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第11話「二人きりの時間」
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皇宮に着くと、侍従が私に頭を下げた。
「リディア様、本日の授業は……殿下のご都合により、
“ミレイユ様のみ”の参加となっております」
胸が、ひどく痛んだ。
(……私だけ、外された?)
「殿下は……どちらに?」
侍従は一瞬だけ言葉を濁し、
やがて小さく答えた。
「……庭園にて、ミレイユ様とご歓談中です」
歓談。
授業ではなく、二人きりの時間。
私は静かに礼を言い、
庭園へ向かった。
白薔薇のアーチの向こう。
皇子とミレイユが並んで座っていた。
ミレイユは皇子の肩に軽く寄りかかり、
甘えた声で笑っている。
「殿下~、このお花、とても綺麗ですわね」
「ああ。君に似合っている」
その言葉に、
ミレイユは嬉しそうに頬を染めた。
(……殿下が、そんな顔をするなんて)
私は静かに近づき、声をかけた。
「殿下。授業のお時間かと存じますが……」
皇子は少しだけ驚いたように振り返り、
すぐに視線をそらした。
「リディア……今日は、授業はいいんだ。
ミレイユと話すことがあって」
ミレイユがわざとらしく私を見上げる。
「お姉様、殿下と大事なお話をしているのですわ。
邪魔しないでくださいませ」
邪魔。
その言葉が胸に刺さる。
「……失礼いたしました」
私は頭を下げ、踵を返した。
背後から、ミレイユの甘い声が聞こえる。
「殿下~、お姉様って本当に冷たいですわよね。
わたし、怖くて……」
皇子のため息が続く。
「……リディアは悪気がないんだろうが……
本当に、分かりにくい」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥が静かに崩れた。
廊下に戻ると、侍女たちがひそひそと話していた。
「殿下、最近はミレイユ様ばかりよね」
「リディア様は冷たいもの。殿下も嫌になったのよ」
「婚約、どうなるのかしら」
私は足を止めた。
(……噂になっている)
胸が冷たくなる。
(殿下は……私を選ばないのだろうか)
その日の帰りの馬車。
ミレイユは嬉しそうに言った。
「殿下、わたしのこと“もっと知りたい”って。
お姉様より、わたしの方が殿下にふさわしいですわよね?」
継母は満足げに頷く。
「ええ、ミレイユ。あなたこそ殿下に選ばれるべき娘よ」
父も言った。
「リディア、お前は……殿下にとって退屈なのだろう」
私は静かに答えた。
「……はい」
胸の奥で、
何かが完全に折れた。
それでも私は泣かなかった。
泣き方を、もう忘れてしまっていたから。
「リディア様、本日の授業は……殿下のご都合により、
“ミレイユ様のみ”の参加となっております」
胸が、ひどく痛んだ。
(……私だけ、外された?)
「殿下は……どちらに?」
侍従は一瞬だけ言葉を濁し、
やがて小さく答えた。
「……庭園にて、ミレイユ様とご歓談中です」
歓談。
授業ではなく、二人きりの時間。
私は静かに礼を言い、
庭園へ向かった。
白薔薇のアーチの向こう。
皇子とミレイユが並んで座っていた。
ミレイユは皇子の肩に軽く寄りかかり、
甘えた声で笑っている。
「殿下~、このお花、とても綺麗ですわね」
「ああ。君に似合っている」
その言葉に、
ミレイユは嬉しそうに頬を染めた。
(……殿下が、そんな顔をするなんて)
私は静かに近づき、声をかけた。
「殿下。授業のお時間かと存じますが……」
皇子は少しだけ驚いたように振り返り、
すぐに視線をそらした。
「リディア……今日は、授業はいいんだ。
ミレイユと話すことがあって」
ミレイユがわざとらしく私を見上げる。
「お姉様、殿下と大事なお話をしているのですわ。
邪魔しないでくださいませ」
邪魔。
その言葉が胸に刺さる。
「……失礼いたしました」
私は頭を下げ、踵を返した。
背後から、ミレイユの甘い声が聞こえる。
「殿下~、お姉様って本当に冷たいですわよね。
わたし、怖くて……」
皇子のため息が続く。
「……リディアは悪気がないんだろうが……
本当に、分かりにくい」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥が静かに崩れた。
廊下に戻ると、侍女たちがひそひそと話していた。
「殿下、最近はミレイユ様ばかりよね」
「リディア様は冷たいもの。殿下も嫌になったのよ」
「婚約、どうなるのかしら」
私は足を止めた。
(……噂になっている)
胸が冷たくなる。
(殿下は……私を選ばないのだろうか)
その日の帰りの馬車。
ミレイユは嬉しそうに言った。
「殿下、わたしのこと“もっと知りたい”って。
お姉様より、わたしの方が殿下にふさわしいですわよね?」
継母は満足げに頷く。
「ええ、ミレイユ。あなたこそ殿下に選ばれるべき娘よ」
父も言った。
「リディア、お前は……殿下にとって退屈なのだろう」
私は静かに答えた。
「……はい」
胸の奥で、
何かが完全に折れた。
それでも私は泣かなかった。
泣き方を、もう忘れてしまっていたから。
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