妹に婚約者を奪われた冷たい令嬢は、辺境伯の溺愛で本当の美しさを取り戻す

丸顔ちゃん。

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第7話「誤解が形になる日」

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皇宮での授業が終わった帰り道。
私は書類を抱えて廊下を歩いていた。

その時――
角を曲がった先から、ミレイユの泣き声が聞こえた。

「殿下ぁ……お姉様が、わたしのこと怒ったんですの……」

(……怒った?)

私は驚いて足を止めた。
怒った覚えなど、一度もない。

皇子の声が続く。

「リディアが? 本当に?」

「ええ……“勉強しなさい”って、怖い顔で……
 わたし、怖くて……」

ミレイユは袖で目元を押さえ、震える声を作っていた。

(そんなこと……言っていない)

私はただ、授業中に落としたペンを拾って渡しただけだ。
その時、無表情だったのは確かだが――
怒ってなどいない。

皇子は困ったように息をついた。

「リディアは……本当に感情が分からないな。
 君を怖がらせるつもりはなかったのだろうが……」

ミレイユは小さく首を振る。

「でも……お姉様、いつも冷たいですもの……」

皇子は沈黙した。

その沈黙が、
私の胸に深く突き刺さった。



私はそっと姿を現した。

「殿下、ミレイユ。
 誤解があるようですが……私は怒っていません」

ミレイユは驚いたふりをして、
ぱっと皇子の背に隠れた。

「ほら……! また怖い顔……!」

皇子は私を見つめ、
少しだけ眉を寄せた。

「リディア……君は本当に、表情が硬い。
 悪気がないのは分かるが……誤解を招く」

誤解。

その言葉が、胸の奥で重く響いた。

「……申し訳ございません」

それしか言えなかった。

ミレイユは皇子の腕にしがみつき、
甘えた声で囁く。

「殿下、わたし……殿下とお話している方が楽しいですわ……」

皇子は優しく微笑んだ。

「そうか。なら、また庭園で話そう」

その光景を見ながら、
私は静かに頭を下げた。

(……私は、必要とされていない)

完璧であるほど、
誰にも見てもらえない。

努力すればするほど、
“冷たい”という烙印だけが深くなる。

胸の奥が、またひとつ崩れた。

それでも私は泣かなかった。

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