38 / 42
大地の神 カウイル
エルフの大森林
しおりを挟む元領主 ルッジェロ卿の街を出発してから数日が経ちコナーたちはエルフの住む大森林へと到着した。大森林の前には先に到着していた冒険者たちが集まり話し合いをしていた。
「コナー!」
冒険者の一人が名前を呼びコナーを抱きしめた。
「久しぶり父さん、元気だった?」
「あぁ父さんはいつだって元気いっぱいだ!そういうお前も元気そうで安心したよ。出発した時より逞しくなったんじゃないか?」
コナーたちと父親のアランは、しばらくの時間、談笑を楽しみ。談笑が終わるとアランは今の状況について説明した。
アランの話によると冒険者は数週間前に大森林に到着していたが、エルフに協力を拒まれ森に入れずにいたらしい。何度か魔人による進行を受けたエルフたちだったが、自分たちだけで追い返すことができたことにより自信が付いてしまったようだ。
「それとジル王子。あなたにお伝えしなくてはならない話があります。」
「なんだ?」
「ジル王子の父上、マルク王の姿が消えました。」
「父上が!?」
「はい。今は第一王子のニコラ王子が指揮をとっていて、マルク王がいなくなったことは国民には気づかれていません。」
「……そうか、わかった。だが、今はエルフを説得するのが先だ。エルフの族長エルモ様とはお話になったのか?」
「それが……エルモ様は族長を下ろされてしまったようです。」
「……恐らく、エルモ族長が人間に協力を仰いだことにエルフが反発して、族長の座を下ろしたのだろう。今はそんなことをしている場合ではないというのに……。」
一同がどうすれば森に入れるかを考えていると森の中から美しい毛並みの鹿が一頭コナーたちに向かい歩いてきた。
「本当にエルフたちって頭が固くて嫌になるよ!」
全員が鹿が喋ったと、一瞬驚いた。
「あー、違う違う。ここだよここ。この子の頭の上。」
目を凝らしてよく見ると鹿の頭の上にはコナーの会ったことのある人物があぐらをかいていた。
「ドニさん!」
「久しぶりだねコナー。久しぶりと言っても、僕たちはどこにでもいるからね。君たちが魔物を根絶するため、命懸けの旅をしていたのを、僕たちはずっと見ていたけどね。」
妖精族のほとんどは自然を好み、森などに生息しているが、妖精族の中にはドニのように、どこにでも現れられるという特性を利用して、世界を渡り歩く変わり者も存在している。
「森に入れなくて困っているんだろ。僕たちが案内をしてあげるから着いてきなよ。」
「そんなことをしてエルフは大丈夫なんですか?」
「大丈夫、大丈夫。彼らは僕、というかこの子に手を出すことはないから。」
コナー一行とS級冒険者三名、A級冒険者五名はドニの後ろに続き森の中へ足を踏み入れた。
森の中は大地の魔力で溢れているお陰か、木々は天高く成長していて大小様々な木の実が実っていた。
「そういえば自己紹介がまだだったね。僕の名前はドニ。そしてこの子は大地の神カウイル様の生み出した眷属……エルフたちは名前を付けるのはおこがましいって言って御使い様なんて呼んでるけど。僕たちは鹿角子《かずのこ》くんって呼んでるんだ。」
森に足を踏み入れてから数分が経ち、お互いの自己紹介が終わった頃、五名のエルフがコナーたちの前に現れた。
「ドニ様。これはいったいどういうつもりですか?間違っても森に人間を入れることのないよう、頼んだはずですが。」
「君のお願いを僕は、了承したつもりも、聞くつもりもないけどね。それにこの子達を森に入れたのは僕たち妖精族と鹿角子くんの意思だよ。」
「……御使い様の!?……ですが、いくら御使い様の意思とはいえ、許す訳にはいきません。そこの人間には今すぐ森を出てもらいます。」
「君も頑固だね~、頑固さだけならエルモ以上だ。だけど残念、僕たちは絶対にカウイル様の元まで人の子を連れていくよ。」
「……それなら!!」
エルフは手のひらに膨大な魔力を集中させ攻撃の準備に移った。
「あとさ~君たち、大好きな御使い様の前で少し頭が高いんじゃないかな?」
ドニがそう言うと、五人のエルフは突然地面に倒れ込んだ。
「「あはははは。ざまぁみろ!逃げろ、逃げろ~~」」
「言っただろ。僕たちは連れていくって。」
今度は目を凝らさなくてもわかった。コナーたちの周囲にはいつの間にか、小さな虫くらいのサイズの妖精が無数に集まり輝いていた。
「君たちは早く集落に帰って伝えるといい、妖精族と御使い様は人間と手を組んだってね。」
ドニはそう言うと、悔しそうな顔で睨む五人のエルフを残し、森の奥へと足を進めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる