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しおりを挟む「ねえ、ティファニー。あなたにとってコンラッド様ってどんな関係なの?」
「ッ!?」
予想だにしていなかった問いかけに思わず紅茶を吹き出せば向かいにいた何の罪もない令嬢の顔に思いきりかかった。
悲鳴を上げ、泣き始めた令嬢を無視してマリエットに顔を向けるとニッコリと満面の笑みを浮かべている。
———え、なに? もうバレましたの? ありえませんわ。彼のことは極力避けてきたし、まだ会う日の段取りもしていないんですもの。証拠は何もありませんわ。もしキスがバレたのなら今頃ここで話すのではなく部屋に乗り込んできて狂ったように怒りをぶつけてくるはず———
「最近、コンラッド様があなたの話をよくするの。私といるのにあなたの話ばかりするものだから二人は何か秘密の関係なんじゃないかって思ってしまって……」
「そ、そんなわけありませんわ! このわたくしがコンラッド・グレンフェルと何か関係を持つなんてそんなのあるわけないでしょう!」
「そうよね。何もないのよね?」
試されているのだとわかった時には既に遅く、全員の注目がティファニーに集まっていた。
キスをした関係ではあるが、それはあくまでも相手からのものであって自分からした事は一度もない。人には言えない秘密を抱えているといえどそれをこの場で正直に話す勇気はなかった。
「コンラッド様に興味ないのよね?」
皆の前で宣言しろと言っているのだろう。目がそう語っている。
———興味なんてありませんわ! でも一切関わらないと言えば嘘になってしまいますの! だってまだ会う約束がまだ果たされていないんですもの!
マリエットを怒らせるのは人生で最も避けなければならない事だ。それこそ王子を怒らせるよりもずっと気をつけなければならない事のかもしれない。
コンラッドが怒った姿を見たことがなく、コンラッドにどれだけの権力があるのか知らない以上は王族である相手を怒らせるのが最も危険なのかもしれないが、ティファニーの人生の手綱を握っているのは間違いなくマリエット。父親の機嫌さえマリエットの一言で決まるのだから。
「ええ、全く興味ありませんわ。大体、わたくしは伯爵令嬢ですのよ? 王子が相手だなんて考えただけで吐き気がしますわ。わたくし、結婚相手はお父様が選んでくださいますの。それに従うつもりですし、コンラッド王子とはほとんど面識もありませんわ」
とりあえず言いきるしかなかった。嘘は言っていない。嘘ではない。興味はないし、あの王子と自分が結婚というのを想像しただけで悪寒がする。いくら顔が良かろうと寝ている女に勝手にキスをするような男はロクな奴じゃないと思っている。
「良かった。私ったら何を不安になってたのかしら。ティファニーがコンラッド様と親しくなるはずなんてないのに、バカね」
「ええ、本当にバカですわ」
「婚約前に不安になるのは当然ですわ。だってもうすぐ王子のお嫁さんになるんですから!」
「キャー! すごい事ですわ! マリエット様があのグレンフェル家に嫁ぐだなんて!」
盛り上がる取巻き達に『やめてよ』と言いながらもまんざらではない笑みを浮かべるマリエットを少し前なら馬鹿馬鹿しいと思っていたのに、今は同情が勝って呆れた顔も出来ない。
『アイツ嫌いなんだ』ハッキリそう言ったコンラッドの言葉が頭から離れない。
本気で婚約すると思っているマリエットと婚約する気など微塵もないコンラッドの婚約がどうなってしまうのか、ただの幼馴染であればそんな心配はしないが、この婚約にティファニーの全てがかかっている以上は不安と心配で頭を抱えたくなった。
「わたくしに取られると心配してますの?」
「ええ。だってあなたって魅力的だから」
「まあ当然ですわね」
「コンラッド様のタイプではないでしょうけど、男性って好みじゃなくても魅力的な異性に寄られるとまんざらでもないでしょう?」
自分より下の人間を素直に褒めるタイプではないマリエット。
少し小馬鹿にするぐらいなら評判は落とさないし、一緒にお茶をしている令嬢達は皆ティファニーを嫌っているため何の問題もない。皆でクスクス笑っている。
苛立ちは感じるが、ここで大声を出して喚き散らすのは悪役令嬢ではない。
「遊び人の女好きな方なら余計にまんざらでもないでしょうね」
苛立ちを見せずに余裕たっぷりな笑みで相手を挑発する。
「そんな馬鹿げた噂を信じているのね、ティファニー。コンラッド様は遊び人でも女好きでもないのよ。彼はフェミニストなだけ」
「物は言い様ですわね。他の女性と仲良くしているのを何度も見かけましてよ。それも毎回違う女性でしたけど、あなたはそれを容認なさるおつもりかしら?」
———嘘。ホントは知らない。だって興味ありませんでしたもの! コンラッド・グレンフェル? 誰それ?でしたのに。
「もし仮に、コンラッド様がいつも違う女性を連れ歩かれていたとしてもそれが何だと言うの? コンラッド様は女性に優しいし人気がある。迫ってくる女性に真摯に対応しているだけよ。あなたはそれを遊び人だと言うのね。それってとても失礼な事だわ」
「婚約者でもない者にあれこれ言われたくありませんものね」
「ッ!」
ピリッとした空気が走った気がした。
———選択を間違えた?
ティファニーに不安が過る。
いつも通りの軽口のはずが、その中でも触れてはいけないワードがいくつかあって、それはざわざわマリエットが教えてくれているものではないため自分で考えなければならない。
どこまでマリエットが許してくれるのか、どんな言葉が彼女の逆鱗に触れてしまうのか、全て探り探りで発言する。今までなかった失敗がここにきて初めて逆鱗に触れたかもしれない。
「ええ、そうね」
笑顔だったが、その笑顔がいつもの笑顔と違っている事に気付いたのはティファニーだけではなかった。マリエットをよく知る者達でさえその笑顔に凍り付いていた。
マズイ———
完全にマリエットを怒らせてしまったと危機感に表情が強張るもここで謝るのは悪役令嬢ではない。相手はヒロイン。自分は悪役令嬢。物語ではいつだって自分が偉いように振舞うのが悪役令嬢だと言い聞かせて鼻で笑ってみせた。
「あら、ショックを受けさせてしまったようですわね。ふふっ、婚約すると噂が立ってもう随分経つけれど未だに婚約発表がないんですもの。噂は所詮噂ということ……そう受け取っていますのよ?」
どうせ怒らせるのなら徹底的に。ここでご機嫌取りに走ればそれこそ自分が十年かけて演じてきた悪役令嬢を台無しにしてしまう。
恋愛も友情も何もかも捨てて挑んできたものを揺らがせるわけにはいかない意地があった。
「そう簡単にはいかないのよ。両家の準備もあるしね」
———簡単に、ね。そうでしょうね。
「婚約者一人いないあなたにはわからないわよ」
「そうよ! ヘザリントン家の中でも落ちこぼれのあなたに何がわかるっていうのよ!」
「姉二人には婚約者がいるというのにどうしてアルバート伯爵はあなたにだけ婚約者を見つけないのかしら?」
「あら、そんなのわかりきったことじゃない。怠け者を妻にしたい男性がいないからよ」
どっと笑いが起きる内容のくだらなさにティファニーは呆れたように見るだけで反論はしなかった。事実、自分が悪役令嬢の任から解放された後に婚約者が用意されるかどうかわからないのもあったからだ。
実際、周りが言うように自分に出来る事は何なのかと考えてもコレだ!と言えるものは見つからない。何をしていても中途半端な状態で眠ってしまう。それこそ自分を愛してくれた夫が何かを話している時にだってきっと眠ってしまう。最後まで楽しく会話が出来ない女を一体誰が欲しがるというのか。
「おやめなさい。ティファニーは病気だと言っているでしょう」
マリエットの言葉にティファニーは安堵した。庇ってもらえたからではなく、その声色がさっきよりも少し柔らかいものになっていたから。
ティファニーがバカにされて気分が良くなったのだろう。皆が悪役令嬢のように人をバカにした後はそれを止めるのがヒロインの役目。
たった一人しかいないヒロインになりきれる世界が簡単に身近で作られるのはマリエットにとってさぞ気分の良いものだろう。
「ティファニー、あなたにもきっとイイ人が見つかるわ。アルバート伯爵は人脈の広いお方だもの。まだ見つかっていないだけできっと見つかるから心配する事ないのよ」
———優しい優しい聖女様。涙が出そうですわ、反吐と一緒に。
思ってもいない事を心から思っているかのような笑みと声色に白々しさを感じるが、お茶会というのは取巻きしかいない普段と違ってヒロインにとって大きな見せ場となるイベント会場。
こんな時はどうすればいいか———
「わ、わたくしに婚約者がいないのはわたくしが断っているからですわ! まだやりたい事がたくさんありますのに家に縛り付けられる結婚なんてバカバカしいですもの!」
「強がりはおよしになって。みっともないだけですわよ」
「強がってなんかいませんわ! そ、それにわたくしぐらいの女にそこら辺の伯爵や侯爵のボンボンは不釣り合いだと思っていますの。やっぱり王子ぐらいでないと」
またどっと笑いが起きた。
悪役令嬢はいつも強気で返すだけでは務まらない。こういう大勢がいる場ではあえて強がっているフリをして負け犬の遠吠えをする事だって必要なのだ。そうすればこうして笑いが起き、マリエットも上機嫌になる。
「わ、わたくし今日は用事がありますのでこれで失礼しますわ!」
「あ、ティファニー」
「放っておきましょう。マリエット様が声をかけられては惨めになるだけですわ。だって婚約者もいないんですもの」
「用事もないでしょうけどね」
後ろから聞こえる盛大な笑い声もティファニーは背を向けたまま舌を出しながらもあえて逃げるかのような早歩きでその場を立ち去った。
悪役令嬢は悪くない。やりたいと思って率先した事はないが、やはり便利だとも思う。
何せああいう大勢がいる面倒な場で見せ場を作ってやればマリエットは上機嫌になるし、強がったフリをすればあの場からこうして退散出来るのだから。
低俗な人間に何を言われようと笑われようと気にならない。
この十年間でティファニーは強くなった。大声で笑われる事も嫌味を言われる事にも恥や悔しさで涙を滲ませることはなくなったし、それに対抗する術を身につけた。
怖いのはマリエットの機嫌を損ねる事だけだ。
「とりあえず何とか丸く収まったようで良かったですわ」
一時はどうなるかと冷や汗をかいていたが、結局は上手くいった。問題はないと安堵するティファニーがホッと息をついたのもつかの間———
「ティファニー」
「ヒッ———!」
「危ない!」
急にかけられた声が男の声であったもののマリエットが追いかけてきたのかと思ったティファニーは驚きに肩を跳ねさせた瞬間、脱力を感じて膝の力が抜け、前に倒れかけた。
とっさに伸びてきた手に受け止められた事で地面に激突せず済んだが、後ろから抱きしめられるような形に目を瞬かせる。
「コンラッド……王子、ですわよね?」
「俺以外に君を呼び捨てにする男がいるのか?」
「あなたにも呼び捨てにはされたくありませんけど」
「俺と君の仲だろ?」
———どういう仲ですの……。
キスをした側とされた側ではあるが親しい間柄のつもりはない。
コンラッドに婚約の意思がない事は知っていても周りはそれを知らないのだから世間の認識では〝コンラッドはマリエットの婚約者〟となっている。その相手と一緒にいるのはマズイ。それもこういう形で見られては余計に。
「離してくださる?」
「助けてもらって感謝の言葉もなしか? ヘザリントン家は随分イイ教育を受けさせたようだな」
「勝手に助けておいて感謝を求めるなんてグレンフェル家は随分イイ教育を受けさせたようですわね」
離すどころかガッチリ抱きしめる形で力を入れているコンラッドが一体何を考えているのかわからず手を離させようとするも離れない。それどころかニヤつきながら嫌味を言う相手に嫌味を返すとおかしそうに笑い声が上がった。
「ちょっと! 静かにしてくださる!? あなたの低俗なファンがまだ近くにいますの!」
「誰もいない場所へ行きたいという誘いか?」
「そんなわけないでしょ! わたくしはあなたと交流したくありませんの! 勘違いも甚だしいですわよ!」
「照れるな」
「照れてませんわよ!」
お茶会をしていた方から近付いてくる声に気付いて移動し始めたのはいいが、コンラッドはティファニーを抱えて移動していく。
「ちょっと! どうしてわたくしまで一緒に行かなきゃいけませんの!」
「君が気付かれたくないんだろ?」
「あなたがどこかへ行ってくださればそれでオーケーですのに!」
「女を置いて逃げるのは俺のフェミニズムに合わないからな」
———何がフェミニズムよ。ただの女好きのくせに。
一緒にいられるのをマリエット本人に見つからずとも他の誰かに見られただけで即報告されるのは間違いない。だから出来るだけ距離を置きたいのに何故かコンラッドは執着しているようにティファニーに接近する。それが迷惑だとどれだけ伝えても効果はなかった。
「人の話は聞かなくていいというのは帝王学の教えですの?」
「残念ながら俺は帝王学は教えられていない。兄上だけだ」
「優秀な兄がいると大変ですわね」
「妖艶な姉がいると大変だな」
何故こうもいちいち癪に障る言い方をするのか。そして何故この男がモテるのかやはり何度会ってもティファニーには理解出来ない。
姉はティファニーにとってコンプレックスでしかなく、自分の顔や体型について言われるよりずっと嫌だった。しかし、兄弟について言い出したのは自分である以上は酷いと言えるはずもなく唇を噛んで堪えた。
「いい加減離して!」
肩を押して抵抗を見せるとゆっくり地面に下ろされ肩を支えられる。
「結構ですわ」
倒れそうになったのを心配してくれているとわかっても二人でいる状況から離れたく手を振り払って一歩二歩と距離を取る。
「つれないな」
「わたくしがあなたに優しくする義理はありませんもの」
「王子なのにか?」
「王子であろうとわたくしには関係ないことですわ」
「君ならそう言うと思った」
マリエットには結婚するなら王子ぐらいでなければと言ったが、実際のところ王子が婚約者と想像するとあまりに荷が重い。妻になる者の苦労を考えると自分には絶対不可能だと確信があり、父親も絶対反対する。娘が失態を犯すのは目に見えているのだ。
それはティファニー本人も同じ。だから自分にとって恋とか愛とかはどうでもいいものとして捉え、失敗しない事だけを考え生きてきた。
「俺が王子でなければ普通に話をしてくれたか?」
「マリエットの婚約者でなければ……いえ、マリエットの……んー……マリエットと無関係の人間であれば話ぐらいはしたかもしれませんわね」
「俺が王子でもか?」
「あなたが王子かどうかなんてわたくしにはどうでもいいことだと何度言えばわかっていただけますの? わたくしはあなたに興味ありませんの。ですからあなたが王子だろうと国王だろうと皇帝だろうとどうだっていいのですわ」
誰も見ていないかと辺りを何度も気にしながら早口で答えるティファニーに向けるコンラッドの目は優しいもので、手を伸ばして一歩近づいた。
「なんですの!? あ……」
反射的に顔を向けてパンッと手を叩くとさすがにマズイと思ったが触れられたくなかった。
「ははっ、君はまるで子猫だな」
怒るどころか楽しげに笑う相手が何を考えているのか本当にわからなかった。ティファニーにとってコンラッド・グレンフェルは同級生ではあるが雲の上の人間だった。伯爵の娘が王子に認識される機会などないと思っていたのに、今は認識されるだけではなく好意を寄せられているように感じていた。
「何故わたくしに構うんですの?」
一番疑問だったのはそれだ。
寝顔が好みだったと言われたが、今は眠っていないし、声をかけられた時も眠ってはいなかった。それなのにコンラッドは寄ってくる。
「君は面白いからな。興味がある」
「迷惑ですわ」
「話をするのもか?」
「ええ」
「それは酷いな。世間話をしようと声をかけただけだ」
「寝ているわたくしに勝手にキスをした男を嫌いにならないとでも? 無礼な男は嫌いですの」
笑わせるような事はしていない。それどころか言動全てが失礼な態度を取っていたのにそれを気にも留めず『面白い』と言ってくれる相手に思わず眉を寄せるもコンラッドの表情は変わらない。
王子だ王子だと言う割には王子らしい振舞いはなく、ストーカーのようにしつこい。勝手にキスをしたのも一回きりではない。王子に対して「無礼者」と言う無礼はあるものの、王子だからといって人の人生を終末にしていいはずがないと心を許せないでいた。
「なら、今までの無礼を詫びよう」
「謝罪は結構ですのでわたくしに構わないでくださいませ」
「それはムリだ」
———は?
即答での拒否にティファニーの表情が引きつる。
「俺は君に興味がある。寝顔も好みだしな。唇も好みの柔らかさで、君の匂いが好きだ」
———あああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああもぉぉぉおおぉぉぉおおおおおお!」
頭を搔き乱し叫び出したくなった。
好意があるのは感じていたが、こうもハッキリ『好みだ』『好きだ』と言われるとさすがにちょっと引いていた。
「申し訳ありませんけど……気持ち悪いので拒否しますわ」
「気持ち悪い? 俺がか?」
「他に誰と話していると?」
「おかしいな。かっこいいと言われる事は毎日でも気持ち悪いと言われた事は一度もない。君の勘違いじゃないのか?」
「まさか! とっっっても気持ち悪いですわ」
本日一番の笑顔を見せると首を傾げていたのを戻してまた手を伸ばしてくるため一歩後ろへ下がって前に手を出した。
「レディが拒んでいるのにそれを受け入れない男にフェミニズムがあると?」
「それを言われると辛いな。フェミニストも人間だ。好きなレディにはそれを破ってでも貫きたい想いがあることを理解してほしい」
「理解出来ませんんんぃぃぃいいいいいい! もう! なんなんですの!」
ストップをかけるように前に出していた手を握られ手の甲に口付けられると怒りから奇声を上げるティファニーに王子は肩を揺らして笑う。
自分を取り繕う事が上手い令嬢達と違ってティファニーはそういう事が下手で、コンラッドが王子であろうと嘘でも嬉しい演技は見せられない。
「嫌われないよう次は眠っている時に会うとしよう」
「キスしたら許しませんわよ……」
「眠り姫を起こすのは王子の役目だ。気にするな」
「気にしますわよ! まったく……どんな教育をしたらこんな———」
「おっと……」
文句を言っている最中に目を閉じたティファニーが倒れるまで時間はかからなかった。手を伸ばして抱きとめたコンラッドにとってこれはラッキーな現象。
もし目が覚めた時にティファニーが怒りだしても状況を説明すれば納得してもらえるものだから。
やはり寝顔が好みだと思いながらもキスをしないのはキスをすれば目覚めてしまうことを確信しているからで、自分のキスでティファニーが目覚めるのは面白いと思うも今は合法的にこうしていられるのだからと楽しむ事にした。
ゆっくりとそのまま地面に腰かけ膝の上でティファニーを抱え眠らせる。
「おやすみ、眠り姫」
無防備に眠るティファニーの額に口付けをした。
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