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16話 反乱

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僕はマリアさんと共に玉座に向かった。
「マリア!?貴方、どうして!?」
ミーシャ女王はマリアさんを見ると驚いていた。
「こちらに居る、ショウマ様のお陰で私に呪いが解けたのです。それよりもお姉さまに聞いて欲しいことがあるのですが・・・。」
「なんでしょう?」
「実は呪いを受けた時のことなのですがその時に、グラルドお兄様にネックレスをもらったのです。そのネックレスを首にかけてしばらくすると私の身体は衰弱していきました。」
「なぜ、そのことを私に伝えなかったのですか?」
「伝えようとしたのですがグラルドお兄様の指示ですぐに城の魔導師にあの小屋に隔離されてしまいました。その後、お姉様は私の様子を見に来ることもなかったのでお伝え出来ずに・・・。」
「・・・ごめんなさい。アルスのことや貴方のことで手一杯になっていたの・・・。それにグラルドから貴方は起き上がれる身体ではないと伝えられていて面会は控えるようにと言われてしまって・・・。」
「・・・それって何か変ではないですか?まるでミーシャ女王様をマリア様に近付けないようにしていたような・・・。」
「ふ~ん・・・。まさか、あの呪いが解かれるなんてね・・・。」
その時僕らの後ろから声がした。
「グラルド兄様・・・。」
「やあ、マリア。元気になって兄として嬉しく思うよ。」
そう言ってグラルド王子はマリアさんに触れようとする。それを払ったのは僕の隣にいたシルビアだった。
「シルビア?」
「・・・ショウマ。こやつをこの娘に近づけてはいけない。この男、なにか邪悪な気配を感じる。」
「へぇ・・・。俺のこの力に気が付くとは驚いたな・・・。」
グラルド王子はニヤついた顔でシルビアを見る。
「・・・グラルド。貴方、マリアに何をしようとしたの?」
「マリアには少し眠ってもらおうと思っただけですよ、姉上。だって、これからのことを邪魔されるのは嫌ですから。」
そう言った瞬間、玉座に兵士が詰めかける。その手には槍が握られておりその矛先はミーシャ女王に向いていた。
「これは一体!?」
「これからは俺がこの国を導いていきますよ、姉上。」
「・・・どういうつもりですか!?こんな、女王に対して剣を向けるなど叛逆以外のナニモノでも・・・。」
「いえ、姉上。これは革命です。これからこの国は大きく変わるのです。帝国と手を組みこの世界の覇者になるために!」
「・・・グラルド!?」
「姉上は甘すぎるのです。話し合いで全てを解決できるわけではないのです。強いものが正義。力が必要なのです!」
「戦が起これば傷つくのは民です。私は無駄な血を流したくないのです。」
「だから甘いというのですよ、姉上。」
グラルド王子はミーシャ女王を睨み付ける。
「俺たち獣人は差別を受けてきました。魔法を放出できないというだけで他の国・・・特にエルフどもには野蛮人と蔑まれてきた。」
そして、グラルド王子は芝居がかった仕草で両手を広げる
「だから、知らしめるのです!我々が優秀種であることを!」
「・・・愚かな。貴方の力を証明するために民を利用するのですか!?」
「民など我々の道具にすぎません。道具をどのように使おうが勝手です。・・・お前達、こいつらを拘束しろ!」
「貴方たち、正気に戻りなさい!?」
「無駄ですよ、姉上。この者達は私の意見に賛同した者達。同志です。」
槍を持った兵士たちが僕たちを取り囲む。逃げ場がない。
「このままじゃ・・・。」
その時だった。玉座の扉が音を立てて開かれた。
「ミーシャから離れろ!この馬鹿どもが!!!」
ダグラスさんが手直にいた兵士を殴り飛ばす。その殴り飛ばされた兵士は他の兵士を巻き込み倒れる。
「ショウマ、今の内に脱出するわよ。」
そう言うとシルビアは狼の姿に戻る。
「あれは、シルバーウルフ!?」
「魔物が人間に化けていただと!?」
兵士たちが動揺している中シルビアが僕に声を掛ける。
『私が道を作るからショウマはそこの娘たちを連れて逃げなさい。』
そう言ってシルビアは目の前の兵士に飛びかかる。
変身したシルビアに動揺している兵士たちは混乱に陥った。
「行きましょう!今は逃げるんです。」
「はい!姉さま!!」
「・・・わかったわ。」
そして、僕たちは玉座を出た。
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