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第10話「距離を置かれる理由」
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皇宮での授業に向かう馬車の中。
私は、胸の奥に小さな不安を抱えていた。
(……殿下は、今日も私を見てくださるだろうか)
そんな淡い期待は、
皇宮に着いた瞬間、静かに砕けた。
授業室の扉を開けると、
皇子とミレイユが並んで座っていた。
ミレイユは皇子の腕に軽く触れ、
嬉しそうに笑っている。
「殿下~、今日もよろしくお願いしますわ」
皇子は穏やかに微笑んだ。
「ミレイユ、今日も頑張ろう」
その声は、
かつて私に向けられていたものと同じだった。
(……私の席は)
私は静かに自分の席に向かう。
皇子はちらりとこちらを見たが、
すぐに視線をそらした。
「リディア、今日は……その、ミレイユの補助を頼みたい」
補助。
私は思わず足を止めた。
「……私ではなく、ミレイユ様が殿下の隣に?」
皇子は少しだけ困ったように眉を寄せた。
「君は優秀だ。
でも……君の説明は難しい。
ミレイユの方が、僕には分かりやすい」
(……私は、殿下の隣に立つ資格がないということ?)
胸の奥が、ひどく痛んだ。
授業が始まると、
皇子はミレイユに丁寧に教え続けた。
「ここはこうだよ、ミレイユ」
「まあ、殿下……ありがとうございますわ」
私は少し離れた席で、
ただ静かにノートを取るだけ。
教師が私に声をかける。
「リディア様、殿下の隣に座らなくてよろしいのですか?」
「……殿下のご意向ですので」
教師は一瞬だけ驚いた顔をしたが、
すぐに何も言わなくなった。
その沈黙が、
私の胸に深く突き刺さった。
授業が終わった後。
皇子が私に声をかけてきた。
「リディア……今日のこと、気にしているのか?」
「いいえ。殿下のお考えに従うだけです」
「……君は本当に、何を考えているのか分からないな」
また、その言葉。
私は静かに答える。
「申し訳ございません。
私は……感情を表に出すのが得意ではなくて」
皇子は視線をそらした。
「ミレイユは素直だ。
僕には、そういう方が分かりやすい」
(私は……分かりにくいから、選ばれない)
胸の奥が、静かに冷えていく。
皇子は続けた。
「……リディア。
僕は、君との婚約について……少し考えている」
その言葉に、
世界が一瞬で静まり返った。
(……婚約について、考えている?)
皇子は言葉を選ぶように続ける。
「君は優秀だ。
でも……皇太子妃として必要なのは、
“国民に愛される明るさ”だと思うんだ」
(私は……その条件を満たしていない)
「……殿下は、私との婚約を……」
皇子は答えなかった。
ただ、沈黙がすべてを物語っていた。
帰りの馬車の中。
私は静かに目を閉じた。
(……私は、殿下にとって“ふさわしくない”のだ)
胸の奥で、
何かが静かに崩れ落ちた。
私は、胸の奥に小さな不安を抱えていた。
(……殿下は、今日も私を見てくださるだろうか)
そんな淡い期待は、
皇宮に着いた瞬間、静かに砕けた。
授業室の扉を開けると、
皇子とミレイユが並んで座っていた。
ミレイユは皇子の腕に軽く触れ、
嬉しそうに笑っている。
「殿下~、今日もよろしくお願いしますわ」
皇子は穏やかに微笑んだ。
「ミレイユ、今日も頑張ろう」
その声は、
かつて私に向けられていたものと同じだった。
(……私の席は)
私は静かに自分の席に向かう。
皇子はちらりとこちらを見たが、
すぐに視線をそらした。
「リディア、今日は……その、ミレイユの補助を頼みたい」
補助。
私は思わず足を止めた。
「……私ではなく、ミレイユ様が殿下の隣に?」
皇子は少しだけ困ったように眉を寄せた。
「君は優秀だ。
でも……君の説明は難しい。
ミレイユの方が、僕には分かりやすい」
(……私は、殿下の隣に立つ資格がないということ?)
胸の奥が、ひどく痛んだ。
授業が始まると、
皇子はミレイユに丁寧に教え続けた。
「ここはこうだよ、ミレイユ」
「まあ、殿下……ありがとうございますわ」
私は少し離れた席で、
ただ静かにノートを取るだけ。
教師が私に声をかける。
「リディア様、殿下の隣に座らなくてよろしいのですか?」
「……殿下のご意向ですので」
教師は一瞬だけ驚いた顔をしたが、
すぐに何も言わなくなった。
その沈黙が、
私の胸に深く突き刺さった。
授業が終わった後。
皇子が私に声をかけてきた。
「リディア……今日のこと、気にしているのか?」
「いいえ。殿下のお考えに従うだけです」
「……君は本当に、何を考えているのか分からないな」
また、その言葉。
私は静かに答える。
「申し訳ございません。
私は……感情を表に出すのが得意ではなくて」
皇子は視線をそらした。
「ミレイユは素直だ。
僕には、そういう方が分かりやすい」
(私は……分かりにくいから、選ばれない)
胸の奥が、静かに冷えていく。
皇子は続けた。
「……リディア。
僕は、君との婚約について……少し考えている」
その言葉に、
世界が一瞬で静まり返った。
(……婚約について、考えている?)
皇子は言葉を選ぶように続ける。
「君は優秀だ。
でも……皇太子妃として必要なのは、
“国民に愛される明るさ”だと思うんだ」
(私は……その条件を満たしていない)
「……殿下は、私との婚約を……」
皇子は答えなかった。
ただ、沈黙がすべてを物語っていた。
帰りの馬車の中。
私は静かに目を閉じた。
(……私は、殿下にとって“ふさわしくない”のだ)
胸の奥で、
何かが静かに崩れ落ちた。
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