから、騎士学校でその才能を伸ばしたいと思わないか?」
「は・・はい!!精一杯頑張ります!そして今度は負けません!!」
そう僕はグスタフ騎士団長にいうと、大声で笑われてしまった。
「精進しろよ、少年!」
そう言ってグスタフ騎士団長は僕の頭を乱暴に撫でながら去っていく。
「やったな!!イーグル!俺達騎士になれるぞ!!」
「う・・・うん・・・。」
しかし、僕はそのとき少し考えていた。
その夜。
「イーグル!騎士学校への試験合格おめでとう!」
そう言ってお父さんとお母さんが豪華な料理を用意してくれた。
「ありがとう、父さん、母さん。」
そう言いながらも僕は素直に喜べなかった。騎士学校に行けることはうれしい。3年前も兄のメルスもその魔法の才を認められて騎士学校に行っている。帰ってくるのは夏のお休みと冬のお休みの年2回。滞在日も1週間程度だった。僕は兄のように魔法の才能がないからこの店は僕が継ぐものだと思っていた。しかし、僕も騎士学校に行くことになる。そうなると・・・。
「どうしたんだ?イーグル浮かない顔をしているが・・・。」
お父さんが僕の様子に違和感を覚えて聞いてくる。なので、僕は素直に自分の考えを言うことにした。
「うん・・・。あの、僕まで騎士学校に行っちゃっていいのかなって・・・。兄さんも騎士学校に行っちゃったし僕も行ったらこの店を継ぐ人がいなくなっちゃうじゃないかなって・・・。」
そういうとお父さんは一瞬、きょとんとした表情を見せたが次の瞬間笑いながら僕の頭を撫でてくれた。
「そんな事を心配していたのか。確かにお前も騎士学校に行けば将来はこの国の騎士になるだろう。でもな、俺はメルスにもお前にもこの店を継げと強要するつもりはない。お前たちは好きなように生きろ。」
「父さん・・・。」
「行って来い!イーグル。お前はお前の道を行け。そして、疲れたらいつでも帰って来い。お前がどんな道を歩もうともここがお前の家ということには変わりないのだから。」
「ありがとう・・。父さん。」
「うん。ありがとう・・・。」
そうして、その日の夕食を終えた。
翌日からは本当に忙しい毎日だった。必要な教材や日用品を買ったり、馬車の手配をしたりと準備に時間がかかった。僕自身もどの本を持っていこうか迷ったりしていた。そんな風にして、2週間ついに出発の時・・・。村人総出で見送られることになった。
「お兄ちゃん、行ってらっしゃい・・・。」
「ああ、サラ。行ってくるよ。」
「アルス、向こうでも健康に気を付けるんだぞ。」
「わかってるって、母さん。」
「ハリス、これはお前のために特別に作った剣だ。受け取れ。」
「ありがとう。親父。大切に使うよ。」
「イーグル・・・。」
「お母さん・・・。」
「辛くなったらいつでも帰ってきなさいよ。逃げることは恥ずかしいことじゃないのだから・・・。」
「うん・・・。」
そうして、僕たちは馬車に乗り込む。道中は冒険者の皆さんが送ってくれることになっている。
僕たちを代表して、アルスが言った。
「じゃあ、俺たちは騎士学校に行ってきます。そして、この村に帰る頃には立派な騎士となって戻ってきます!」
新暦219年春。僕たちはミルト村から巣立ったのだった。
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