妹に婚約者を奪われた冷たい令嬢は、辺境伯の溺愛で本当の美しさを取り戻す

丸顔ちゃん。

文字の大きさ
10 / 22

第10話「距離を置かれる理由」

しおりを挟む
皇宮での授業に向かう馬車の中。
私は、胸の奥に小さな不安を抱えていた。

(……殿下は、今日も私を見てくださるだろうか)

そんな淡い期待は、
皇宮に着いた瞬間、静かに砕けた。

授業室の扉を開けると、
皇子とミレイユが並んで座っていた。

ミレイユは皇子の腕に軽く触れ、
嬉しそうに笑っている。

「殿下~、今日もよろしくお願いしますわ」

皇子は穏やかに微笑んだ。

「ミレイユ、今日も頑張ろう」

その声は、
かつて私に向けられていたものと同じだった。

(……私の席は)

私は静かに自分の席に向かう。
皇子はちらりとこちらを見たが、
すぐに視線をそらした。

「リディア、今日は……その、ミレイユの補助を頼みたい」

補助。

私は思わず足を止めた。

「……私ではなく、ミレイユ様が殿下の隣に?」

皇子は少しだけ困ったように眉を寄せた。

「君は優秀だ。
 でも……君の説明は難しい。
 ミレイユの方が、僕には分かりやすい」

(……私は、殿下の隣に立つ資格がないということ?)

胸の奥が、ひどく痛んだ。



授業が始まると、
皇子はミレイユに丁寧に教え続けた。

「ここはこうだよ、ミレイユ」
「まあ、殿下……ありがとうございますわ」

私は少し離れた席で、
ただ静かにノートを取るだけ。

教師が私に声をかける。

「リディア様、殿下の隣に座らなくてよろしいのですか?」

「……殿下のご意向ですので」

教師は一瞬だけ驚いた顔をしたが、
すぐに何も言わなくなった。

その沈黙が、
私の胸に深く突き刺さった。





授業が終わった後。
皇子が私に声をかけてきた。

「リディア……今日のこと、気にしているのか?」

「いいえ。殿下のお考えに従うだけです」

「……君は本当に、何を考えているのか分からないな」

また、その言葉。

私は静かに答える。

「申し訳ございません。
 私は……感情を表に出すのが得意ではなくて」

皇子は視線をそらした。

「ミレイユは素直だ。
 僕には、そういう方が分かりやすい」

(私は……分かりにくいから、選ばれない)

胸の奥が、静かに冷えていく。

皇子は続けた。

「……リディア。
 僕は、君との婚約について……少し考えている」

その言葉に、
世界が一瞬で静まり返った。

(……婚約について、考えている?)

皇子は言葉を選ぶように続ける。

「君は優秀だ。
 でも……皇太子妃として必要なのは、
 “国民に愛される明るさ”だと思うんだ」

(私は……その条件を満たしていない)

「……殿下は、私との婚約を……」

皇子は答えなかった。

ただ、沈黙がすべてを物語っていた。

帰りの馬車の中。
私は静かに目を閉じた。

(……私は、殿下にとって“ふさわしくない”のだ)

胸の奥で、
何かが静かに崩れ落ちた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...