【完結】捨てられた令嬢は、国一の美女で精霊の姫でした。

丸顔ちゃん。

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第40話

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黒い魔力が王城を覆い始めた頃――
アルベルトは、
その中心へ向かうために廊下を駆けていた。

だが、
胸の奥がひどくざわついていた。

肺が圧迫されるような息苦しさ。

(……この感覚……
 まるで“誰かの呼吸”が乱れているみたいだ……)

精霊たちが、
アルベルトの周りを飛びながら囁く。

――殿下。

――“あの人”の魔力が、呼吸を奪ってる。

――エリシアの肺も苦しんでる。

アルベルトの表情が険しくなる。

(……エリシア……
 君も苦しいのか……?
 なら、急がなければ)

黒い霧が濃くなるほど、
空気は重く、
肺に入る空気が冷たくなる。

呼吸が浅くなる。

だが――
アルベルトは止まらない。

(……君を守るためなら……
 この肺が潰れようと構わない)


黒い魔力が渦巻く部屋の中心で、
レオンはゆっくりと顔を上げた。

その瞳は狂気に染まり、
呼吸は荒く、
肺が黒い魔力に侵食されているかのようだった。

「……エリシア……
 お前の呼吸も……
 俺が取り戻す……
 俺の隣で……息をしていろ……」

黒い魔力が、
レオンの肺から漏れ出すように広がっていく。

精霊たちが震える。

――危ない。

――このままじゃ、王城の“呼吸”が止まる。

――殿下、早く。



アルベルトが黒い霧を切り裂いて部屋に入ると、
肺に冷たい空気が突き刺さるような痛みが走った。

「……レオン……!」

レオンはゆっくりと振り返る。

その呼吸は荒く、
肺が黒い魔力に侵されているように見えた。

「兄上……
 エリシアを……返せ……
 あいつは……俺の……呼吸なんだ……
 俺がいないと……生きられない……!」

アルベルトは、
その言葉に怒りではなく“哀しみ”を覚えた。

「レオン……
 君の呼吸は乱れている。
 肺が悲鳴を上げている。
 禁術に飲まれているんだ」

レオンは叫ぶ。

「違う!!
 俺は……
 エリシアがいないと……
 息ができないんだ!!」

黒い魔力が爆ぜ、
部屋の空気が歪む。

アルベルトは、
胸に手を当てて息を整えながら言った。

「レオン。
 エリシアは……
 君の“呼吸”じゃない。
 彼女は……
 自分の意志で生きている」

レオンの瞳が揺れる。

「……兄上……
 エリシアを……
 奪ったのか……?」

アルベルトは、
静かに首を振った。

「奪っていない。
 彼女が……
 自分の肺で呼吸し、
 自分の足で選んだんだ。
 “私の隣”を」

レオンの肺が、
黒い魔力とともに震えた。

「……嘘だ……
 嘘だ……
 エリシア……
 お前は……俺の……」

黒い魔力が暴走し始める。

アルベルトは、
レオンに向かって一歩踏み出した。

「レオン。
 君を止める。
 エリシアを守るために」

兄弟の対峙が――
ついに始まった。


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