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キスの意味
「はい、お姫様。到着しましたよ」
「ありがとうございます、王子様」
「この歳で王子様って言われるのはやっぱり恥ずかしいな」
部屋に入ってソファーにマリーを下ろしたアーサーはお礼と共に言われた言葉に苦笑しながら頬を掻く。
「ピアス、本当によく似合ってるよ」
「アーサー様も」
髪の隙間から見えるピアスをもっとよく見ようとマリーの髪に触れ、耳にかけてピアスがよく見えるようにしたアーサーの指が耳にに触れたことでマリーの唇にキュッと力が入った。掠めたくすぐったさに声が漏れそうになったのだ。
「二人きりだねって言葉は気持ち悪いおじさんみたいかな?」
発言一つにも気を遣うアーサーの言っている意味がマリーはわからなかった。
何をもって『気持ち悪いおじさん』と言ったのだろう。不思議そうに首を傾げるマリーに少し安堵を見せるアーサーだが、まだ表情は明るくならない。
隣に腰かけ、ゆっくり息を吐きだした。
「実際に今、ここでは二人きりなのですから、おかしなことは言ってないと思いますけど」
二人きりだから二人きりと言うことの何をおかしく思ってそんな苦痛を感じているような表情をしているのかわからないマリーの言葉にアーサーは表情を苦笑へと変えて頷く。
「私はきっと、これからも幾度となくこうして君との歳の差を気にするんだと思う」
「気になりますか?」
「気にしても仕方がないのはわかってるんだけどね。でも気にしてしまうんだ。外見がいくら若く見られようと、四十二歳であることに変わりない。世間的に見ても私の年齢は若者とは呼ばれないから」
マリーはまだ不思議そうな顔のままアーサーを見つめている。
「私は四十二歳で君は花も恥じらう十七歳。君が生まれたとき、私は既に二十五歳だった。君が二十五歳になったとき、私はもう五十歳……恐ろしいな……」
「何故です?」
若さは宝だ。どんなに金を積んだところで、自分が持っている物を全て差し出したところで年齢だけは重ねることを止められない。
アーサーほどの年齢になれば若い娘を妻に迎えて気にしないというわけにはいかない。どうしても考えてしまうのだ。今の現状も、未来のことも。
歳の差は承知の上で求婚して、そしてこれからもそれを気にすることを覚悟の上で結婚するつもりだ。
結婚などしないと考えていた自分が見つけたたった一人の愛する女性がまさか十七歳の少女だとは思ってもいなかったが、この愛に嘘はないと確信がある。
それなら問題はないとは思うのに、意味なく気にしてしまう自分がいるのもアーサーの中では確かだった。
「君が一番美しい瞬間を迎えるとき、私は顔にシワを作っているだろう。地方に行けば私たちは夫婦ではなく親子に見られる。君が私の子を産んでくれても私はその子の相手をする体力がないかもしれない。そんなことをずっと気にして行くんだと思う。そして一年過ぎるたびに考えてしまうだろう。いつまで君を抱き上げられるんだろう、と」
マリーも考えたことがないわけではない。
自分たちの歳の差は五歳十歳どころではない。親子ほど歳が離れているのだからアーサー・アーチボルトを知らない人たちが自分たちを見れば親子だと思うだろうと。でも、マリーはアーサーとは考え方が違う。だからなんだ、と思うのだ。
アーサーが婚約記事を新聞に載せてくれたのを見たベンジャミンが言った。
『親子ほど歳が離れていることでそう見られるのが嫌だと思うなら結婚はやめなさい』
どう見られようと胸を張れないのなら結婚すべきではないと言われてマリーは何度も首を振った。
それが全てなのだ。
「親子ほどの歳の差があるんですから、親子に見られても仕方ないです。見られたからって親子になるわけではないですし、そんなのは当然だって思いましょう」
「情けない話だと自分でも思うよ」
「もし、親子ですかって聞かれたら私が大きな声でこう言います。この人は私が世界で一番愛している旦那様ですって。それで気にならなくなりませんか?」
笑顔でそう答えるマリーにキュッと唇を結んだアーサーはまたマリーを抱きしめる。
情けないのは親子に見られるかもしれないと気にする自分じゃない。そんなことを気にして十七歳の婚約者にこんなことを言わせる自分。
もっと大人の男でなければならない。完璧にエスコートして、支えて、もういいと言われるほど愛して──でも、まだできていない。それこそが最も情けないと思う。
(年齢を気にするなら余裕ある大人になれるよう努めろよ)
わかっているのにできていない自分に小さな溜息をつくと身体を離したマリーがアーサーの頬を両手で包んでむにゅっと肉を中央に寄せる。
「親子ほど歳が離れていることでそう見られるのが嫌だと思うなら結婚はやめます」
「なっ!? ちょ、ちょっと待って!」
「って、祖父に言われたんです」
「あ……」
真っ直ぐ見つめながら少し苦笑を滲ませるマリーの言葉にベンジャミンなら言いそうだと納得する。
「八年後にシワができる? いいじゃないですか。アーサー様が順調に歳を重ねている証拠なんですから。親子に見られる? その場で私が否定します。我が子と遊ぶ体力がない? 子供が合わせてくれるから大丈夫です」
「ははっ、子供が合わせてくれるのか」
「私を抱き上げられなくなってもいいんです。手を繋いで歩くことはできるんですから」
まだ十七年しか生きていないマリーに歳を取る恐怖を理解しろと言っても無理な話で、シワができることや体力の衰えという老いへの恐怖はわからないだろう。
だが、いつかは理解する日がくる。それまでは隣で彼が抱える恐怖に付き合うことしかできないが、彼が死ぬまでそうするつもりだった。
「アーサー様の悩みなんてくだらないものですよ」
「くだらない……か。そうだね。そのとおりだ」
ハッキリ言ったマリーに笑うアーサーは吹っ切れたような笑顔を見せるも頬が内側に寄っているため面白い顔になっており、マリーはそれを見て笑いだす。
「ひどいな」
「ふふっ、ごめんなさい。でも……」
手の力を抜いて包むだけにすればマリーは自らキスをした。触れるだけのキス。
「親子はこんな風にキスをしたりしないでしょう?」
「そう、だね……」
「じゃあ今日からは自分で気にして肩を落とさないでください」
「わかった」
互いに恋愛初心者だが、若さは強さだとマリーが証明している。
無駄に歳を重ねて知識のみ豊富であるため臆病になって、自分がどう見られるかというよりマリーがどう見られるかが不安だったが、気にする必要はなさそうだと安堵した。
「私も強くならないといけないな。マリーが頼れるように大人な男であることを見せないと」
「アーサー様はいつも素敵ですよ。大人でかっこいいです。ご自覚ないのですか?」
「あるといいんだけどね。何せ、うちにはスパルタな執事長がいるもんだから、いつまで経っても子供扱いで自信を持つたびに打ち砕いてくるんだ」
「ふふっ、想像できます」
大人な男を演じることはいくらでもできる。これまでずっとそうしてきたのだ。だから皆が勝手なイメージを植えつけたアーサー・アーチボルトが完成している。
しかしそれは知識のみでの演じ方であって本当の意味で大人な男なわけではない。
噂をする令嬢たちはアーサーに子供な部分がたくさんあることを知らない。本人が自覚するほど子供な部分を。
ずっと大人を演じていたかったが、所詮は演じているだけ。ボロは必ず出てしまうし、ハンネスがバラしてしまうため上手くいかなかった。
それでも今はそうすることでマリーの心を掴めるなら演じ続けたいと頬に添えてある手を握り、手の甲へと口付けてから立ち上がる。
「ではお姫様、こちらの香水をつけさせていただいてもよろしいですか?」
「お願いします」
マリーのために用意した香水を取り出して小瓶へと移し、マリーの手首にシュッと吹きかけた。
「いい香り……」
「君をイメージした香りだからね」
「美化されすぎです」
「いや、実際とてもいい香りだよ」
媚びた甘い匂いではなく透明感のある爽やかな匂い。まとわりつくことなく自然に感じる匂いはとても心地良く、胸いっぱいに吸い込みたくなる。
マリーは、何もしていない自分がこんなに良い香りがするはずがないとかぶりを振るが、香りにさえ愛おしげに目を細める姿に口を閉じた。
「愛らしくもあり、上品でもある。感じ方は人それぞれだろうけど、私はこの香りを嗅いで真っ先に君が思い浮かんだんだ」
それだけでもう充分だった。アーサーがこの香りで自分を思い出してくれたのならそれを否定するわけにはいかない。これがアーサーにとって自分の匂いなのだと思うだけで胸がくすぐったくなる。
「手首へのキスの意味、知ってるかい?」
「知らないです」
手首同士を軽く擦り合わせて匂いを移すとアーサーはマリーの手のひらを上に向けて手首を親指で撫でながら問いかけた。
昨日も手首にキスをされたが、しやすい場所にしているのだと思っていたマリーはキスの部位に意味があってしているとは思っていなかった。
「手首へのキスは相手への強い好意を表しているんだよ。君が好きでたまらない、とかね」
意味を説明し、手首へキスを落とすアーサーの視線はマリーの瞳を捉えたまま。その視線がどこか熱っぽく、色気を感じる。
「手首に分けた香水はどうするんだっけ?」
「首に移します」
「そうだね」
やれとは言われていない。だが、アーサーの瞳が首へ匂いを移すように言っているような気がして、マリーは手首で首を撫でつけた。
「首へのキスは相手への執着心を表す。君を手に入れたいっていう思いを伝えるために首にキスをするんだって」
「ッ!」
横から首に唇が押し当てられ軽く吸われる。ビリッと電気が走ったように感じ、慌てて口を押さえるマリーはアーサーの行動に上手く反応できず異常に速く動く心臓に合わせて浅い呼吸になっていく。
これが大人でなければなんだと言うのかと聞きたかったが、マリーは声が漏れてしまわないようにするので必死だった。
「ありがとうございます、王子様」
「この歳で王子様って言われるのはやっぱり恥ずかしいな」
部屋に入ってソファーにマリーを下ろしたアーサーはお礼と共に言われた言葉に苦笑しながら頬を掻く。
「ピアス、本当によく似合ってるよ」
「アーサー様も」
髪の隙間から見えるピアスをもっとよく見ようとマリーの髪に触れ、耳にかけてピアスがよく見えるようにしたアーサーの指が耳にに触れたことでマリーの唇にキュッと力が入った。掠めたくすぐったさに声が漏れそうになったのだ。
「二人きりだねって言葉は気持ち悪いおじさんみたいかな?」
発言一つにも気を遣うアーサーの言っている意味がマリーはわからなかった。
何をもって『気持ち悪いおじさん』と言ったのだろう。不思議そうに首を傾げるマリーに少し安堵を見せるアーサーだが、まだ表情は明るくならない。
隣に腰かけ、ゆっくり息を吐きだした。
「実際に今、ここでは二人きりなのですから、おかしなことは言ってないと思いますけど」
二人きりだから二人きりと言うことの何をおかしく思ってそんな苦痛を感じているような表情をしているのかわからないマリーの言葉にアーサーは表情を苦笑へと変えて頷く。
「私はきっと、これからも幾度となくこうして君との歳の差を気にするんだと思う」
「気になりますか?」
「気にしても仕方がないのはわかってるんだけどね。でも気にしてしまうんだ。外見がいくら若く見られようと、四十二歳であることに変わりない。世間的に見ても私の年齢は若者とは呼ばれないから」
マリーはまだ不思議そうな顔のままアーサーを見つめている。
「私は四十二歳で君は花も恥じらう十七歳。君が生まれたとき、私は既に二十五歳だった。君が二十五歳になったとき、私はもう五十歳……恐ろしいな……」
「何故です?」
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歳の差は承知の上で求婚して、そしてこれからもそれを気にすることを覚悟の上で結婚するつもりだ。
結婚などしないと考えていた自分が見つけたたった一人の愛する女性がまさか十七歳の少女だとは思ってもいなかったが、この愛に嘘はないと確信がある。
それなら問題はないとは思うのに、意味なく気にしてしまう自分がいるのもアーサーの中では確かだった。
「君が一番美しい瞬間を迎えるとき、私は顔にシワを作っているだろう。地方に行けば私たちは夫婦ではなく親子に見られる。君が私の子を産んでくれても私はその子の相手をする体力がないかもしれない。そんなことをずっと気にして行くんだと思う。そして一年過ぎるたびに考えてしまうだろう。いつまで君を抱き上げられるんだろう、と」
マリーも考えたことがないわけではない。
自分たちの歳の差は五歳十歳どころではない。親子ほど歳が離れているのだからアーサー・アーチボルトを知らない人たちが自分たちを見れば親子だと思うだろうと。でも、マリーはアーサーとは考え方が違う。だからなんだ、と思うのだ。
アーサーが婚約記事を新聞に載せてくれたのを見たベンジャミンが言った。
『親子ほど歳が離れていることでそう見られるのが嫌だと思うなら結婚はやめなさい』
どう見られようと胸を張れないのなら結婚すべきではないと言われてマリーは何度も首を振った。
それが全てなのだ。
「親子ほどの歳の差があるんですから、親子に見られても仕方ないです。見られたからって親子になるわけではないですし、そんなのは当然だって思いましょう」
「情けない話だと自分でも思うよ」
「もし、親子ですかって聞かれたら私が大きな声でこう言います。この人は私が世界で一番愛している旦那様ですって。それで気にならなくなりませんか?」
笑顔でそう答えるマリーにキュッと唇を結んだアーサーはまたマリーを抱きしめる。
情けないのは親子に見られるかもしれないと気にする自分じゃない。そんなことを気にして十七歳の婚約者にこんなことを言わせる自分。
もっと大人の男でなければならない。完璧にエスコートして、支えて、もういいと言われるほど愛して──でも、まだできていない。それこそが最も情けないと思う。
(年齢を気にするなら余裕ある大人になれるよう努めろよ)
わかっているのにできていない自分に小さな溜息をつくと身体を離したマリーがアーサーの頬を両手で包んでむにゅっと肉を中央に寄せる。
「親子ほど歳が離れていることでそう見られるのが嫌だと思うなら結婚はやめます」
「なっ!? ちょ、ちょっと待って!」
「って、祖父に言われたんです」
「あ……」
真っ直ぐ見つめながら少し苦笑を滲ませるマリーの言葉にベンジャミンなら言いそうだと納得する。
「八年後にシワができる? いいじゃないですか。アーサー様が順調に歳を重ねている証拠なんですから。親子に見られる? その場で私が否定します。我が子と遊ぶ体力がない? 子供が合わせてくれるから大丈夫です」
「ははっ、子供が合わせてくれるのか」
「私を抱き上げられなくなってもいいんです。手を繋いで歩くことはできるんですから」
まだ十七年しか生きていないマリーに歳を取る恐怖を理解しろと言っても無理な話で、シワができることや体力の衰えという老いへの恐怖はわからないだろう。
だが、いつかは理解する日がくる。それまでは隣で彼が抱える恐怖に付き合うことしかできないが、彼が死ぬまでそうするつもりだった。
「アーサー様の悩みなんてくだらないものですよ」
「くだらない……か。そうだね。そのとおりだ」
ハッキリ言ったマリーに笑うアーサーは吹っ切れたような笑顔を見せるも頬が内側に寄っているため面白い顔になっており、マリーはそれを見て笑いだす。
「ひどいな」
「ふふっ、ごめんなさい。でも……」
手の力を抜いて包むだけにすればマリーは自らキスをした。触れるだけのキス。
「親子はこんな風にキスをしたりしないでしょう?」
「そう、だね……」
「じゃあ今日からは自分で気にして肩を落とさないでください」
「わかった」
互いに恋愛初心者だが、若さは強さだとマリーが証明している。
無駄に歳を重ねて知識のみ豊富であるため臆病になって、自分がどう見られるかというよりマリーがどう見られるかが不安だったが、気にする必要はなさそうだと安堵した。
「私も強くならないといけないな。マリーが頼れるように大人な男であることを見せないと」
「アーサー様はいつも素敵ですよ。大人でかっこいいです。ご自覚ないのですか?」
「あるといいんだけどね。何せ、うちにはスパルタな執事長がいるもんだから、いつまで経っても子供扱いで自信を持つたびに打ち砕いてくるんだ」
「ふふっ、想像できます」
大人な男を演じることはいくらでもできる。これまでずっとそうしてきたのだ。だから皆が勝手なイメージを植えつけたアーサー・アーチボルトが完成している。
しかしそれは知識のみでの演じ方であって本当の意味で大人な男なわけではない。
噂をする令嬢たちはアーサーに子供な部分がたくさんあることを知らない。本人が自覚するほど子供な部分を。
ずっと大人を演じていたかったが、所詮は演じているだけ。ボロは必ず出てしまうし、ハンネスがバラしてしまうため上手くいかなかった。
それでも今はそうすることでマリーの心を掴めるなら演じ続けたいと頬に添えてある手を握り、手の甲へと口付けてから立ち上がる。
「ではお姫様、こちらの香水をつけさせていただいてもよろしいですか?」
「お願いします」
マリーのために用意した香水を取り出して小瓶へと移し、マリーの手首にシュッと吹きかけた。
「いい香り……」
「君をイメージした香りだからね」
「美化されすぎです」
「いや、実際とてもいい香りだよ」
媚びた甘い匂いではなく透明感のある爽やかな匂い。まとわりつくことなく自然に感じる匂いはとても心地良く、胸いっぱいに吸い込みたくなる。
マリーは、何もしていない自分がこんなに良い香りがするはずがないとかぶりを振るが、香りにさえ愛おしげに目を細める姿に口を閉じた。
「愛らしくもあり、上品でもある。感じ方は人それぞれだろうけど、私はこの香りを嗅いで真っ先に君が思い浮かんだんだ」
それだけでもう充分だった。アーサーがこの香りで自分を思い出してくれたのならそれを否定するわけにはいかない。これがアーサーにとって自分の匂いなのだと思うだけで胸がくすぐったくなる。
「手首へのキスの意味、知ってるかい?」
「知らないです」
手首同士を軽く擦り合わせて匂いを移すとアーサーはマリーの手のひらを上に向けて手首を親指で撫でながら問いかけた。
昨日も手首にキスをされたが、しやすい場所にしているのだと思っていたマリーはキスの部位に意味があってしているとは思っていなかった。
「手首へのキスは相手への強い好意を表しているんだよ。君が好きでたまらない、とかね」
意味を説明し、手首へキスを落とすアーサーの視線はマリーの瞳を捉えたまま。その視線がどこか熱っぽく、色気を感じる。
「手首に分けた香水はどうするんだっけ?」
「首に移します」
「そうだね」
やれとは言われていない。だが、アーサーの瞳が首へ匂いを移すように言っているような気がして、マリーは手首で首を撫でつけた。
「首へのキスは相手への執着心を表す。君を手に入れたいっていう思いを伝えるために首にキスをするんだって」
「ッ!」
横から首に唇が押し当てられ軽く吸われる。ビリッと電気が走ったように感じ、慌てて口を押さえるマリーはアーサーの行動に上手く反応できず異常に速く動く心臓に合わせて浅い呼吸になっていく。
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