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8話 銃撃でお仕事
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だが――やっぱり皇の顔を見ずに一日を終えるのは惜しい!
こんなに近くにいるのに……!
萌え供給機。推し代行。だけど――いや、だからこそ、1日の退屈さを我慢した褒美が欲しい!
私は、皇の目の前に立った。息で曇ったメガネを取って、マスクを取る。
皇は、はっと両手で口を覆い、後ずさった。
「だめです。まだ感染の危険が……」
「大丈夫です。顔みせてください。少しでいいので」
皇は、少し考えると、三歩下がった。
そして、口を覆っていた両手で、前髪を掻き上げた。
――ああ……。
やっぱり、この顔、好き――。
皇が、はっと目を見開いた。
「キルコさん!」
皇が、ばっと私に手を伸ばし、二の腕を掴む。後ろの路地に、強引に引き入れる。メガネとマスクが手から落ちる。
ダダダダダダダッ!!
凄まじい銃声と火花が、さっきまで私たちがいたところに飛び散る。
皇は、ぽそりと呟いた。
「すみません、キルコさん。巻き込むつもりはなかったのですが。
でも、必ず守りますから」
も……っ! 萌え……っ!!
と芽吹いた萌えの気持ちは、皇が鞄から取り出した粉の入った袋をみて、しゅんとしぼんだ。
なんだ、この怪しい薬は。
皇は袋の中に、ペットボトルの液体を中に入れた。もくもくと煙が立つ。それを、銃弾が転がっているところに投げた。
「伏せて!」
皇が私を抱きしめ、煙に背を向ける。
その途端、ドオン! という凄まじい音が炎とともに上がった。
皇の背中に、火の粉が降りかかる。
あたりは、煙で充満していた。店から、悲鳴と、「消防車を呼べ!」という声が聞こえてきた。
皇は、鞄からタオルを取り出し、私の顔に押し当てた。
「これで顔を覆ってください。少し走ります。僕についてきてください。絶対、守りますから」
皇が私の手首を掴み、走り出した。煙に隠れながら道路から出る。
キャ~~~~! いい~~~っ! 「刑事とお嬢」みたい~~~~っ!
廃ビルの階段を駆け登る。屋上にたどり着くと、長銃を持った汚いオヤジが見えた。
皇の手が離れる。
「ここで待っていてください。絶対にこちらに来ないでください」
そう言い残し、皇はさっと屋上に躍り出た。
「な……っ! なんでここが分かった!?」
「銃声、銃弾が堕ちてきた角度、銃弾の種類――それらの情報を数字に落とし込めば、狙撃手の位置を計算することは簡単です」
皇が、男に近づいていく。男は銃を構え、ダン! と一発、撃った。
だが、弾丸は皇が前に出した鞄にめり込んだ。
「な、なんで……」
「超高分子量ポリエチレン繊維の特注なので」
男は後ずさりながら、「クソッ! クソッ!」と言いながら何度も撃ってきたが、すべて鞄にはじかれてしまった。
皇が、鞄から透明の液体の入った黒い銃を取り出し、構えた。
なななな、なんだあれっ! リアル「刑事とお嬢」!
かっこいい~~~~!
男は「ヒィッ!」と鳴き、しりもちをついた。
「本物ではありません。濃硫酸が入った水鉄砲です。濃硫酸は、皮膚等につけると溶ける劇薬です。このように」
皇は持っていたハンカチを水鉄砲で撃った。たちまち、布にじんわりと穴があいた。
男の顔が、恐怖の色に染まりあがる。
「そ、それを、どうする気だ……!」
「撃ちます。ただし、この後僕たちを追ってこないと約束するなら、撃ちません」
男はすぐに、「わ、分かったよ!」と答えた。
皇はほっと安堵の息を吐き、男に背を向けた。
終わった。
こんなに近くにいるのに……!
萌え供給機。推し代行。だけど――いや、だからこそ、1日の退屈さを我慢した褒美が欲しい!
私は、皇の目の前に立った。息で曇ったメガネを取って、マスクを取る。
皇は、はっと両手で口を覆い、後ずさった。
「だめです。まだ感染の危険が……」
「大丈夫です。顔みせてください。少しでいいので」
皇は、少し考えると、三歩下がった。
そして、口を覆っていた両手で、前髪を掻き上げた。
――ああ……。
やっぱり、この顔、好き――。
皇が、はっと目を見開いた。
「キルコさん!」
皇が、ばっと私に手を伸ばし、二の腕を掴む。後ろの路地に、強引に引き入れる。メガネとマスクが手から落ちる。
ダダダダダダダッ!!
凄まじい銃声と火花が、さっきまで私たちがいたところに飛び散る。
皇は、ぽそりと呟いた。
「すみません、キルコさん。巻き込むつもりはなかったのですが。
でも、必ず守りますから」
も……っ! 萌え……っ!!
と芽吹いた萌えの気持ちは、皇が鞄から取り出した粉の入った袋をみて、しゅんとしぼんだ。
なんだ、この怪しい薬は。
皇は袋の中に、ペットボトルの液体を中に入れた。もくもくと煙が立つ。それを、銃弾が転がっているところに投げた。
「伏せて!」
皇が私を抱きしめ、煙に背を向ける。
その途端、ドオン! という凄まじい音が炎とともに上がった。
皇の背中に、火の粉が降りかかる。
あたりは、煙で充満していた。店から、悲鳴と、「消防車を呼べ!」という声が聞こえてきた。
皇は、鞄からタオルを取り出し、私の顔に押し当てた。
「これで顔を覆ってください。少し走ります。僕についてきてください。絶対、守りますから」
皇が私の手首を掴み、走り出した。煙に隠れながら道路から出る。
キャ~~~~! いい~~~っ! 「刑事とお嬢」みたい~~~~っ!
廃ビルの階段を駆け登る。屋上にたどり着くと、長銃を持った汚いオヤジが見えた。
皇の手が離れる。
「ここで待っていてください。絶対にこちらに来ないでください」
そう言い残し、皇はさっと屋上に躍り出た。
「な……っ! なんでここが分かった!?」
「銃声、銃弾が堕ちてきた角度、銃弾の種類――それらの情報を数字に落とし込めば、狙撃手の位置を計算することは簡単です」
皇が、男に近づいていく。男は銃を構え、ダン! と一発、撃った。
だが、弾丸は皇が前に出した鞄にめり込んだ。
「な、なんで……」
「超高分子量ポリエチレン繊維の特注なので」
男は後ずさりながら、「クソッ! クソッ!」と言いながら何度も撃ってきたが、すべて鞄にはじかれてしまった。
皇が、鞄から透明の液体の入った黒い銃を取り出し、構えた。
なななな、なんだあれっ! リアル「刑事とお嬢」!
かっこいい~~~~!
男は「ヒィッ!」と鳴き、しりもちをついた。
「本物ではありません。濃硫酸が入った水鉄砲です。濃硫酸は、皮膚等につけると溶ける劇薬です。このように」
皇は持っていたハンカチを水鉄砲で撃った。たちまち、布にじんわりと穴があいた。
男の顔が、恐怖の色に染まりあがる。
「そ、それを、どうする気だ……!」
「撃ちます。ただし、この後僕たちを追ってこないと約束するなら、撃ちません」
男はすぐに、「わ、分かったよ!」と答えた。
皇はほっと安堵の息を吐き、男に背を向けた。
終わった。
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