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新たな一日
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「おはようございます、アーデル」
「おはようございます、ラビ」
目が覚めるとアーデルがいない。気配には敏感なはずなのにアーデルがベッドを抜け出す際、ラビはいつも眠りに落ちたままで気付かない。この寝室が警戒する必要がない空間である証拠。
身体を起こしてパジャマを着替えてから下に降りるといつもの良い匂いが漂ってくる。昨日の朝、パンがなくなってしまったため新しくパンを焼いたのだろう香ばしい匂いを胸いっぱいに吸い込みながら階段を降りてキッチンに入った。
「珈琲淹れますね」
「お願いします」
いつもの会話だが、気分が違う。
新しい家に引っ越して一週間。朝からアーデルが名前を呼んでくれる。今までも呼んでくれてはいたが、必ず『ラビ皇子』だった。それが呼び捨てに変わった。
自分の名前はもう“ゴミ”を意味するものではない。それだけで気分が違う。ましてやアーデルはもう“皇子”と呼ばないと約束してくれた。照れよりもニヤけが勝ってしまうラビは何度も唇を内側に引っ込めて隠そうとするもニヤつくのは口元だけではないため不可能。
「良い夢でも見ましたか?」
「アーデルが名前を呼んでくれた事が嬉しくて」
「これからもたくさんお呼びしますよ」
「じゃあこれからも僕はずっと幸せだ」
二人で立つには狭いキッチンが広々としたものに変わった。すれ違うのに必ず身体が触れる。不便だと思っていたこの狭さを恋しく感じるほど広々としている。子供ができた時の事を考えての決断であったため二人で暮らすには少し広すぎる気もすると入居初日に二人で語っていた。
家の広さに対して家具が足りない。それもあって余計に広く感じている。前の家に置いていた家具は持ってこなかった。あの家に帰りたいと思った時に過ごせるようにと話し合って決めた。だから家具は少しずつ揃えようと決めたため、必要最低限の家具しかない。
「今日は何をしましょうか?」
「ココに手紙を書きます」
「あ、僕も書きますので一緒に同封してもらえますか?」
「もちろんです」
二人で何度も話し合って決めた家の事をココに連絡すると予定を空けて訪ねてきてくれた。鍵の受け渡し時まで同行するという約束を守ってくれた事に申し訳なく思いながらも感謝と感動を伝えた日から一週間。住み心地とか不便とか報告してもらえたら嬉しい、と言っていたため今日でちょうど1週間なのもあって二人は手紙を書く事にした。
朝からしっかりと朝食を腹に入れた二人はペンを持って便箋にそれぞれの想いを綴っていく。
秒針が時を刻む音と紙の上をペンが走る音だけが聞こえる静かな部屋の中、二人は相変わらず隣に座る。子供とも一緒に座れるようにとダイニングテーブルを買ったのに、一年間ずっと隣に座るのが当たり前だった二人はどうにも向かい合って座る事に慣れず、こうして二人で並んで座っている。
「ココさんは、本当に良い人ですよね。僕とは大違いです」
「またそんな言い方。あなたはどうして自分を下げる発言を?」
「さ、下げているつもりはないんです。こうして手紙を書いているとココさんがしてくださった事や言ってくださった事が蘇ってきて……彼の寛大さやフットワークの軽さなど、僕には持ち得ないものばかりだなと思って……」
苦笑するラビをアーデルが横目で見る。
「育ってきた環境が違うのですから当然だと思います」
「ですよね。僕は……」
「あなたが、とか、ココが、とかではなく、全く違う環境で育った人間同士を比べてどちらかが優れていると話す意味はないと言っているんです」
「あ……」
「隣人でさえ同じ環境で育つことはありません。家族だってそうです。私とフォスは同じ親に育てられましたが、私よりもフォスのほうが明るくて世渡り上手。愛嬌があって顔も可愛い。私は姉として優れた人間とは言えません」
「そんなことありません! アーデルは素晴らしい方です! 女性としても、人間としても、妻としても──」
力説するラビに頬杖をつくようにして口元を押さえたアーデルが照れている事に気付いてラビは嬉しくなる。アーデルは照れていると言いながらも最近は照れを見せてくれない。慣れてしまったのかもしれないと残念に思っていた矢先に見れた姿に歓喜していた。
「ね? 比べるなんて意味がない事でしょう? 私が私を否定してもあなたは私がどんなに素晴らしい人間かを説いてくれる。ココを良い人だと言ってくださるのはとても嬉しいですが、その後に自分を下げるような発言はやめてください。拗ねますよ?」
「そ、それは困りますので気をつけます」
「はい。お願いします」
ペンを持ち直したラビに向けられた「罰金ですからね」の言葉。「はい」と苦笑するしかなかった。
ココは本当に良い人だ。こんなに良い物件に自分達が暮らせるようになったのはココの尽力あってだ。不動産の人間はあまり歓迎ムードではなく、むしろ困った顔をしていたぐらい。それでも家を貸してくれたのはココ・ハウザーの知り合いだから、だった。自分達はその気持ちを裏切らないように暮らさなければならない。
ここら一帯は家もほとんど建ってはおらず、数年前までとある貴族の別荘だったらしいが、当主が亡くなった際に子供達が手放した物件と聞いた。貸別荘として出すつもりだったため売り物件ではなく、あくまでも賃貸として暮らす事になった。
本当は家を買いたかったのだが、一生をそこで暮らすつもりなら焦って購入する事はない、とココが言ってくれた。それだけでなく、気に入ったら購入でもいいかと不動産屋に掛け合ってくれたのだ。感謝してもしきれない。その感謝を綴るだけで便箋が一枚埋め尽くされる。
それを見たアーデルが自分の手紙のほうが同封させてもらう物になってしまったと笑った。
「では、手紙を出しに行くついでに市場で買い物でもしましょうか」
「そうですね。持ってきた食材がもうすぐ無くなりそうでしたし」
食料だけは置いていくわけにはいかなかったため箱に詰めて持ってきた。色々と買い溜めしておかなければならないと残っている食材を確認してメモに書き込んでから二人一緒に家を出た。
市場は歩いていくには少し遠いため、荷馬車で向かう。大袈裟ではあるかもしれないが、大量に買い込んでしまった時のためにと選択した。
「荷馬車っていいですね。なんだか素敵」
「王女様を荷馬車の後ろに乗せるなんて罪深いですよね」
「そうですか? 貴族でさえ楽しめない光景ですよ」
「お尻が痛くならないといいのですが」
「途中で立ったりするので大丈夫です」
荷台から足を放り出して揺らしながら離れていく自宅を見つめる。これで麦わら帽子でもかぶっていたら先日読んだ小説の挿絵と同じだと思うとアーデルはまるで小説の中の登場人物になったようで少しばかりテンションが上がっていた。
ヒュドールの皇子が御者席に座って荷馬車を走らせる。上質な服ではなく、どこでも買える安物の服に袖を通している。この姿を見て彼がヒュドールの皇子と気付く者はいないだろう。おかしそうに一人笑うアーデルが漏らす小さなクスクスを聞きながらラビも小さく微笑んでいた。
笑うのは苦手だった。不満を顔に出せば殴られ、笑えば気持ち悪いと殴られ、見せていいのは怯えと無表情だけ。シャンディといると笑えた。笑う事が許されていたから。でも、心の底からは笑えなかった。シャンディを怒らせる事がラビの中には恐怖としても存在していたから。シャンディに嫌われれば終わり。そんな危機感に襲われ、シャンディの機嫌を損ねない事を優先していた。
アーデルと出会い、結婚した事でようやく心の底から笑えるようになった。誰かが笑っているだけで自分の事のように嬉しくなって笑うのは初めてだった。
「さ、着きましたよ」
「買い込みすぎないようにしないと」
「そのための荷馬車ですよ」
「それもそうですね」
今の家は前の家と違って大きい。納屋があり、買い込んでも平気なほど広い。買いたい物を買おうと決めて、市場から少し離れた場所で荷馬車を止めて二人で歩き出す。
「すごい活気ですね」
「そうですね。一番大きな市場というだけあって、店の数も人もすごいです」
自分達が行っていた市場よりの三倍はありそうな面積。店の数は三倍どころではない。市場で買い物する人の多さはハイデンを思い出すほど。はぐれないようにと手を繋ぎ、活気溢れる市場の中を二人はメモを確認しながら練り歩く。
商品を自慢する声。立ち話の大笑い。どれにしようと迷う声。子供達のハシャぐ声。人がいるから存在する声ばかり。響き渡るそれらはどれも心地良く、ラビとアーデルは顔を見合わせては笑い合う。
だが、そんな声の中で聞こえたものが二人の足を止めた。
「死神……?」
「おはようございます、ラビ」
目が覚めるとアーデルがいない。気配には敏感なはずなのにアーデルがベッドを抜け出す際、ラビはいつも眠りに落ちたままで気付かない。この寝室が警戒する必要がない空間である証拠。
身体を起こしてパジャマを着替えてから下に降りるといつもの良い匂いが漂ってくる。昨日の朝、パンがなくなってしまったため新しくパンを焼いたのだろう香ばしい匂いを胸いっぱいに吸い込みながら階段を降りてキッチンに入った。
「珈琲淹れますね」
「お願いします」
いつもの会話だが、気分が違う。
新しい家に引っ越して一週間。朝からアーデルが名前を呼んでくれる。今までも呼んでくれてはいたが、必ず『ラビ皇子』だった。それが呼び捨てに変わった。
自分の名前はもう“ゴミ”を意味するものではない。それだけで気分が違う。ましてやアーデルはもう“皇子”と呼ばないと約束してくれた。照れよりもニヤけが勝ってしまうラビは何度も唇を内側に引っ込めて隠そうとするもニヤつくのは口元だけではないため不可能。
「良い夢でも見ましたか?」
「アーデルが名前を呼んでくれた事が嬉しくて」
「これからもたくさんお呼びしますよ」
「じゃあこれからも僕はずっと幸せだ」
二人で立つには狭いキッチンが広々としたものに変わった。すれ違うのに必ず身体が触れる。不便だと思っていたこの狭さを恋しく感じるほど広々としている。子供ができた時の事を考えての決断であったため二人で暮らすには少し広すぎる気もすると入居初日に二人で語っていた。
家の広さに対して家具が足りない。それもあって余計に広く感じている。前の家に置いていた家具は持ってこなかった。あの家に帰りたいと思った時に過ごせるようにと話し合って決めた。だから家具は少しずつ揃えようと決めたため、必要最低限の家具しかない。
「今日は何をしましょうか?」
「ココに手紙を書きます」
「あ、僕も書きますので一緒に同封してもらえますか?」
「もちろんです」
二人で何度も話し合って決めた家の事をココに連絡すると予定を空けて訪ねてきてくれた。鍵の受け渡し時まで同行するという約束を守ってくれた事に申し訳なく思いながらも感謝と感動を伝えた日から一週間。住み心地とか不便とか報告してもらえたら嬉しい、と言っていたため今日でちょうど1週間なのもあって二人は手紙を書く事にした。
朝からしっかりと朝食を腹に入れた二人はペンを持って便箋にそれぞれの想いを綴っていく。
秒針が時を刻む音と紙の上をペンが走る音だけが聞こえる静かな部屋の中、二人は相変わらず隣に座る。子供とも一緒に座れるようにとダイニングテーブルを買ったのに、一年間ずっと隣に座るのが当たり前だった二人はどうにも向かい合って座る事に慣れず、こうして二人で並んで座っている。
「ココさんは、本当に良い人ですよね。僕とは大違いです」
「またそんな言い方。あなたはどうして自分を下げる発言を?」
「さ、下げているつもりはないんです。こうして手紙を書いているとココさんがしてくださった事や言ってくださった事が蘇ってきて……彼の寛大さやフットワークの軽さなど、僕には持ち得ないものばかりだなと思って……」
苦笑するラビをアーデルが横目で見る。
「育ってきた環境が違うのですから当然だと思います」
「ですよね。僕は……」
「あなたが、とか、ココが、とかではなく、全く違う環境で育った人間同士を比べてどちらかが優れていると話す意味はないと言っているんです」
「あ……」
「隣人でさえ同じ環境で育つことはありません。家族だってそうです。私とフォスは同じ親に育てられましたが、私よりもフォスのほうが明るくて世渡り上手。愛嬌があって顔も可愛い。私は姉として優れた人間とは言えません」
「そんなことありません! アーデルは素晴らしい方です! 女性としても、人間としても、妻としても──」
力説するラビに頬杖をつくようにして口元を押さえたアーデルが照れている事に気付いてラビは嬉しくなる。アーデルは照れていると言いながらも最近は照れを見せてくれない。慣れてしまったのかもしれないと残念に思っていた矢先に見れた姿に歓喜していた。
「ね? 比べるなんて意味がない事でしょう? 私が私を否定してもあなたは私がどんなに素晴らしい人間かを説いてくれる。ココを良い人だと言ってくださるのはとても嬉しいですが、その後に自分を下げるような発言はやめてください。拗ねますよ?」
「そ、それは困りますので気をつけます」
「はい。お願いします」
ペンを持ち直したラビに向けられた「罰金ですからね」の言葉。「はい」と苦笑するしかなかった。
ココは本当に良い人だ。こんなに良い物件に自分達が暮らせるようになったのはココの尽力あってだ。不動産の人間はあまり歓迎ムードではなく、むしろ困った顔をしていたぐらい。それでも家を貸してくれたのはココ・ハウザーの知り合いだから、だった。自分達はその気持ちを裏切らないように暮らさなければならない。
ここら一帯は家もほとんど建ってはおらず、数年前までとある貴族の別荘だったらしいが、当主が亡くなった際に子供達が手放した物件と聞いた。貸別荘として出すつもりだったため売り物件ではなく、あくまでも賃貸として暮らす事になった。
本当は家を買いたかったのだが、一生をそこで暮らすつもりなら焦って購入する事はない、とココが言ってくれた。それだけでなく、気に入ったら購入でもいいかと不動産屋に掛け合ってくれたのだ。感謝してもしきれない。その感謝を綴るだけで便箋が一枚埋め尽くされる。
それを見たアーデルが自分の手紙のほうが同封させてもらう物になってしまったと笑った。
「では、手紙を出しに行くついでに市場で買い物でもしましょうか」
「そうですね。持ってきた食材がもうすぐ無くなりそうでしたし」
食料だけは置いていくわけにはいかなかったため箱に詰めて持ってきた。色々と買い溜めしておかなければならないと残っている食材を確認してメモに書き込んでから二人一緒に家を出た。
市場は歩いていくには少し遠いため、荷馬車で向かう。大袈裟ではあるかもしれないが、大量に買い込んでしまった時のためにと選択した。
「荷馬車っていいですね。なんだか素敵」
「王女様を荷馬車の後ろに乗せるなんて罪深いですよね」
「そうですか? 貴族でさえ楽しめない光景ですよ」
「お尻が痛くならないといいのですが」
「途中で立ったりするので大丈夫です」
荷台から足を放り出して揺らしながら離れていく自宅を見つめる。これで麦わら帽子でもかぶっていたら先日読んだ小説の挿絵と同じだと思うとアーデルはまるで小説の中の登場人物になったようで少しばかりテンションが上がっていた。
ヒュドールの皇子が御者席に座って荷馬車を走らせる。上質な服ではなく、どこでも買える安物の服に袖を通している。この姿を見て彼がヒュドールの皇子と気付く者はいないだろう。おかしそうに一人笑うアーデルが漏らす小さなクスクスを聞きながらラビも小さく微笑んでいた。
笑うのは苦手だった。不満を顔に出せば殴られ、笑えば気持ち悪いと殴られ、見せていいのは怯えと無表情だけ。シャンディといると笑えた。笑う事が許されていたから。でも、心の底からは笑えなかった。シャンディを怒らせる事がラビの中には恐怖としても存在していたから。シャンディに嫌われれば終わり。そんな危機感に襲われ、シャンディの機嫌を損ねない事を優先していた。
アーデルと出会い、結婚した事でようやく心の底から笑えるようになった。誰かが笑っているだけで自分の事のように嬉しくなって笑うのは初めてだった。
「さ、着きましたよ」
「買い込みすぎないようにしないと」
「そのための荷馬車ですよ」
「それもそうですね」
今の家は前の家と違って大きい。納屋があり、買い込んでも平気なほど広い。買いたい物を買おうと決めて、市場から少し離れた場所で荷馬車を止めて二人で歩き出す。
「すごい活気ですね」
「そうですね。一番大きな市場というだけあって、店の数も人もすごいです」
自分達が行っていた市場よりの三倍はありそうな面積。店の数は三倍どころではない。市場で買い物する人の多さはハイデンを思い出すほど。はぐれないようにと手を繋ぎ、活気溢れる市場の中を二人はメモを確認しながら練り歩く。
商品を自慢する声。立ち話の大笑い。どれにしようと迷う声。子供達のハシャぐ声。人がいるから存在する声ばかり。響き渡るそれらはどれも心地良く、ラビとアーデルは顔を見合わせては笑い合う。
だが、そんな声の中で聞こえたものが二人の足を止めた。
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