異世界冒険録~七柱の神と十の種族~

ネコノトリ

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魔人襲来編

天使の助言

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 ラビエ教皇との戦闘から五時間が経過し、生存者は城の前に集められていた。
「マルク王!これはいったい、どういう状況ですか!昨日まで一緒に飲んでいた友人が突然殴りかかってきたり。街では刺されて殺された人も見ました!マルク王!説明してください!」

 城の前に集められたものは突然の騒動にパニックになっており収拾がつかなくなっていた。
「マルク王が出てきたぞ!」

 マルク王が城のバルコニーから姿を現した。
「ドラン王国国王、マルク・ドランだ!皆聞いてくれ!人類は今、闇の神に生み出された魔人や魔物によって滅亡の危機に瀕している!」

 マルク王が言葉を発すると、先程まで騒がしかったのが嘘のように場が静まり返った。
「我々を襲った魔人の名前はパベティア。やつは人の心の闇を操り、このドラン王国を襲った。結果、私はパベティアには逃げられ、街の民を守ることができなかった、本当にすまないと思っている。」

 マルク王が民に向かい頭を下げた。
「つまり……そのパベティアって魔人がまた襲ってくるかもしれないってことですか?」

 王を見上げていた民衆がざわつき始めた。
「それは……」

「彼なら当分来ませんよ。」

 マルク王の言葉を遮り、白い翼の生えた神々しい天使のような存在がマルク王の前に現れた。
「……!!何者だ!」

「私は、光の神ルミエル様の眷属、エクレレといいます。突然現れてしまい申し訳ありません、本日はコナー・エイベルという子供とお話するために参りました。」

「コナーくんに?それより光の神の眷属ということは味方と考えてよろしいのでしょうか?」

「えぇ味方と思って頂いて大丈夫です。」

「よかった……それで、パベティアが来ないというのはどういうことなのですか?」

「コナー・エイベルと話したかったのですが……まぁいいでしょう。私がここに現れたように、魔物に襲われている他の種族の元にも、それぞれの神の眷属が現れ、魔物たちを追い払いました。結果、魔人たちは使える魔物を失い、魔人たちも大人しくせざるおえなくなりました。」

「他の種族は無事なんですね?」

「えぇ、被害こそあれど幸い死傷者は少ないです。……皆様助けに来るのが遅くなってしまい誠に申し訳ありません。私がもう少し早くこれていれば……」

「……そうですね。ですが、こうして我々のために現れてくださったことに今は感謝したいと思います。コナーくん!城の応接間に来なさい!」

 生き延びた人と共に話を聞いていた俺は城入り応接間へと案内された。
「エクレレ様、話し合いの場に参加することを許して頂きありがとうございます。」

「いえいえ、後でもう一度説明というのも面倒ですから。それで君がコナーくんですね?」

「はい、コナー・エイベルです。」

「驚きました……ルミエル様に聞いてはいましたが、本当に雷の魔力を持っているのですね。これなら本当にできるかもしれませんね……」

「何をです?」

「かつて雷の神が行おうとした、魔物の一掃です。」

「……魔物の一掃ですか?」

「もちろん、今の彼では魔物を一掃するのは無理です。なのでコナーくん、あなたには炎の神アハウ様、大地の神カウイル様、海の神トル、大空の神ガブル様に会いに行き雷の魔力を受け取ってきてもらいます。」

「神の莫大な魔力を人間に流すというのは耐えられるものなのですか?」

 真面目な顔でマルク王が尋ねた
「耐えられませんね。間違いなく死にます。」

「だったら……!」

「ですが、それはあくまで普通の人間ならの話。彼は特別です。彼の体にはコナーくんと雷の神チャク様の魂二つが宿っています。チャク様の生まれ変わりと言ってもいいでしょう。」

「神様の生まれ変わり……?」

 驚きで言葉が詰まる。
「そうです。雷の魔力を受け取る器にチャク様の魂を使うので、コナーくんの体への影響はないのです。」

 「なるほど……取り乱してしまい申し訳ありません。」

「コナー・エイベルさん、これはあなたにしかできないことなのです、頼まれてくれますね?」

 世界から魔物を消すためとか、俺には荷が重すぎる。正直な話やりたくない……。
「できる限りのことはやってみます……」

 やりたくないことをやりたくないと言えないこの口が今はただ憎い。
「……コナーくん、君にしか出来ないからといって、君がやらなくちゃいけないわけじゃないんだよ。」

 俺の顔に不安が滲み出ていたのかマルク王が話を始めた。
「何を言っているのですか?マルク王。」

 エクレレと名乗る天使の顔は笑顔だが明らかにマルク王に対して怒りをあらわにしていた。
「君はまだ大人の世界に足を踏み入れたばかりなんだ、君が本当の意味で大人になるまでは、我々大人が君のことを守ってみせる。君は君が大人になれた時に大人としての役目を果たしてくれればいい。」

 マルク王の言葉に天使の顔から笑顔が消え、俺の顔からは涙がこぼれた。それから少し俺が覚悟を決めるまでの時間、応接間に沈黙が流れた。
「エクレレ様、マルク様。俺、やります!」

「本当にいいんだね?」

 マルク王が心配そうに見つめている。
「俺にしかできないことなんですよね……それに前世の年齢も合わせると三十二歳ですよ、俺も充分大人です!」

「……すまない」

「そんな顔しないでください。マルク様たちのように、守るべきもののために戦えることを嬉しく思います。」

「話はまとまったようですね。それでは早速、コナー・エイベルには神の眠る土地に向かっていただきます。」

 

 
 
 

 
 
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