妹に婚約者を奪われた冷たい令嬢は、辺境伯の溺愛で本当の美しさを取り戻す

丸顔ちゃん。

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第1話「妹に初めて物を奪われた日」

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「お姉様、そのリボンもほしいの。ちょうだい?」

ミレイユがそう言ったのは、まだ私たちが五歳と三歳だった頃。
母が選んでくれた、淡い桃色のリボン。
私の髪に結ばれたそれを、妹はじっと見つめていた。

「……どうぞ」

私は、何も考えずに差し出した。
その瞬間、母は微笑みながら言った。

「リディアは優しいお姉さんね。妹のために譲ってあげるなんて偉いわ」

それが、すべての始まりだった。

それからというもの、ミレイユは私のものを欲しがった。
ドレスも、髪飾りも、絵本も、玩具も。
そして私は、何も言わずに譲った。

「姉だから我慢しなさい」
「妹はまだ幼いのよ」
「リディアは冷静でしっかりしてるから安心ね」

そう言われるたびに、私は感情を飲み込んだ。
泣くことも、怒ることも、笑うことも、やめた。

やがて、周囲は私をこう呼ぶようになった。

――冷たい令嬢。

それでも、私は皇太妃教育だけは完璧にこなした。
礼儀作法、歴史、魔法、政治、舞踏。
誰よりも努力し、誰よりも成果を出した。

けれど、誰も褒めてはくれなかった。
「当然でしょ」「リディアならできるわよ」
その言葉だけが、私の努力を塗り潰していった。

そんな日々の中で、ただ一つだけ希望があった。
皇子レオンハルト殿下との婚約。

それは、私が“誰かに選ばれる”初めての瞬間になるはずだった。

けれど――

「お姉様の婚約者、わたしにちょうだい?」

甘えた声でミレイユが言ったその瞬間、
世界が音もなく崩れた。

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