統合失調症妻の事件簿

第五話

それは、木箱に入っていた鍵を調べ始めて数日後のことだった。玲奈が突然、真剣な顔で僕に話しかけてきた。

「ねえ、この鍵…やっぱり使える場所を探してみない？」

「でも、どこで使えるかも分からないし。」

「分からないから探すのよ！」玲奈は目を輝かせて言った。「手紙に書いてあったでしょ？ 『大切なものを守りたいなら』って。」

彼女の熱意に押され、僕はしぶしぶ鍵を持って調査に協力することにした。

まずは祖父がかつて住んでいた家を訪れることになった。幸い、祖父が残した記録に住所が載っていたため、場所を特定するのは難しくなかった。その家は、町外れの古い住宅街の一角にひっそりと佇んでいた。

僕たちが家の前に立つと、玲奈は興奮気味に「絶対にここだ！」と叫んだ。

「いや、でもこの家はもう誰かが住んでるかもしれないから、勝手に入るのは…」

「大丈夫！ 鍵が合えば、それが運命ってことよ！」

運命という論理に無理矢理納得させられ、僕たちはドアの前に立った。そして、例の鍵を差し込むと…

「…開いた。」

扉の向こうは、ほこりっぽく、誰も住んでいないような空間だった。家具は古びていたが、どこか懐かしい雰囲気が漂っている。

「すごい、本当に鍵が合うなんて。」

玲奈は部屋を見回しながら、まるで探偵が現場を調査するように動き回っていた。そして、リビングの隅に置かれた大きな棚を見つけると、「これよ！」と叫んだ。

「何が？」

「大切なものが隠されているに違いない！」

玲奈は棚の引き出しを一つずつ開けていった。そして、最下段の引き出しから、大きな封筒を取り出した。

封筒の中には、何十枚もの古い写真と手紙が入っていた。その写真には、祖父が若い頃に誰かと一緒に写っている様子が映っていた。しかし、その「誰か」に僕は見覚えがなかった。

「この女性、誰だろう？」

玲奈は写真を見つめて言った。「おじいちゃんの恋人だったとか？」

「いや、そんな話は聞いたことがないけど…」

さらに手紙を読み進めると、驚くべき事実が浮かび上がった。

手紙の内容は、祖父が戦後に密かに支援していた人物について書かれていた。その人物は、国外から逃れてきた人で、祖父はその人を家族のように大切にしていたらしい。しかし、当時の情勢からその事実を公にすることはできず、全てをこの家に隠していたのだ。

「おじいちゃん…そんな過去があったなんて。」

玲奈は感慨深げに写真を眺めていたが、次の瞬間、「じゃあ、この人が探してる『大切なもの』って何？」と僕を問い詰めた。

「いや、これ以上何があるのか分からないけど…」

「もっと奥を探してみようよ！」

その後、玲奈は部屋の中を調べ回り、ついに書斎の奥に不自然な壁を見つけた。

「これ、開くんじゃない？」

「いやいや、ただの壁でしょ。」

「絶対に隠し部屋よ！ ドラマでよく見るやつ！」

半信半疑で壁を調べてみると、確かに小さな隙間があり、押すと「ゴトリ」という音と共に壁が動いた。

「…本当にあったのか、隠し部屋。」

部屋の中には古い金庫が置かれていた。

玲奈は興奮しながら金庫を調べ、暗証番号を探し始めた。幸い、手紙の中に暗号らしき数字が書かれており、それを試すと金庫は開いた。

中には、小さな箱と手書きのノートが入っていた。ノートには、祖父が長年の間に誰かを支援していた記録が詳細に書かれていた。そして、小さな箱の中には、一枚の古い切符と地図が入っていた。

「これは…？」

「切符ってことは、どこかに行けってことよ！」

玲奈の推理は止まらない。僕たちはその切符を手に、次なる「冒険」の準備をすることになった。

新たな章の始まり
こうして、「祖父の秘密」という新たな謎が僕たちの生活に加わった。玲奈はもちろん、「この先に何が待ってるのか楽しみ！」と大興奮している。

僕はと言えば、少し不安を感じつつも、玲奈と一緒に次の謎を追う日々を楽しみ始めていた。