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第27話
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庭園の奥、
陽光が降り注ぐベンチ。
エリシアとアルベルトは、
並んで座っていた。
風がそよぎ、
花の香りがふわりと漂う。
精霊たちは、
二人の周りを静かに舞っている。
――エリシア。
――殿下、言おうとしてる。
――大事な言葉。
エリシアの胸が高鳴った。
(……殿下……
何を……言おうとしているの……?)
アルベルトは、
少し緊張したように息を吸い込んだ。
「エリシア……
君に……伝えたいことがある」
エリシアは、
胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
「……殿下……?」
アルベルトは、
ゆっくりと彼女の手に触れた。
その指先は、
微かに震えている。
(……殿下が……震えてる……
こんなこと、今まで……)
アルベルトは、
まっすぐにエリシアを見つめた。
「エリシア。
君は……僕にとって――」
その瞬間。
バンッ!!
庭園の入口の扉が勢いよく開いた。
エリシアは驚いて振り返る。
アルベルトの表情が、
一瞬で険しくなる。
精霊たちが、
ざわざわと騒ぎ始めた。
――嫌な気配。
――来た。
――邪魔。
庭園に飛び込んできたのは――
レオンハルトだった。
顔は怒りと焦りで歪み、
息は荒い。
「エリシア!!
ここにいたのか!!」
エリシアの胸が凍りついた。
(……レオン様……)
アルベルトは、
エリシアの手をそっと握り直した。
その手は、
“守る”という意思を帯びている。
「……レオン。
ここは私の庭園だ。
勝手に入るな」
レオンは、
兄の言葉を無視してエリシアに近づこうとする。
「エリシア!!
お前、なんで兄上と……
なんでそんな顔で……!」
エリシアは、
思わず一歩後ずさった。
精霊たちが、
彼女の前にふわりと集まる。
――エリシア。
――下がって。
――守る。
アルベルトは、
レオンの前に立ちはだかった。
「レオン。
エリシアに近づくな」
レオンは怒鳴る。
「兄上こそ!!
エリシアは俺の――」
アルベルトの瞳が鋭く光った。
「“お前が捨てた”んだろう?」
レオンの言葉が止まる。
庭園の空気が、
一瞬で凍りついた。
エリシアの胸が痛む。
(……そう……
わたしは……捨てられた……)
アルベルトは、
静かに、しかし強く言った。
「エリシアは今、
“私の側近”であり……
“私が守るべき人”だ」
レオンの顔が歪む。
「……兄上……
本気で……?」
アルベルトは、
エリシアの手をそっと握りながら答えた。
「本気だ」
エリシアの胸が震えた。
(……殿下……)
精霊たちが、
祝福するように光を散らす。
――エリシア。
――殿下は本気。
――あなたを守る。
レオンは、
その場に立ち尽くした。
エリシアは、
アルベルトの隣で守られている。
自分が捨てた少女が、
兄の隣で幸せそうにしている。
その現実が、
レオンの胸を深く刺した。
(……俺は……
本当に……
取り返しのつかないことを……)
だが――
もう遅い。
エリシアは、
レオンの世界には戻らない。
レオンが去ったあと、
庭園には静けさが戻った。
エリシアは、
胸に手を当てて息を整える。
アルベルトは、
少し申し訳なさそうに微笑んだ。
「……ごめんね、エリシア。
さっきの続きは……
また今度、必ず話すよ」
エリシアの胸が跳ねた。
(……殿下……
“必ず”って……)
精霊たちが、
嬉しそうに舞った。
――エリシア。
――次こそ、言うよ。
――大事な言葉。
二人の距離は、
確かにまた一歩近づいた。
陽光が降り注ぐベンチ。
エリシアとアルベルトは、
並んで座っていた。
風がそよぎ、
花の香りがふわりと漂う。
精霊たちは、
二人の周りを静かに舞っている。
――エリシア。
――殿下、言おうとしてる。
――大事な言葉。
エリシアの胸が高鳴った。
(……殿下……
何を……言おうとしているの……?)
アルベルトは、
少し緊張したように息を吸い込んだ。
「エリシア……
君に……伝えたいことがある」
エリシアは、
胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
「……殿下……?」
アルベルトは、
ゆっくりと彼女の手に触れた。
その指先は、
微かに震えている。
(……殿下が……震えてる……
こんなこと、今まで……)
アルベルトは、
まっすぐにエリシアを見つめた。
「エリシア。
君は……僕にとって――」
その瞬間。
バンッ!!
庭園の入口の扉が勢いよく開いた。
エリシアは驚いて振り返る。
アルベルトの表情が、
一瞬で険しくなる。
精霊たちが、
ざわざわと騒ぎ始めた。
――嫌な気配。
――来た。
――邪魔。
庭園に飛び込んできたのは――
レオンハルトだった。
顔は怒りと焦りで歪み、
息は荒い。
「エリシア!!
ここにいたのか!!」
エリシアの胸が凍りついた。
(……レオン様……)
アルベルトは、
エリシアの手をそっと握り直した。
その手は、
“守る”という意思を帯びている。
「……レオン。
ここは私の庭園だ。
勝手に入るな」
レオンは、
兄の言葉を無視してエリシアに近づこうとする。
「エリシア!!
お前、なんで兄上と……
なんでそんな顔で……!」
エリシアは、
思わず一歩後ずさった。
精霊たちが、
彼女の前にふわりと集まる。
――エリシア。
――下がって。
――守る。
アルベルトは、
レオンの前に立ちはだかった。
「レオン。
エリシアに近づくな」
レオンは怒鳴る。
「兄上こそ!!
エリシアは俺の――」
アルベルトの瞳が鋭く光った。
「“お前が捨てた”んだろう?」
レオンの言葉が止まる。
庭園の空気が、
一瞬で凍りついた。
エリシアの胸が痛む。
(……そう……
わたしは……捨てられた……)
アルベルトは、
静かに、しかし強く言った。
「エリシアは今、
“私の側近”であり……
“私が守るべき人”だ」
レオンの顔が歪む。
「……兄上……
本気で……?」
アルベルトは、
エリシアの手をそっと握りながら答えた。
「本気だ」
エリシアの胸が震えた。
(……殿下……)
精霊たちが、
祝福するように光を散らす。
――エリシア。
――殿下は本気。
――あなたを守る。
レオンは、
その場に立ち尽くした。
エリシアは、
アルベルトの隣で守られている。
自分が捨てた少女が、
兄の隣で幸せそうにしている。
その現実が、
レオンの胸を深く刺した。
(……俺は……
本当に……
取り返しのつかないことを……)
だが――
もう遅い。
エリシアは、
レオンの世界には戻らない。
レオンが去ったあと、
庭園には静けさが戻った。
エリシアは、
胸に手を当てて息を整える。
アルベルトは、
少し申し訳なさそうに微笑んだ。
「……ごめんね、エリシア。
さっきの続きは……
また今度、必ず話すよ」
エリシアの胸が跳ねた。
(……殿下……
“必ず”って……)
精霊たちが、
嬉しそうに舞った。
――エリシア。
――次こそ、言うよ。
――大事な言葉。
二人の距離は、
確かにまた一歩近づいた。
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