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9話 お呼ばれでお仕事
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中は、畳六つ分の部屋だった。ジャパニーズ・掛け軸がかかっていた。その下に、一輪の小さな白い花が渋いツボに入っている。皇の母が、「山芍薬よ」と教えてくれた。部屋の外では、家政婦たちが何やら支度をしてくれているようだった。
私は部屋の右端に座るように促された。皇が私の前にお菓子を出した。緑の葉で巻かれた白いお餅――ジャパニーズ・柏餅だ。
皇の母が、作法を耳打ちしてくれたので、言われた通りにした。懐紙に乗った柏餅の葉を開き、小さな竹で半分に割り、パクリと食べる。
ジャパニーズ・あんこ、ジャパニーズ・もち……!
なんで上品な甘み……! ふわりと香る、さわやかな葉の風味……!
思わず、恍惚とした声がでかかった。しかし厳かな雰囲気を崩すわけにはいかない。私は餅とともに声を飲み込んだ。
懐紙を畳んで懐に入れると、皇が奥の部屋から茶道具を持ってきた。小さな炉の前に座り、それらを並べる。帯から下げていた赤い布を畳み、小さな茶道具を拭く。これぞジャパニーズ! と思うような竹の柄杓でお椀に湯を入れ、茶道の象徴、茶筅をひたす。
お湯が捨てられ、いよいよ、抹茶の粉が茶碗に入った。お湯を注ぎ、皇が、茶筅を回した。
華麗……!
というか、茶をたてる皇、美しすぎないか……!?
筋ばった大きな手が激しく動いているだけでも色気があるのに、伏目に見える顔の角度も涼やかな座り姿も、何もかもが美しい。いつもよりいっそう、皇が端正に見える。
やばい。こんな美しい男がたてた茶を体に流し込めるなんて、幸せすぎる――!
皇が、できた茶を私の前に置いた。茶碗を覗くと、やわらかな緑色の泡がこんもりと立っていて、ひかえめな可愛さを感じた。
私は皇の母が耳打ちしてくれる通りに動いた。
一礼し、茶碗を手に取り、「失礼します」と皇に一礼する。
そして、憧れていた茶碗まわし! 90度に2回回す。ほのかな感動とともに、器に唇をつけた。
口に入れると、まろやかな泡と思いの外さわやかな抹茶の風味がほわんとした。
「結構なお手前で」
言えた! 憧れていた茶道ワード!
皇は、ふっとやさしく微笑んだ。
胸に、ドキュンと何かが突き刺さった。ドクドクと体中が振動する。
推しの微笑は攻撃力が高すぎる。
一連の流れが終わった。皇に誘われて、茶をたててみた。思いの外簡単に茶筅を回せて楽しかった。
12時、昼食会場へ向かった。皇と向かい合って座ると、家政婦たちがお膳を二つ持ってきて、私たちの前にそれぞれ置いた。
こ、これは……ジャパニーズ・懐石料理!
「懐石料理も茶道の一部なんです。今日は茶道体験がメインだったので、母たちが張り切ってつくりました」
料理はすべてで9つあった。刺身や煮物、焼き魚や一口大のお洒落な料理が少しずつ並んでいる。だか、一つ一つ上質な味で美味しかった。
「お口に合ってよかったです。母たちも喜びます」
「そういえば、お母様はどちらへ?」
「厨房かと。別の場所で食べて、13時にまた合流するとのことです。
というか、すみません。母が隣にいて、嫌じゃないですか?」
「いえ。大変助かります」
「そうですか……」
それにしても、一緒に食べるのははじめてじゃないのに――向かい合わせがはじめてだからだろうか、なんだか新鮮な感じがする。美味しい料理を堪能したいのに、扉が開放されていて中庭も観れるのに、目の前の皇から一瞬たりとも目を離したくない。
もぐもぐと口を動かしながら、見つめ合う。静かな沈黙が続いた。
私は部屋の右端に座るように促された。皇が私の前にお菓子を出した。緑の葉で巻かれた白いお餅――ジャパニーズ・柏餅だ。
皇の母が、作法を耳打ちしてくれたので、言われた通りにした。懐紙に乗った柏餅の葉を開き、小さな竹で半分に割り、パクリと食べる。
ジャパニーズ・あんこ、ジャパニーズ・もち……!
なんで上品な甘み……! ふわりと香る、さわやかな葉の風味……!
思わず、恍惚とした声がでかかった。しかし厳かな雰囲気を崩すわけにはいかない。私は餅とともに声を飲み込んだ。
懐紙を畳んで懐に入れると、皇が奥の部屋から茶道具を持ってきた。小さな炉の前に座り、それらを並べる。帯から下げていた赤い布を畳み、小さな茶道具を拭く。これぞジャパニーズ! と思うような竹の柄杓でお椀に湯を入れ、茶道の象徴、茶筅をひたす。
お湯が捨てられ、いよいよ、抹茶の粉が茶碗に入った。お湯を注ぎ、皇が、茶筅を回した。
華麗……!
というか、茶をたてる皇、美しすぎないか……!?
筋ばった大きな手が激しく動いているだけでも色気があるのに、伏目に見える顔の角度も涼やかな座り姿も、何もかもが美しい。いつもよりいっそう、皇が端正に見える。
やばい。こんな美しい男がたてた茶を体に流し込めるなんて、幸せすぎる――!
皇が、できた茶を私の前に置いた。茶碗を覗くと、やわらかな緑色の泡がこんもりと立っていて、ひかえめな可愛さを感じた。
私は皇の母が耳打ちしてくれる通りに動いた。
一礼し、茶碗を手に取り、「失礼します」と皇に一礼する。
そして、憧れていた茶碗まわし! 90度に2回回す。ほのかな感動とともに、器に唇をつけた。
口に入れると、まろやかな泡と思いの外さわやかな抹茶の風味がほわんとした。
「結構なお手前で」
言えた! 憧れていた茶道ワード!
皇は、ふっとやさしく微笑んだ。
胸に、ドキュンと何かが突き刺さった。ドクドクと体中が振動する。
推しの微笑は攻撃力が高すぎる。
一連の流れが終わった。皇に誘われて、茶をたててみた。思いの外簡単に茶筅を回せて楽しかった。
12時、昼食会場へ向かった。皇と向かい合って座ると、家政婦たちがお膳を二つ持ってきて、私たちの前にそれぞれ置いた。
こ、これは……ジャパニーズ・懐石料理!
「懐石料理も茶道の一部なんです。今日は茶道体験がメインだったので、母たちが張り切ってつくりました」
料理はすべてで9つあった。刺身や煮物、焼き魚や一口大のお洒落な料理が少しずつ並んでいる。だか、一つ一つ上質な味で美味しかった。
「お口に合ってよかったです。母たちも喜びます」
「そういえば、お母様はどちらへ?」
「厨房かと。別の場所で食べて、13時にまた合流するとのことです。
というか、すみません。母が隣にいて、嫌じゃないですか?」
「いえ。大変助かります」
「そうですか……」
それにしても、一緒に食べるのははじめてじゃないのに――向かい合わせがはじめてだからだろうか、なんだか新鮮な感じがする。美味しい料理を堪能したいのに、扉が開放されていて中庭も観れるのに、目の前の皇から一瞬たりとも目を離したくない。
もぐもぐと口を動かしながら、見つめ合う。静かな沈黙が続いた。
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