異世界冒険録~七柱の神と十の種族~

ネコノトリ

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大地の神 カウイル

エルフの大森林

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 元領主 ルッジェロ卿の街を出発してから数日が経ちコナーたちはエルフの住む大森林へと到着した。大森林の前には先に到着していた冒険者たちが集まり話し合いをしていた。
「コナー!」

 冒険者の一人が名前を呼びコナーを抱きしめた。
「久しぶり父さん、元気だった?」

「あぁ父さんはいつだって元気いっぱいだ!そういうお前も元気そうで安心したよ。出発した時より逞しくなったんじゃないか?」

 コナーたちと父親のアランは、しばらくの時間、談笑を楽しみ。談笑が終わるとアランは今の状況について説明した。

 アランの話によると冒険者は数週間前に大森林に到着していたが、エルフに協力を拒まれ森に入れずにいたらしい。何度か魔人による進行を受けたエルフたちだったが、自分たちだけで追い返すことができたことにより自信が付いてしまったようだ。
「それとジル王子。あなたにお伝えしなくてはならない話があります。」

「なんだ?」

「ジル王子の父上、マルク王の姿が消えました。」

「父上が!?」

「はい。今は第一王子のニコラ王子が指揮をとっていて、マルク王がいなくなったことは国民には気づかれていません。」

「……そうか、わかった。だが、今はエルフを説得するのが先だ。エルフの族長エルモ様とはお話になったのか?」

「それが……エルモ様は族長を下ろされてしまったようです。」

「……恐らく、エルモ族長が人間に協力を仰いだことにエルフが反発して、族長の座を下ろしたのだろう。今はそんなことをしている場合ではないというのに……。」

 一同がどうすれば森に入れるかを考えていると森の中から美しい毛並みの鹿が一頭コナーたちに向かい歩いてきた。
「本当にエルフたちって頭が固くて嫌になるよ!」

 全員が鹿が喋ったと、一瞬驚いた。

「あー、違う違う。ここだよここ。この子の頭の上。」

 目を凝らしてよく見ると鹿の頭の上にはコナーの会ったことのある人物があぐらをかいていた。
「ドニさん!」

「久しぶりだねコナー。久しぶりと言っても、僕たちはどこにでもいるからね。君たちが魔物を根絶するため、命懸けの旅をしていたのを、僕たちはずっと見ていたけどね。」

 妖精族のほとんどは自然を好み、森などに生息しているが、妖精族の中にはドニのように、どこにでも現れられるという特性を利用して、世界を渡り歩く変わり者も存在している。
「森に入れなくて困っているんだろ。僕たちが案内をしてあげるから着いてきなよ。」

「そんなことをしてエルフは大丈夫なんですか?」

「大丈夫、大丈夫。彼らは僕、というかこの子に手を出すことはないから。」

 コナー一行とS級冒険者三名、A級冒険者五名はドニの後ろに続き森の中へ足を踏み入れた。

 森の中は大地の魔力で溢れているお陰か、木々は天高く成長していて大小様々な木の実が実っていた。
「そういえば自己紹介がまだだったね。僕の名前はドニ。そしてこの子は大地の神カウイル様の生み出した眷属……エルフたちは名前を付けるのはおこがましいって言って御使い様なんて呼んでるけど。僕たちは鹿角子《かずのこ》くんって呼んでるんだ。」

 森に足を踏み入れてから数分が経ち、お互いの自己紹介が終わった頃、五名のエルフがコナーたちの前に現れた。
「ドニ様。これはいったいどういうつもりですか?間違っても森に人間を入れることのないよう、頼んだはずですが。」

「君のお願いを僕は、了承したつもりも、聞くつもりもないけどね。それにこの子達を森に入れたのは僕たち妖精族と鹿角子くんの意思だよ。」

「……御使い様の!?……ですが、いくら御使い様の意思とはいえ、許す訳にはいきません。そこの人間には今すぐ森を出てもらいます。」

「君も頑固だね~、頑固さだけならエルモ以上だ。だけど残念、僕たちは絶対にカウイル様の元まで人の子を連れていくよ。」

「……それなら!!」

 エルフは手のひらに膨大な魔力を集中させ攻撃の準備に移った。
「あとさ~君たち、大好きな御使い様の前で少し頭が高いんじゃないかな?」

 ドニがそう言うと、五人のエルフは突然地面に倒れ込んだ。
「「あはははは。ざまぁみろ!逃げろ、逃げろ~~」」

「言っただろ。僕たちは連れていくって。」

 今度は目を凝らさなくてもわかった。コナーたちの周囲にはいつの間にか、小さな虫くらいのサイズの妖精が無数に集まり輝いていた。
「君たちは早く集落に帰って伝えるといい、妖精族と御使い様は人間と手を組んだってね。」

 ドニはそう言うと、悔しそうな顔で睨む五人のエルフを残し、森の奥へと足を進めた。

 

 
 
 

 
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