【完結】捨てられた令嬢は、国一の美女で精霊の姫でした。

丸顔ちゃん。

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第5話

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大広間を出た瞬間、
エリシアの足元から力が抜けた。

コツ……コツ……。

ヒールの音が、やけに大きく響く。
廊下の空気は冷たく、
祝賀会の熱気が嘘のように感じられた。

精霊たちが、彼女の周りを必死に飛び回る。

――エリシア、しっかりして。

――あなたは悪くない。

――あなたは、誰よりも尊い。

エリシアは、かすかに微笑んだ。

「……ありがとう。
 でも……大丈夫よ」

そう言いながらも、
胸の奥はひどく痛んでいた。

(……わたし、捨てられたんだ)

その事実が、
じわじわと心を侵食していく。



廊下の先で、
誰かが駆け寄ってくる足音がした。

「エリシア!」

兄の声だった。

エリシアが顔を上げると、
兄は息を切らしながら駆け寄ってきた。

「エリシア……!
 大丈夫か……!?」

その声は震えていた。
怒りと心配が入り混じった、
聞いたことのない声。

エリシアは、
無理に笑おうとした。

「……大丈夫よ。
 殿下が……そうおっしゃっただけ……」

兄は、拳を強く握りしめた。

「“だけ”じゃない!
 あんな公開処刑みたいな真似……
 許されるわけがないだろ!」

精霊たちが、兄の怒りに反応して光を揺らす。

――この人は、あなたを守ろうとしている。

――あなたを大切に思っている。

エリシアは、
胸がきゅっと締めつけられた。

(……わたし、守られる価値なんて……)

そのとき。

「エリシア!」

母が駆け寄ってきた。
ドレスの裾を乱し、
普段は決して見せない必死の表情で。

「エリシア……あなた……
 なんてことを……!」

母はエリシアを抱きしめた。
その腕は震えていた。

「あなたは何も悪くないのに……
 どうして……どうしてあんな……!」

エリシアは、
母の胸元に顔を埋めた。

(……ああ、温かい)

その温かさに触れた瞬間、
張りつめていた心が、
音もなくひび割れた。

ぽたり。

涙が落ちた。

「……お母様……
 わたし……
 わたし……捨てられちゃった……」

母は、エリシアの背を撫でながら言った。

「捨てられたのは、あの子の方よ。
 あなたの価値がわからない愚か者に、
 あなたを渡す必要なんてなかったの」

兄も、怒りを押し殺した声で言う。

「エリシア。
 お前は……誰よりも努力してきた。
 殿下の公務も、魔道具の調整も、
 全部お前が支えてきたんだ。
 それを……あんな形で……!」

エリシアは、
涙を拭いながら小さく首を振った。

「……でも……
 わたし、無能力だから……
 殿下の言う通りで……」

その瞬間、
精霊たちが強く光を放った。

――違う!

――あなたは無能力なんかじゃない!

――あなたは、精霊の姫!

――あなたは、世界で一番尊い!

エリシアは、
その声に胸を突かれたように息を呑んだ。

(……精霊さん……)

兄が、エリシアの肩に手を置いた。

「エリシア。
 お前は……
 “無能力”なんかじゃない」

エリシアは、
驚いて兄を見上げた。

兄は、静かに言った。

「お前の周りには、
 いつも光が集まってる。
 俺には見えないけど……
 感じるんだ。
 お前は……特別なんだって」

エリシアの胸が震えた。

(……特別……?
 わたしが……?)

そのとき――

廊下の奥から、
弱々しい声が響いた

「……エリシア……?」

エリシアは、
涙を拭いながら振り返った。

そこには――
寝台に横たわるはずの第一王子アルベルトが、
扉の向こうから彼女を見つめていた。

「……来て……くれたんだね……」

その声は、
彼女の心の奥に深く響いた。

そして――
運命が静かに動き始める。

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