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第8話「揺らぎ始めた婚約」
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皇宮では、季節の式典が開かれていた。
各家の令嬢が招かれ、皇子の隣に立つ“未来の皇太子妃候補”として、
立ち居振る舞いを披露する大切な場。
私は、完璧に準備していた。
姿勢も、礼も、言葉遣いも、すべて。
けれど――
事件は、ほんの一瞬のことで起きた。
式典の最中、
ミレイユがわざと私のドレスの裾を踏んだ。
「っ……!」
バランスを崩し、私は前に倒れかける。
手に持っていた銀の盆が揺れ、
載せていた花瓶が――
カランッ
乾いた音を立てて床に落ちた。
会場が静まり返る。
(……違う。私は……)
ミレイユはすぐに泣き真似を始めた。
「お姉様……どうしてそんなに怒ってるの……?
わたし、何もしていないのに……」
(怒ってなんていない……!)
皇子が駆け寄ってきた。
「リディア、大丈夫か? ……ミレイユ、怖かっただろう」
ミレイユは皇子の胸にしがみつき、震える声を作る。
「お姉様……いつも怖い顔で……
今日も、わたしを睨んで……」
(睨んでなんて……)
私は必死に言葉を探した。
「殿下、私は――」
皇子は静かに首を振った。
「リディア……君は本当に、表情が硬い。
誤解を招くのは良くない」
誤解。
また、その言葉。
周囲の令嬢たちがひそひそと囁く。
「やっぱり冷たい令嬢なのね」
「妹の方が殿下にふさわしいわ」
「あの子、全然笑わないもの」
胸の奥が、ひどく痛んだ。
(私は……何もしていないのに)
式典後。
控室で、継母が冷たく言い放つ。
「リディア、あなたは本当に不器用ね。
ミレイユを怖がらせるなんて、皇太子妃として失格よ」
「……私は、そんなつもりは――」
「言い訳は聞きたくないわ」
ミレイユは涙を拭いながら、
勝ち誇ったように微笑んだ。
「お姉様、殿下はわたしのこと守ってくださったの。
お姉様より、わたしの方が殿下にふさわしいですわよね?」
その言葉に、
胸の奥で何かが静かに崩れた。
(……殿下は、もう私を見ていない)
それでも私は泣かなかった。
泣き方を、もう忘れてしまっていたから。
各家の令嬢が招かれ、皇子の隣に立つ“未来の皇太子妃候補”として、
立ち居振る舞いを披露する大切な場。
私は、完璧に準備していた。
姿勢も、礼も、言葉遣いも、すべて。
けれど――
事件は、ほんの一瞬のことで起きた。
式典の最中、
ミレイユがわざと私のドレスの裾を踏んだ。
「っ……!」
バランスを崩し、私は前に倒れかける。
手に持っていた銀の盆が揺れ、
載せていた花瓶が――
カランッ
乾いた音を立てて床に落ちた。
会場が静まり返る。
(……違う。私は……)
ミレイユはすぐに泣き真似を始めた。
「お姉様……どうしてそんなに怒ってるの……?
わたし、何もしていないのに……」
(怒ってなんていない……!)
皇子が駆け寄ってきた。
「リディア、大丈夫か? ……ミレイユ、怖かっただろう」
ミレイユは皇子の胸にしがみつき、震える声を作る。
「お姉様……いつも怖い顔で……
今日も、わたしを睨んで……」
(睨んでなんて……)
私は必死に言葉を探した。
「殿下、私は――」
皇子は静かに首を振った。
「リディア……君は本当に、表情が硬い。
誤解を招くのは良くない」
誤解。
また、その言葉。
周囲の令嬢たちがひそひそと囁く。
「やっぱり冷たい令嬢なのね」
「妹の方が殿下にふさわしいわ」
「あの子、全然笑わないもの」
胸の奥が、ひどく痛んだ。
(私は……何もしていないのに)
式典後。
控室で、継母が冷たく言い放つ。
「リディア、あなたは本当に不器用ね。
ミレイユを怖がらせるなんて、皇太子妃として失格よ」
「……私は、そんなつもりは――」
「言い訳は聞きたくないわ」
ミレイユは涙を拭いながら、
勝ち誇ったように微笑んだ。
「お姉様、殿下はわたしのこと守ってくださったの。
お姉様より、わたしの方が殿下にふさわしいですわよね?」
その言葉に、
胸の奥で何かが静かに崩れた。
(……殿下は、もう私を見ていない)
それでも私は泣かなかった。
泣き方を、もう忘れてしまっていたから。
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