妹に婚約者を奪われた冷たい令嬢は、辺境伯の溺愛で本当の美しさを取り戻す

丸顔ちゃん。

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第4話「皇子との初対面」

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皇太妃教育が始まって三年。
十歳になった私は、ついに皇子レオンハルト殿下との謁見の日を迎えた。

「リディア、失礼のないようにね」
「ミレイユは連れて行けないから、あなたがしっかりしなさい」

継母の言葉は、いつも通りだった。
褒めるでもなく、期待するでもなく、ただ“できて当然”という口調。

私は静かに頷き、鏡の前に立つ。

銀髪は丁寧にまとめられ、
地味だが清潔な白いドレスを身にまとっていた。

(大丈夫。私は、間違えない)

そう自分に言い聞かせ、皇宮へ向かった。




謁見の間は、光が差し込む美しい場所だった。
赤い絨毯の先に、皇子が立っている。

金の髪に、澄んだ青い瞳。
まだ幼さの残る顔立ちだが、どこか誇り高さを感じさせた。

「フェルナンデス家の令嬢、リディアと申します。
 本日はお目にかかれて光栄に存じます」

完璧な礼をすると、皇子は少し驚いたように目を見開いた。

「……とても落ち着いているんだな。僕より年下なのに」

「はい。皇太妃教育を受けておりますので」

「そうか。……でも、笑わないんだな」

その言葉に、胸が少しだけ痛んだ。

笑わないのではない。
笑い方を忘れただけ。

けれど、そんなことは言えない。

「申し訳ございません。無礼がありましたらお許しください」

「いや、怒っているわけじゃない。ただ……冷たいのかと思って」

冷たい。

また、その言葉。

私は静かに首を振った。

「そのようなつもりはございません」

皇子はしばらく私を見つめ、
やがて少しだけ柔らかい声で言った。

「……努力家なんだな、君は」

その一言が、胸の奥に小さな灯をともした。

誰かに“努力”を見てもらえたのは、初めてだった。




帰りの馬車の中。
継母は私の報告を聞くと、鼻で笑った。

「殿下はミレイユの方が好みでしょうね。
 あなたは冷たくて可愛げがないもの」

その言葉に、灯ったばかりの光が、また静かに消えていく。

私はただ、窓の外を見つめた。

(……殿下は、優しい方だった)

そう思ったことだけが、心の奥に残った。

それが、後にあれほど深い後悔へと変わるとは、
この時の私はまだ知らなかった。
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