異世界冒険録~七柱の神と十の種族~

ネコノトリ

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大地の神 カウイル

死霊術師ファウスト

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「全く……足止めをするだけの簡単な仕事だというのに、こんなこともこなせないとは……何のために魔力を分けてやったと思ってる!」

 突然、コナーたち全員を包んだ煙と同時に現れた年老いた男はスプリングドッグの頭を何度も何度も踏みつけた。
「おい……お前俺たちに何をした……?」

「ほぅ……一、二、三……私のガスを吸い込んで五人も立っていられるやつがいるとは!」

 ガスに包まれたコナーたちは体の自由を奪われ、強力な頭痛に吐き気、目眩などに襲われていた。
「立っていられた褒美だ、お前たちに何をしたか特別に教えてやろう。このガスには私の魔力が大量に含まれており、生者が吸い込めば体調不良を死者の体を包めば肉体を操ることができる。たまに貴様らのような魔力に耐性があるものや、高い魔力で無効化するものもおるがな。」

 ガスにやられず立っていられた、S級冒険者三名とアラン・エイベルとジル王子、そして妖精のドニは長年の経験と高い魔力量によりガスを無効化していた。
「お前見たことがあるぞ!エルフたちに追い払われてた魔人だろ!性懲りにもなく現れて何をしに来た!」

「初めは数度の襲撃で命を落としたレアで新鮮なエルフの死体を持ち帰るだけの予定じゃったんだが。コナー・エイベルが森に入ったと連絡がきて、コナー・エイベルに逢いに来たというわけじゃ。」

「……戦うしかないみたいだな。ジル王子、後ろのガキ共を頼みます。」

「いいのか?全員で戦わなくて?それとも私を舐めているのか?」

「エリック、私はコナーたちと一度ジャン・パラボーという魔人と相対したことがあるからわかる。全員でかかるべきだ。」(剛龍の臓物のリーダーがエリック)

「それはダメですジル王子。コナー・エイベルの死が俺たちの敗北条件です。それが分からない貴方では無いはずだ。」

「……分かった。エリック、カミーユ、デボラ、そしてアラン必ず生きて帰ってくれ、ドラン王国には君たちがまだ必要だ。」

「任せてください!」

「話は終わったか?全く近頃の若者は敵の前でペラペラペラペラと……」

「待たせて悪かったな爺さん、けど、逃げなくてよかったのか?俺たち龍を倒した三人にS級の実力を持つアランもいる、あんたが一人で勝てるとは思えないぞ。」

「勘違いしていようじゃな若造。儂はただ待っていたんじゃない、準備を整えていたんじゃ。」

 老人がそう言うと、木の枝から次々と老人の前にエルフたちが現れた。
「マジかよ……」

「冥土の土産に教えてやろう。儂の名前はファウスト、闇の神フェルメ様の生み出した魔人の一人にして死霊術師。貴様らに勝ち目はない、せいぜい苦しんで死ね。」

 ファウストが死体になり操られているエルフたちに命令を下すと、エルフたちはエリックたちに魔法で生み出した岩の塊をぶつけた。
「全員、俺の後ろに続け!」

 エリックは背中に背負っていた巨大な盾で岩を防ぎ、仲間を守りながらファウストへ向かい前進した。
「エルフの魔法を防ぐのか!」

 剛龍の臓物はエリック、カミーユ、デボラで構成される攻撃的なパーティーで。エリックが盾で守り、カミーユとデボラの二人が強力な魔法で敵を倒す。単純な戦法だが、戦闘を重ね実践を詰んだ三人の実力は討伐不可能とまで言われた剛龍にまで届いた。
「このまま俺が攻撃を防ぐ!カミーユとデボラは後方から魔法で援護してくれ!アランは死霊術師の元に着くまで俺の後ろで隠れていろ!それまで俺が守りきる!」

 距離を詰めてくるエリックたちにエルフは攻撃魔法を放ったり、地面を泥に変えるなどして動きを止めようとするが攻撃は弾かれ、妨害の魔法は魔法により相殺された。
「もうすぐファウストまで辿り着く!死霊術師までの道は俺が開く、アランは死霊術師の首を取ることだけ考えていろ。」

 エリックたちは順調にファウストへと近づいていた。だが、一人の悲鳴がエリックたちの足を止めた。
「キャァ!」

 悲鳴が聞こえ、エリックたちは即座に一瞬後ろを振り向いた。エリックたちが振り向いた先では森の獣たちがカミーユとデボラに襲いかかっていた。
「カミーユ!デボラ!」

 二人を助けようと戻ろうとしたエリックにカミーユとデボラは魔法を飛ばした。魔法はエリックには当たらず、背後に迫っていたエルフの魔法の岩に直撃し粉々に砕いた。
「エリック!あんたの敵は、あのクソジジイでしょ!いつも守ってもらったお礼に、今回は私たちが守ってあげるから感謝しなさい!」

 森の獣に体の一部を食べられ大量出血をしていたカミーユとデボラだったが、その言葉には力と意思が込められており、エリックは再び前を向くことができた。
「助かる!」

 エリックは再びアランを守りながら走り出した。ファウストへ向かう最中、背後から大量の魔法が飛んできてファウストを守るエルフを蹴散らすと共にエリックの背中を押した。背後から飛んでくる魔法は次第に少なくなり、ファウストの元へ着く頃には完全に止まった。
「アラン!お前の後ろは俺が守る!頼む!あのクソジジイの首を取ってくれ!」

 アランは何も言わずに腰の剣を抜き気持ちを伝えた。そしてここまで温存した力を全て使うようにファウストの護衛に残っていた数名のエルフと獣を壮絶な勢いで切り伏せた。

 アランの前にはファウストだけが残り、全身全霊の力でファウストへと斬りかかった。
「…………!?」

 勝ちを確信したその瞬間。どこからともなく女が現れ、アランの強力な一撃を防ぎアランの腕を切り落とした。
「ありがとうローサ、愛しているよ。」
 
 
 
 
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