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第2話「姉だから我慢しなさい」
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「お姉様のドレス、可愛い。わたしも着たいの。ねえ、ちょうだい?」
ミレイユがそう言ったのは、舞踏会の前夜だった。
母が選んでくれた、淡い水色のドレス。
胸元には小さな銀の刺繍が施されていて、
リディアの銀髪によく映えると、侍女が微笑んでいた。
けれど、ミレイユがそのドレスを欲しがった瞬間、
継母は何の迷いもなく言った。
「リディア、妹に譲ってあげなさい。姉でしょう?」
「……はい」
リディアは何も言わずに頷いた。
侍女が目を伏せ、ドレスをミレイユの部屋へと運んでいく。
代わりに渡されたのは、
袖のほつれた、地味な灰色のドレスだった。
「リディアは顔立ちが整っているから、地味な服でも十分よ」
「ミレイユは可愛いけれど、華やかさが必要なの」
継母の言葉に、誰も異を唱えなかった。
舞踏会の夜。
ミレイユは水色のドレスを身にまとい、甘えた声で笑っていた。
リディアは灰色のドレスで壁際に立ち、
誰にも話しかけられず、誰にも見られなかった。
「冷たい令嬢だな」
「笑わないし、近寄りがたい」
「妹の方がずっと可愛い」
そんな声が、背後から聞こえてくる。
リディアは、ただ静かに目を伏せた。
心の奥で、何かが少しずつ削られていく音がした。
けれど、それでも――
彼女は泣かなかった。
怒らなかった。
笑わなかった。
それが、リディア・フェルナンデスという令嬢の“正しさ”だった。
ミレイユがそう言ったのは、舞踏会の前夜だった。
母が選んでくれた、淡い水色のドレス。
胸元には小さな銀の刺繍が施されていて、
リディアの銀髪によく映えると、侍女が微笑んでいた。
けれど、ミレイユがそのドレスを欲しがった瞬間、
継母は何の迷いもなく言った。
「リディア、妹に譲ってあげなさい。姉でしょう?」
「……はい」
リディアは何も言わずに頷いた。
侍女が目を伏せ、ドレスをミレイユの部屋へと運んでいく。
代わりに渡されたのは、
袖のほつれた、地味な灰色のドレスだった。
「リディアは顔立ちが整っているから、地味な服でも十分よ」
「ミレイユは可愛いけれど、華やかさが必要なの」
継母の言葉に、誰も異を唱えなかった。
舞踏会の夜。
ミレイユは水色のドレスを身にまとい、甘えた声で笑っていた。
リディアは灰色のドレスで壁際に立ち、
誰にも話しかけられず、誰にも見られなかった。
「冷たい令嬢だな」
「笑わないし、近寄りがたい」
「妹の方がずっと可愛い」
そんな声が、背後から聞こえてくる。
リディアは、ただ静かに目を伏せた。
心の奥で、何かが少しずつ削られていく音がした。
けれど、それでも――
彼女は泣かなかった。
怒らなかった。
笑わなかった。
それが、リディア・フェルナンデスという令嬢の“正しさ”だった。
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