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大地の神 カウイル
スプリングドッグ
しおりを挟む「魔獣を刺激しないよう気をつけてね。鹿角子くんと一緒にいる僕たちを、下手に攻撃してくることはないと思うけど、絶対じゃないから。」
エルフと一悶着あった地点から一時間歩き、コナーたちは魔獣たちの住む大森林の奥地へと足を踏み入れていた。森の奥地には大型の魔獣が多く生息していてエルフや妖精族も滅多に近づかないという。
「もう少しでカウイル様の眠る森の中央に着くよ。」
ドニがそういった時、草むらで何かが動き一匹の獣が飛び出した。
「スプリングドック!」
飛び出した獣を見るや冒険者たちは警戒を強めた。
「さっきも言ったけど刺激しなければ襲ってこないはず……!?」
「……え? 」
草むらから現れた体長が二メートルを超えるであろうスプリングドックは、足をバネのように沈ませ一瞬でドニの後ろを着いてきていた冒険者の腕を噛みちぎった。
「全員武器を構えろ!」
同行していたS級冒険者の一声で全員が武器を構えた。
「ドニさん。こんな状況だ、もう刺激すんななんて言ってる場合じゃないぜ。コナー・エイベル!ここは俺たちに任せて、お前たちは先にいけ!……って、おいおい一匹だけじゃねぇのかよ……。」
冒険者が戦闘態勢をとりスプリングドックへ攻撃を仕掛けようとすると、一同の周囲の草むらから唸り声をあげながら一匹また一匹とスプリングドックが姿を現した。
「一、二、三……全部で八匹か……。悪いなコナー、さっきのはなしだ、俺たち剛龍の臓物が四匹、アランが率いる四ツ首の蛇が二匹を相手する、お前たちは残りの二匹を頼む。こいつらは通常の個体より遥かに大きい油断はするなよ。」
そういうと冒険者たちは矢や魔法などを当て注意を引き、見事な手際で分断に成功した。
「クロエくん、シルヴィさん。」
ジル王子に名前を呼ばれ意図を察した二人はすぐにジル王子の元へ駆け寄り、ジル王子は防御結界を貼った。ここまでの旅で編み出した戦術でコナーとヤンが前線に立ち、ジル王子の結界の中でクロエとシルヴィが魔力を練り上げ安全に魔法を放つ。
「ヤン。俺たちの修行の成果見せてやろう。」
コナーとヤンは体の内側で魔力を常に全身に巡らせ魔力循環を発動させながら、肉体と武器に強化魔法をかけた。
「俺は左をやる、もう一匹は任せた。」
コナーとヤンは同時に飛び出し、スプリングドックとの距離を詰めた。元S級冒険者ジャン・バラボーとの戦闘以来、訓練を続けていた二人の速度は前より格段に上がっていた。
「……!?」
だがスプリングドックも高速の世界を生きる魔獣。二人の攻撃は後ろに飛び退くことで避けられ、着地と同時に足をバネのように沈ませ、反動を使い、コナーとヤンに襲いかかった。
だが、反動をつけ加速したスプリングドックの攻撃はコナードッグヤンに届くことはなかった。
「二人とも大丈夫!?」
魔力を練り終わったクロエとシルヴィの二人は、ジル王子のアドバイスでスプリングドックの直線的な動きを逆手に取り、コナーとヤンの少し後ろから魔法を放った。
「クロ!シルヴィ!避けろ!」
スプリングドッグの標的はコナーとヤンから魔法を直撃させた二人に変わり、コナーとヤンを通り過ぎ飛びかかった。
「ったく……しょうがねぇな。」
絶体絶命の状況でクロエの前に剛龍の臓物のリーダーが、シルヴィの前にコナーの父親にして四ツ首の蛇のリーダーのアランが立ち塞がりスプリングドックを一撃で一刀両断にした。
「コナー!ヤン!」
スプリングドックを倒し一段落するとアランが怒鳴り声をあげながら二人に近づいた。
「なんださっきの不甲斐ない戦闘は!お前たち自分の力を過信して油断していたんだろ。前衛の仕事は後衛に敵が近づかないよう守りあわよくば倒すことだ!大体な……」
「アラン、お説教はそのくらいにしとけ。それより今はこっちの方が重要だ。ドニさん、これを見てください。」
「これは……!?」
ドニが見せられたのは一刀両断にされたにも関わらず襲いかかろうとするスプリングドックの体だった。
「恐らく死霊魔術……ネクロマンサーの仕業でしょう。死霊魔術を使うものに何か心当たりはありませんか?」
「僕たち妖精族もエルフも闇の魔力を持っていない。……ということは。」
「魔人……の仕業ってことですね。でもどうやって……死霊魔術を使うには一度殺さなくてはいけないのにスプリングドックの体には傷一つ……」
「それはこうやったのさ。」
スプリングドックの体を全員で調べていると、この場の誰でもない声と共に煙がコナーたちを包んだ。
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