悪役令嬢な眠り姫は王子のキスで目を覚ます

永江寧々

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神の祝福

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 ティファニーはこの日、マレニス王国の地に立っていた。
 車椅子を卒業して、自分の足で歩くようになって久しぶりの遠出は気持ちがいい。緑豊かというわけではなくとも発達した近未来のような国は何度見ても面白く、ティファニーはこの国が好きだった。

「本当に行きますの?」
「行くぐらいタダだよ?」
「お金の心配をしているわけではありませんわ。ただ…」
「結婚する者達は下見ぐらい行くよ。嫌な教会は嫌だろう?」
「あなたのお気に入りが嫌な場所がありませんもの。心配はしていませんわ」

 クリストファーの説得により、誘拐という形で足を運んだマレニスで結婚式を挙げる教会を下見する事になっていたがティファニーはあまり乗り気ではなかった。
 クリストファーのお気に入りということは王族御用達であり、伝統的な場所。王子と結婚することが決まっていようとティファニーはまだ最後の覚悟が出来ていなかった。

「いいかい、ティフィー。僕は君のために三年待つよね?」
「それは言わない約束ですわよ」
「いつそんな約束した?」

 していない。
 クリストファー・ブレアという男は自分を偽って生きてきただけあってずる賢い。自分に不利になる発言や約束は絶対にしない。人の目を見れば相手がどういう人間か大体わかると言い、その確率は90%を超えていると。故に、ティファニーはクリストファーと言い合いをすると必ず負ける。

「君は下見もしてくれないの?」
「……するから来たんですわ」
「そうだよね」

 誘拐まがいの来方ではあったが婚約者の想いをわかっているためティファニーは少しの抵抗で諦めた。父親も母親もアビゲイルでさえクリストファーの強引なやり方を止めず、それどころか笑顔で手を振っていたのだから味方は一人もいないのだと観念するしかなかった。
 手を繋いで歩く教会までの道。チラホラ聞こえる祝福の声にティファニーは本当にこの国の人間になるのだと実感する。

「この国の人達は温かいですわね」
「君の国もだろう?」
「わたくしは国民ですもの。わたくしが結婚したところで拍手や祝福の声は聞こえてきませんわ」

 国民が盛大に祝うのは国を挙げて発表する王族のときだけ。伯爵令嬢が結婚したところで国を挙げての祝福はない。不思議な感覚だった。

「あなたを見て目をハートにしている女性達はあなたの本性を知ったら絶望するのでは?」
「まさか。きっと魅力が増したって言ってくれるよ」
「まあ」

 開き直ったような発言に一瞬驚きを見せるもすぐに吹き出して笑うティファニーはクリストファーの切り替えの速さに感服していた。
 望んで悪役令嬢になったつもりだったのに、それを誇ればいいのに今となってはそれがティファニーの足枷となってもう一歩進む邪魔をしている。うじうじするのは自分らしくない。いつだって悪者になる覚悟と媚びない信念で全て振り切ってきたはずなのに、大事な場面でそれを発揮できない愚か者だと最近になって悪役令嬢をやめたら何も残っていない人間なのだと自覚することが増えてきた。
 それでもクリストファーはいつも『君が君らしくいることが一番大切なんだよ』と言ってくれる。意地悪をする人間でもかと聞けば『やりたいなら好きだけやればいい』と言う。だがそこには必ず〝相手がいれば〟という問題がついてくる。
 マリエットもクラリッサもいない今、ティファニーが悪役令嬢をやる理由はない。それなのに根っから染みついたものは二人のようにあっという間には消えてくれなくて。

「ティファニー・ヘザリントンは意地悪女」
「ティファニー・ヘザリントンは悪役令嬢」
「ティファニー・ヘザリントンは嘘つき女」

 突如聞こえてきた歌に二人の足が止まる。声の方に顔を向けると三人の子供がまるで童謡でも歌っているかのように楽しそうだった。見た目からして何もわかっていない子供というわけではなさそうで、かといってティファニーが行ってきた過去の言動を全てを理解して言っているとも思えない。彼らの親がそう言っているのを何かの歌に乗せて歌っているのだろうとティファニーは視線を前に戻した。
 祝福がチラホラだった時からなんとなくわかってはいた。クリストファーが決めたこの結婚はこの国にとって何もめでたい事ではないのだと。
 きっと、どこかの王女との結婚を望んでいただろう。品行方正で眉目秀麗な王女様。クリストファーという男に相応しい相手を、と。
 心のどこかでティファニーもそんな事を考えていた。自分ではなく王女が相応しいと。それでもクリストファーがそれを否定したから、この人についていこうと思った。それは今も変わらない。子供達の歌を止めるのではなく同調するようにクスクスと笑い声を漏らす国民達が見ようと、今更離れる気持ちではないし、離れるという考えもない。
 こういう時だけ悪役令嬢の図太さが出るのだからどうしようもない人間だと自嘲しそうになる。

「クリス?」

 突然手を離して子供達の方に歩き出したクリストファーが何をするつもりなのか慌てるティファニーに人差し指を立ててそこで待つよう指示し、子供達の前で肩膝をついた。

「その歌を歌って楽しいかい?」

 子供達は逃げようとしたが、クリストファーが膝をついたことで逃げるのはやめた。少し怯えたように見えるのは彼らの中にその歌を歌うのが正しい事だとは思っていないからだろう。

「かーちゃん達が言ってたから……」
「そうか。じゃあ君はお母さんが言った事なら何でも歌にしてしまうのかい? バカとかどっか行けとか」
「ううん……」
「どうして今回はそんな歌を歌ったんだい?」
「かーちゃん達が歌ってやりなって言ったんだ……」

 誰がこの子供の親なのかは大勢の人間がいても一目でわかる。顔を真っ青にして震えている貧しそうな身なりの女性だった。

「君はあのお姉さんを見てどう思う?」
「ケバイ」
「ッ!?」

 子供の正直すぎる発言にティファニーは目を見開き、クリストファーは吹き出してしまった。

「ちょっと! 笑いすぎですわよ!」

 膝の上に置いた腕に目を当ててずっと肩を揺らしながら笑っているクリストファーに怒ると子供達が後ろに隠れてしまった。

「あ、ごっごめんなさいね。大声出してしまって…あなた達に言ったわけではありませんのよ」

 子供を相手にした経験が皆無に近いティファニーにとって〝優しいお姉さん〟の接し方は教科書の中にはなく、怯える子供達のなだめ方も知らなかった。

「確かに彼女は意地悪だし、嘘つきだし、悪役令嬢だったよ」
「ちょっと」
「僕によく意地悪を言うしね。平気じゃないのに平気だって嘘をつく。友達の願いを叶えるために悪役令嬢という嫌な役を引き受けた。それも10年という長い年月をかけて悪役令嬢になりきっていたんだ。皆はきっと、誰かが集めてきた情報を耳にしてそれを信じている。それは構わない。きっとそれも真実だろうから。だけど、どうかそれだけが真実だとは思わないでほしい。どうか、先入観なく、彼女を見てほしい。これからの彼女を。ティファニー・ヘザリントンという女性の成長を僕と一緒に見守ってほしい」

 一人一人の顔を見るようにゆっくり顔を動かしながら演説のように話すクリストファーに誰も反論の声は上げなかった。『確かに』『誰が極悪だって言い始めたんだ?』『クリストファー王子が選んだ相手が悪女なはずないよな』と聞こえてくる声にティファニーは一瞬で息を吸い込んで呼吸を止めた。少しでも息を吐き出せば涙が滲んでしまいそうだったから。
 悪役令嬢として生きてきた10年間、ティファニーを知らない人間に『それだけが真実だと思わないで』と言ってくれた人はいなかった。マリエットは庇っても『そういう子じゃない』と言うだけでティファニーがどういう子なのか力説することはなかった。それはあくまでも自分の株を上げるためのものであってティファニーを守るためのものではなかったから。
 今のティファニーを見るのではなく、これからのティファニーを見てほしいという言葉も嬉しかった。

「じゃあ、僕達はまだ先の結婚式のための式場下見に行くから」

 国民に手を振りながら戻ってきたクリストファーはティファニーの手を引っ張って走り出した。

「わたくしヒールですのよ!?」
「愛の逃避行ってこんな風にするよね!」
「教会に逃避行する男女がどこにいるんですの!?」
「僕達!」

 意味がわからないと首を振るも上機嫌な笑顔を見ていると全てどうでもいいと思えた。

「ここだよ」

 まだ中に入る前で既に気後れするような外観は王族専用と言われても納得できてしまうほど豪華なもので、白を基調とした壁に施された金の装飾。毎日磨かれているのだろうソレは曇り一つなく、空の青を美しく映していた。
ドア枠とノブも金で作られ、枠の中は美しいステンドグラスがはめられている。
 触れることさえ許されないのではないかと思うほど神々しい雰囲気に階段の下で足を止めているティファニーの手を引っ張ってクリストファーは進んでいく。

「許可は取っていますの?」
「もちろん。突撃訪問で気を遣わせたくないからね」

 王子が訪ねてくるのであれば突撃であろうと予定であろうと気を遣う事は間違いない。それでも王子であることは変えられないため最大の配慮が事前連絡になる。悪役令嬢よりずっと生きにくい人生を送っているのだとティファニーは首を振る。

「どうぞ、お姫様」

 姫という言われ方はコンラッドのせいで嫌いになった。自分の病気が嫌いなのに、それに関連させて眠り姫と呼ばれるのは不愉快極まりなかった。クリストファーにからかう意図はないとわかっていながらも苦笑してしまう。

「ああ……すごい……」

 息を吞むほどの感動にティファニーは思わず口を押さえた。
 壁よりも窓が多いことで中全体に光がいきわたり眩しさを感じるほど明るい。ここに真っ白なウエディングドレスがあればどれほど映えるだろうと想像でも感じる感動にティファニーは瞬きすることを忘れてしまう。

「ここで僕達は結婚するんだよ」
「夢みたいですわ」

 ここで本当に結婚するのだと思うと急に緊張が走る。

「二人きりの結婚式も悪くないね」
「わたくしのウエディングドレス姿を見たくないと?」
「見たいよ。でも今ここで愛を誓い合うのも悪くないと思わない?」

 向かい合って手を握りながら主導権を握ろうとしているクリストファーにティファニーはニッコリと笑顔を浮かべてみせた。

「では、皆に見守られながらの結婚式では神父様に『愛を再度誓いますか?』と言っていただかなければなりませんわね」
「ホント、意地悪だよね」
「可愛くないと評判ですのよ」
「誰だい? 僕の妻にそんな評判つけた奴」

〝人〟ではなく〝奴〟と言うクリストファー。二人きりの時はこうして少し本性を見せた言葉遣いをしたりする。両親さえ知らないという本性。何度聞いてもおかしくてティファニーはいつも笑ってしまう。

「ここで皆に祝福されながら結婚する日が待ち遠しいよ」
「そうですわね」

 ティファニーは今もまだ信じられなかった。自分が誰かと結婚するということ。それも親が決めた相手ではなく自分で見つけ、望んだ相手と出来るなんて。マリエットが結婚するまで結婚など無縁なものだと思っていたのに。

「妻ティファニーは夫クリストファーに永遠の愛を誓いますか?」
「簡易ですわね」
「誓ってくれないの?」
「誓います」

 キスをするのはまるでその瞬間、それが自然であるかのように二人は同時に目を閉じて唇を重ねた。

「嘘だ……」
「え?」

 急に鳴った教会の鐘に反応したのはクリストファー。ひどく驚いた顔をする姿に何事かと心配するティファニーの手を引いて奥にあるドアを叩いた。

「ああ、王子!」
「鐘を?」
「まさか! そのようなこと許されません!」
「な、なんですの?」

 神父までが焦っている様子に状況が理解出来ないティファニーが割って入ると眉を寄せたクリストファーが顔を向けた。

「この教会の鐘は神の知らせと言われていてね、鳴らしてはならない事になってるんだ」
「鳴らしてはいけないのなら何故鐘をつけられたんですの?」
「この教会は先々代の王が命じて建てられたものなんだ。それも神の啓示があったって言ってね。神から祝福がある時、この鐘は鳴らされる。先々代はそう言って結婚式だろうと鐘を鳴らすことを禁じた」
「神の啓示……」
「鳴ったのは一度だけ。先々代が亡くなった時だ。それ以降は誰が結婚しようと誰が生まれようと鳴ることはなかったのに……」

 信じられない顔をしているのはクリストファーと神父だけで、ティファニーは相変わらず事情はのみこめないという顔で二人を見ていた。

「祝福を受けたということだよ!」

 急に大声を上げたクリストファーの顔は興奮を露にし、本当に神の啓示を信じているのか握った手は震えていた。

「神が僕と君の結婚を祝福してくれたんだ!」

 どう反応していいかわからないティファニーは唇を横一文字にするのが精一杯で、一緒に飛び跳ねて喜ぶという演技も出来なかった。

「愛してるよティフィー!」
「わ、わたくしもですわ」

 勢いよく抱きしめられる驚きに目を見開きながらもクリストファーの喜びを邪魔したくなかったティファニーは抱きしめ返し、目を瞬かせたまま言葉を返した。

【神の祝福】それが何を示しているのか、この時のティファニーはまだわかっていなかった。

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