妹に婚約者を奪われた冷たい令嬢は、辺境伯の溺愛で本当の美しさを取り戻す

丸顔ちゃん。

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第3話「完璧であるほど、誰にも見てもらえない」

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皇太妃教育が始まったのは、私が七歳の頃だった。

「リディア様は飲み込みが早いですね」
「姿勢も所作も美しい。将来が楽しみです」

教師たちはそう言ってくれた。
けれど、その言葉が父や継母に届くことはなかった。

「当然でしょう。リディアは“できて当たり前”なのよ」
「ミレイユは可愛いから、少しくらいできなくても大丈夫よ」

褒められるのは、いつも妹だった。
できなくても、努力しなくても、甘えれば許される。

私は、ただ静かに机に向かい、
歴史書を読み、魔法の基礎を学び、舞踏のステップを覚えた。

完璧であるほど、
誰も私を見なくなっていく気がした。





ある日の授業。
舞踏教師が私とミレイユを並べて言った。

「リディア様は素晴らしい。皇太妃として申し分ありません。
 ミレイユ様は……その、まずは姿勢から直しましょう」

ミレイユは唇を尖らせ、私を睨んだ。

「お姉様ばっかり褒められて、ずるい」

「……私は、ただ教わった通りにしているだけよ」

「そういうところが冷たいのよ!」

その言葉に、胸が少しだけ痛んだ。
けれど、表情は変わらない。

教師が慌てて言う。

「ミレイユ様、リディア様は冷たいのではなく――」

「いいのです。私は、冷たいと言われても構いません」

本心ではなかった。
でも、そう言うしかなかった。

感情を出せば、また「姉だから我慢しなさい」と言われる。
泣けば「みっともない」と叱られる。

だから私は、
完璧な令嬢でいることだけを選んだ。




その日の夜、廊下で侍女たちの声が聞こえた。

「リディア様って、本当に冷たいわよね」
「笑っているところ、見たことないもの」
「ミレイユ様の方がずっと可愛いわ」

私は足を止めた。
けれど、何も言わずに通り過ぎた。

胸の奥が、またひとつ削られる音がした。

それでも、私は泣かなかった。

泣き方を、もう忘れてしまっていた。
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