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番外編
番外編3
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「ふー……ふー……ふー……」
浴室に入って鍵を閉めた。風呂の準備をしながら何度も深呼吸を繰り返すアーデルの頭の中はグチャグチャだった。
(別人が帰ってきたってことはない? 本当にあれはラビ? だって人が違いすぎる。あんなことできる人じゃなかった。あんなこと言える人じゃなかった。すごくよく似た誰かがラビに成りすまして帰ってきたってことない? ううん、でもあの匂いはラビの匂い。姿形は似せられても匂いまでは似せられない。だからあれはラビで間違い無いんだけど……間違いないけどッ、変わりすぎ!)
顔の赤みを引かせようとするのに全くと言っていいほど引いてくれない。扇いでも扇いでも熱い。特に彼の唇が触れた部分。顎や首筋などヒュドールに攻め込む前のラビなら絶対にしたりしなかったのに、一体何があったのかと混乱している。
(まさかシャンディさんに……ありえない。絶対にそれだけはない。違う違う。そうじゃない。そうじゃないけど、じゃあ何があったの!?)
つい首筋を触ってしまう。
(だってあんな……あんなことって……だって……唇が……)
そこばかり意識してしまう自分が意外にもスケベであることにアーデルは思わず水瓶に頭を突っ込んだ。
「ぶはあっ!」
物理的に頭と顔を冷やしたアーデルは吸っては強く吐く深呼吸を繰り返し、拳を握って気合を入れた。
何もおかしな話ではない。自分たちは既に夫婦であり、それなりの時間を過ごした。何も子作りをしようと言っているわけではない。まだ一度も済ませていない初夜を経験するというだけ。そう、おかしな点などどこにもない。意識しすぎているだけ。
(それでもッ、やっぱりッ、おかしいッ)
悶えるように水瓶の水を叩く。アーデルの男への免疫はせいぜいがココか父親。当然二人を意識するはずもなく、意識した相手はラビだけ。心から彼を愛しているし、もっと触れ合いたいとも思う。思うが、行動が伴わない。心臓が本当に破裂してしまうのではないだろうかと思うほどのスピードで動いている。
(あんなことを馬車の中で済ませられる令嬢がいるって聞いたことはあるけど、正気の沙じゃない。だって、脱がずにどうやってするの!? そもそも馬車の中でしょ!? 揺れて周りにバレるじゃない! まずパーティーで出会ったばかりの相手とキスして抱き合ってそのまま身体を許すの!? 夫にさえまだ許してないし、許せるかもわからない人間はどうしたらいいの!? どうしてそういうことをもっと学んでこなかったの!?)
婚約が決まったらそういう勉強もするはずだった。だが、その前に結婚が決まってしまったため勉強どころではなかった。皇子の妻として教育を受けるはずが、皇子が一人暮らしであったため教育係も当然存在せず、自由にのんびりと過ごしてきた。
小説の中で何度もそういうシーンはあったし、どういうことを、どういう風にするかも知識としては持っている。だが、それと実際に経験するとなると話は別で、アーデルは思わず胸元を引っ張って自分の胸を覗き込んだ。
(ふ、不可抗力だったけど、い、一度見たって言ってたし、変に思わない、よね?)
胸はさほど大きくはなく、まな板というわけでもない。形の良し悪しが大事だと令嬢たちは言うが、誰かと比べることもないためわからない。そもそも令嬢の胸やウエストなどコルセットなどで寄せて上げてをしているため正確なサイズなどわかるはずがない。開けてびっくりという令息は多いのではないだろうか。
そんなことを考えながら床に座り込んで膝を抱えているアーデルが心配しているのは相手の反応よりも自分の反応。相手は見ているため、当時の記憶を思い出して予習するだけ。アーデルは違う。相手の裸を見たことがない。濡れたときに脱いだり、傷口を見たりするために服をめくったりして上半身を見ることはあっても下半身を見ることはなかった。それに繋がる理由もなかったから。
夫婦なのだから相手の裸を直視しようと凝視しようと問題はない。そう開き直る一方で、そういった行為にラビが嫌悪を覚えたらどうしようという不安もあった。少なからず人は相手に対してイメージを持っている。夫婦であろうと幻滅はある。故に無意識であろうと未だ見ぬ下半身に視線を向けて、あまつさえそれを凝視していたら、と考えると怖くなる。
そうしてしまうのではないかと不安になっている時点で自分の中に既にその想像ができているということ。その時点で最低だと膝を抱えて顔を埋める
「アーデル?」
準備をするだけなのに出てこないことを心配したラビが浴室のドアを開けようとするも鍵がかかっていて開かないことに首を傾げながら声をかけた。
慌てて立ち上がり、鍵を開けるとすぐにドアが開く。
「ど、どうしたんですか!?」
「な、何がでしょう!?」
「ずぶ濡れですよ!?」
水瓶に突っ込んだ頭から垂れる雫さえアーデルは気にならなかった。ドレスまで濡れている状態に驚いたのはラビのほう。
タオルを用意しようにも自分たちが住んでいた家と違って使用人に言って持ってきてもらわなければならない。それが城で暮らす不便さだとラビは思っている。
どうすればと辺りを見回すと自分の身体を拭く用に用意されたタオルが窓際に設置されているテーブルの上に置いてあることに気付き、取りに行った。
「まだお湯が沸いていないのに風邪をひいたらどうするんですか」
「だ、大丈夫です!」
「僕と一緒にベッドで過ごすことになりますよ?」
「そ、それはいけません!」
そこまで強く否定されるとは思っていなかったのか苦笑するラビに慌ててそうじゃないと否定すると「わかってます」と意地悪にも囁きで返ってきた。耳を押さえながらラビを見ると目を細めている。
「慣れてる……」
「な、慣れてないですよ! 僕はアーデルが最初で最後です! と、歳はこんなですけど、アーデルだけです!」
アドレナリンでも出ているのだろうか。それとも彼が持つ天性の才能か。どちらにせよ慌てるラビが恋しいとさえ思う状況。ひとまず冷静になりたいと思うのに、目を開けるとラビがそこにいる。
背が高く、服を着ていると細身だが脱ぐと筋肉がついている。顔だって整っているのに本人はそれを自覚していない。顔半分の傷があっても整っていると思うのだから、傷がなければモテていたに違いない。彼が社交的であれば尚更だ。
「緊張してるんですか?」
「当たり前です」
「僕もです」
怪しいと眉を寄せるアーデルの手を取って胸に当てる。確かに少し鼓動が早い気がすると顔を上げるも表情は険しい。
「緊張してるのにあんなことをするんですか?」
「ま、まだ何もしてませんよ?」
「何も!?」
あれでまだ何もしていないつもりなのかと一回り近く年上の相手が大人であることを実感し、一歩下がって距離を取って額を押さえる。どうしたのかと顔を覗き込むラビの頬を額に当てていた手を伸ばして両手で包んだ。
「私はまだ子供なんですね」
「歳の割には大人に見えますよ」
まだ十代のアーデルと違ってラビはもう三十代が目前。その差を考えると夫婦といえど迫るのは少し早いかとも考える。
「でも色々と経験不足です」
「こういうことに関しては僕も同じです」
「私よりはずっと大人です。当然ですけど」
「迫りすぎましたか?」
「そういうわけでは……」
ただ、と続けるアーデルが頬に当てていた手を後ろにズラして首に回し、そのまま抱きついた。首に顔を埋めるアーデルが口ごもりながらも伝える。
「私がどんな人間でも……どうか、失望しないでくださいね」
なんのことを言っているのかわからないラビは前を見たまま不思議そうな顔をするも悟ったのか、抱きしめ返してゆっくりと頷いた。
「もちろんです。アーデルが受け止めてくれたように、僕もどんなアーデルでも受け止めます」
「約束ですよ。私、自分で思うより色々と……その……なんか……アレなので……」
「アレとは?」
アーデルは答えなかった。自ら言葉にすることは憚られたのだ。でもなんとなくラビにはわかった。また耳まで赤くなっている。浴室に鍵をかけていたのは色々考えたいからで、頭が濡れていたのは突発的に冷やしたくなったから。
自分がベッドの上で色々考えていたように、アーデルも考えていた。ちゃんと考えてくれている。だからあんなことを言ったのだろうと嬉しくなった。
「アーデル、まずはお風呂から一緒に入りましょう。その先のことは急ぐつもりはないんです。ゆっくりとで構いません。ただ、今までよりずっと穏やかになる時間をこれから夫婦としてもう少し先に進むための時間に当てたい気持ちを知ってもらえれば嬉しいだけです」
「それはもちろん私も同じです」
嬉しい。その一言に尽きる。
アーデルと出会ってから初めて幸せを感じたとき、ラビは自分の人生に何度幸せの瞬間が訪れるか数えようと思っていた。初めは数えていた。だが、いつの間にかどれが幸せなのかラインが溶けてわからなくなるぐらい彼女との時間がどれも幸せで数えられなくなった。
今もそうだ。行動が、言葉が、表情が、全てが幸せを感じさせてくれる。
「こんな状況で愛してるって言うのはおかしいですか?」
いきなりどうしたと驚いた顔に書くアーデルだが、すぐに微笑んで「全然」と言った。
「愛しています、アーデル。出会った日から今日この瞬間までずっと。そしてこれからもずっと、あなたを愛し続けます」
誰かにこんな言葉を捧げる日が自分の人生に訪れるとは思っていなかったラビにとってはこれさえも幸せな瞬間だった。
浴室に入って鍵を閉めた。風呂の準備をしながら何度も深呼吸を繰り返すアーデルの頭の中はグチャグチャだった。
(別人が帰ってきたってことはない? 本当にあれはラビ? だって人が違いすぎる。あんなことできる人じゃなかった。あんなこと言える人じゃなかった。すごくよく似た誰かがラビに成りすまして帰ってきたってことない? ううん、でもあの匂いはラビの匂い。姿形は似せられても匂いまでは似せられない。だからあれはラビで間違い無いんだけど……間違いないけどッ、変わりすぎ!)
顔の赤みを引かせようとするのに全くと言っていいほど引いてくれない。扇いでも扇いでも熱い。特に彼の唇が触れた部分。顎や首筋などヒュドールに攻め込む前のラビなら絶対にしたりしなかったのに、一体何があったのかと混乱している。
(まさかシャンディさんに……ありえない。絶対にそれだけはない。違う違う。そうじゃない。そうじゃないけど、じゃあ何があったの!?)
つい首筋を触ってしまう。
(だってあんな……あんなことって……だって……唇が……)
そこばかり意識してしまう自分が意外にもスケベであることにアーデルは思わず水瓶に頭を突っ込んだ。
「ぶはあっ!」
物理的に頭と顔を冷やしたアーデルは吸っては強く吐く深呼吸を繰り返し、拳を握って気合を入れた。
何もおかしな話ではない。自分たちは既に夫婦であり、それなりの時間を過ごした。何も子作りをしようと言っているわけではない。まだ一度も済ませていない初夜を経験するというだけ。そう、おかしな点などどこにもない。意識しすぎているだけ。
(それでもッ、やっぱりッ、おかしいッ)
悶えるように水瓶の水を叩く。アーデルの男への免疫はせいぜいがココか父親。当然二人を意識するはずもなく、意識した相手はラビだけ。心から彼を愛しているし、もっと触れ合いたいとも思う。思うが、行動が伴わない。心臓が本当に破裂してしまうのではないだろうかと思うほどのスピードで動いている。
(あんなことを馬車の中で済ませられる令嬢がいるって聞いたことはあるけど、正気の沙じゃない。だって、脱がずにどうやってするの!? そもそも馬車の中でしょ!? 揺れて周りにバレるじゃない! まずパーティーで出会ったばかりの相手とキスして抱き合ってそのまま身体を許すの!? 夫にさえまだ許してないし、許せるかもわからない人間はどうしたらいいの!? どうしてそういうことをもっと学んでこなかったの!?)
婚約が決まったらそういう勉強もするはずだった。だが、その前に結婚が決まってしまったため勉強どころではなかった。皇子の妻として教育を受けるはずが、皇子が一人暮らしであったため教育係も当然存在せず、自由にのんびりと過ごしてきた。
小説の中で何度もそういうシーンはあったし、どういうことを、どういう風にするかも知識としては持っている。だが、それと実際に経験するとなると話は別で、アーデルは思わず胸元を引っ張って自分の胸を覗き込んだ。
(ふ、不可抗力だったけど、い、一度見たって言ってたし、変に思わない、よね?)
胸はさほど大きくはなく、まな板というわけでもない。形の良し悪しが大事だと令嬢たちは言うが、誰かと比べることもないためわからない。そもそも令嬢の胸やウエストなどコルセットなどで寄せて上げてをしているため正確なサイズなどわかるはずがない。開けてびっくりという令息は多いのではないだろうか。
そんなことを考えながら床に座り込んで膝を抱えているアーデルが心配しているのは相手の反応よりも自分の反応。相手は見ているため、当時の記憶を思い出して予習するだけ。アーデルは違う。相手の裸を見たことがない。濡れたときに脱いだり、傷口を見たりするために服をめくったりして上半身を見ることはあっても下半身を見ることはなかった。それに繋がる理由もなかったから。
夫婦なのだから相手の裸を直視しようと凝視しようと問題はない。そう開き直る一方で、そういった行為にラビが嫌悪を覚えたらどうしようという不安もあった。少なからず人は相手に対してイメージを持っている。夫婦であろうと幻滅はある。故に無意識であろうと未だ見ぬ下半身に視線を向けて、あまつさえそれを凝視していたら、と考えると怖くなる。
そうしてしまうのではないかと不安になっている時点で自分の中に既にその想像ができているということ。その時点で最低だと膝を抱えて顔を埋める
「アーデル?」
準備をするだけなのに出てこないことを心配したラビが浴室のドアを開けようとするも鍵がかかっていて開かないことに首を傾げながら声をかけた。
慌てて立ち上がり、鍵を開けるとすぐにドアが開く。
「ど、どうしたんですか!?」
「な、何がでしょう!?」
「ずぶ濡れですよ!?」
水瓶に突っ込んだ頭から垂れる雫さえアーデルは気にならなかった。ドレスまで濡れている状態に驚いたのはラビのほう。
タオルを用意しようにも自分たちが住んでいた家と違って使用人に言って持ってきてもらわなければならない。それが城で暮らす不便さだとラビは思っている。
どうすればと辺りを見回すと自分の身体を拭く用に用意されたタオルが窓際に設置されているテーブルの上に置いてあることに気付き、取りに行った。
「まだお湯が沸いていないのに風邪をひいたらどうするんですか」
「だ、大丈夫です!」
「僕と一緒にベッドで過ごすことになりますよ?」
「そ、それはいけません!」
そこまで強く否定されるとは思っていなかったのか苦笑するラビに慌ててそうじゃないと否定すると「わかってます」と意地悪にも囁きで返ってきた。耳を押さえながらラビを見ると目を細めている。
「慣れてる……」
「な、慣れてないですよ! 僕はアーデルが最初で最後です! と、歳はこんなですけど、アーデルだけです!」
アドレナリンでも出ているのだろうか。それとも彼が持つ天性の才能か。どちらにせよ慌てるラビが恋しいとさえ思う状況。ひとまず冷静になりたいと思うのに、目を開けるとラビがそこにいる。
背が高く、服を着ていると細身だが脱ぐと筋肉がついている。顔だって整っているのに本人はそれを自覚していない。顔半分の傷があっても整っていると思うのだから、傷がなければモテていたに違いない。彼が社交的であれば尚更だ。
「緊張してるんですか?」
「当たり前です」
「僕もです」
怪しいと眉を寄せるアーデルの手を取って胸に当てる。確かに少し鼓動が早い気がすると顔を上げるも表情は険しい。
「緊張してるのにあんなことをするんですか?」
「ま、まだ何もしてませんよ?」
「何も!?」
あれでまだ何もしていないつもりなのかと一回り近く年上の相手が大人であることを実感し、一歩下がって距離を取って額を押さえる。どうしたのかと顔を覗き込むラビの頬を額に当てていた手を伸ばして両手で包んだ。
「私はまだ子供なんですね」
「歳の割には大人に見えますよ」
まだ十代のアーデルと違ってラビはもう三十代が目前。その差を考えると夫婦といえど迫るのは少し早いかとも考える。
「でも色々と経験不足です」
「こういうことに関しては僕も同じです」
「私よりはずっと大人です。当然ですけど」
「迫りすぎましたか?」
「そういうわけでは……」
ただ、と続けるアーデルが頬に当てていた手を後ろにズラして首に回し、そのまま抱きついた。首に顔を埋めるアーデルが口ごもりながらも伝える。
「私がどんな人間でも……どうか、失望しないでくださいね」
なんのことを言っているのかわからないラビは前を見たまま不思議そうな顔をするも悟ったのか、抱きしめ返してゆっくりと頷いた。
「もちろんです。アーデルが受け止めてくれたように、僕もどんなアーデルでも受け止めます」
「約束ですよ。私、自分で思うより色々と……その……なんか……アレなので……」
「アレとは?」
アーデルは答えなかった。自ら言葉にすることは憚られたのだ。でもなんとなくラビにはわかった。また耳まで赤くなっている。浴室に鍵をかけていたのは色々考えたいからで、頭が濡れていたのは突発的に冷やしたくなったから。
自分がベッドの上で色々考えていたように、アーデルも考えていた。ちゃんと考えてくれている。だからあんなことを言ったのだろうと嬉しくなった。
「アーデル、まずはお風呂から一緒に入りましょう。その先のことは急ぐつもりはないんです。ゆっくりとで構いません。ただ、今までよりずっと穏やかになる時間をこれから夫婦としてもう少し先に進むための時間に当てたい気持ちを知ってもらえれば嬉しいだけです」
「それはもちろん私も同じです」
嬉しい。その一言に尽きる。
アーデルと出会ってから初めて幸せを感じたとき、ラビは自分の人生に何度幸せの瞬間が訪れるか数えようと思っていた。初めは数えていた。だが、いつの間にかどれが幸せなのかラインが溶けてわからなくなるぐらい彼女との時間がどれも幸せで数えられなくなった。
今もそうだ。行動が、言葉が、表情が、全てが幸せを感じさせてくれる。
「こんな状況で愛してるって言うのはおかしいですか?」
いきなりどうしたと驚いた顔に書くアーデルだが、すぐに微笑んで「全然」と言った。
「愛しています、アーデル。出会った日から今日この瞬間までずっと。そしてこれからもずっと、あなたを愛し続けます」
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