【完結】捨てられた令嬢は、国一の美女で精霊の姫でした。

丸顔ちゃん。

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第31話

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任命式まで、あと三日。

第一王子専属区画は、
いつもより少しだけ慌ただしかった。

侍従たちが行き交い、
衣装係が布を抱えて走り、
魔術師たちが魔力の流れを確認している。

その中心に――
エリシアがいた。

(……わたしが……
 任命式に……?
 本当に……?)

胸がそわそわと落ち着かない。

精霊たちが、
彼女の周りをふわりと舞って囁く。

――エリシア。

――大丈夫。

――あなたは殿下の光。

――堂々としていい。

エリシアは、
胸に手を当てて深呼吸した。



コン、コン

扉がノックされる。

「エリシア様。
 衣装の採寸に参りました」

エリシアは驚いて立ち上がった。

「えっ……わ、わたしの……衣装……?」

衣装係は微笑んだ。

「はい。
 任命式は王城の公式行事ですので、
 第一王子殿下の側近として相応しい装いを」

エリシアは、
胸がきゅっと締めつけられた。

(……わたしが……
 殿下の隣に立つための……衣装……)

精霊たちが嬉しそうに舞う。

――楽しみ。

――きっと似合う。

――殿下も喜ぶ。



衣装室に案内されると、
そこには数種類のドレスが並んでいた。

白、淡い金、薄桃色、
そして深い青。

どれも、
光を受けて柔らかく輝いている。

エリシアは思わず息を呑んだ。

「……こんな……
 綺麗な服……」

衣装係が微笑む。

「すべて、第一王子殿下が選ばれたものです」

エリシアの心臓が跳ねた。

「……殿下が……?」

(……殿下が……
 わたしのために……
 衣装を……?)

頬が熱くなる。

精霊たちが、
ひそひそと囁く。

――殿下、真剣。

――エリシアに似合う色、全部考えた。

――特に“あれ”は、殿下の本命。

エリシアは、
どれのことか分からず戸惑った。



衣装係が、
一着のドレスをそっと持ち上げた。

それは――
淡い金と白を基調にした、
光を纏うようなドレス。

布は薄く、
動くたびに光が流れるように揺れる。

胸元には、
精霊の羽を模した繊細な刺繍。

エリシアは息を呑んだ。

「……これ……
 すごく……綺麗……」

衣装係は微笑んだ。

「こちらが、
 第一王子殿下が“最も似合う”と仰った衣装です」

エリシアの胸が震えた。

(……殿下……
 わたしに……
 こんな……)

精霊たちが、
嬉しそうに舞い上がる。

――これ。

――殿下の“想い”が入ってる。

――エリシアに着てほしい。

エリシアは、
胸が熱くなるのを感じた。




そのとき――
衣装室の扉が静かに開いた。

「エリシア。
 様子を見に来たよ」

アルベルトだ。

エリシアは慌てて振り返る。

「で、殿下……!」

アルベルトは、
エリシアの手に持たれたドレスを見て微笑んだ。

「それ……
 君に着てほしいんだ」

エリシアの頬が熱くなる。

「……わたしに……?」

アルベルトは、
少し照れたように言った。

「君は……
 光のような人だから。
 その光を……
 皆にも見てほしい」

エリシアの胸が震えた。

(……殿下……
 そんなふうに……
 わたしを……)

精霊たちが、
祝福するように光を散らす。

――エリシア。

――殿下は本気。

――あなたを“誇りに思っている”。

エリシアは、
涙がこぼれそうになるのを必死にこらえた。

「……殿下……
 ありがとうございます……
 大切に……着させていただきます……」

アルベルトは、
優しく微笑んだ。

「エリシア。
 任命式は……
 君を皆に紹介する日だ。
 君が……
 私の大切な側近であると示す日だ」

エリシアの胸が熱くなる。

(……わたしの居場所は……
 ここ……)




その頃――
レオンは自室で荒れ狂っていた。

「任命式……?
 衣装……?
 エリシアが……
 兄上の隣に立つ……?」

机を叩き、
椅子を蹴り飛ばし、
息を荒げる。

(……エリシア……
 お前……
 俺を捨てて……
 兄上を選んだのか……?)

胸の奥が、
焼けるように痛む。

だが――
もう遅い。

エリシアは、
アルベルトの光の中にいる。

レオンの世界は、
静かに崩れ続けていた。



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