21 / 42
魔人襲来編
天使の助言
しおりを挟むラビエ教皇との戦闘から五時間が経過し、生存者は城の前に集められていた。
「マルク王!これはいったい、どういう状況ですか!昨日まで一緒に飲んでいた友人が突然殴りかかってきたり。街では刺されて殺された人も見ました!マルク王!説明してください!」
城の前に集められたものは突然の騒動にパニックになっており収拾がつかなくなっていた。
「マルク王が出てきたぞ!」
マルク王が城のバルコニーから姿を現した。
「ドラン王国国王、マルク・ドランだ!皆聞いてくれ!人類は今、闇の神に生み出された魔人や魔物によって滅亡の危機に瀕している!」
マルク王が言葉を発すると、先程まで騒がしかったのが嘘のように場が静まり返った。
「我々を襲った魔人の名前はパベティア。やつは人の心の闇を操り、このドラン王国を襲った。結果、私はパベティアには逃げられ、街の民を守ることができなかった、本当にすまないと思っている。」
マルク王が民に向かい頭を下げた。
「つまり……そのパベティアって魔人がまた襲ってくるかもしれないってことですか?」
王を見上げていた民衆がざわつき始めた。
「それは……」
「彼なら当分来ませんよ。」
マルク王の言葉を遮り、白い翼の生えた神々しい天使のような存在がマルク王の前に現れた。
「……!!何者だ!」
「私は、光の神ルミエル様の眷属、エクレレといいます。突然現れてしまい申し訳ありません、本日はコナー・エイベルという子供とお話するために参りました。」
「コナーくんに?それより光の神の眷属ということは味方と考えてよろしいのでしょうか?」
「えぇ味方と思って頂いて大丈夫です。」
「よかった……それで、パベティアが来ないというのはどういうことなのですか?」
「コナー・エイベルと話したかったのですが……まぁいいでしょう。私がここに現れたように、魔物に襲われている他の種族の元にも、それぞれの神の眷属が現れ、魔物たちを追い払いました。結果、魔人たちは使える魔物を失い、魔人たちも大人しくせざるおえなくなりました。」
「他の種族は無事なんですね?」
「えぇ、被害こそあれど幸い死傷者は少ないです。……皆様助けに来るのが遅くなってしまい誠に申し訳ありません。私がもう少し早くこれていれば……」
「……そうですね。ですが、こうして我々のために現れてくださったことに今は感謝したいと思います。コナーくん!城の応接間に来なさい!」
生き延びた人と共に話を聞いていた俺は城入り応接間へと案内された。
「エクレレ様、話し合いの場に参加することを許して頂きありがとうございます。」
「いえいえ、後でもう一度説明というのも面倒ですから。それで君がコナーくんですね?」
「はい、コナー・エイベルです。」
「驚きました……ルミエル様に聞いてはいましたが、本当に雷の魔力を持っているのですね。これなら本当にできるかもしれませんね……」
「何をです?」
「かつて雷の神が行おうとした、魔物の一掃です。」
「……魔物の一掃ですか?」
「もちろん、今の彼では魔物を一掃するのは無理です。なのでコナーくん、あなたには炎の神アハウ様、大地の神カウイル様、海の神トル、大空の神ガブル様に会いに行き雷の魔力を受け取ってきてもらいます。」
「神の莫大な魔力を人間に流すというのは耐えられるものなのですか?」
真面目な顔でマルク王が尋ねた
「耐えられませんね。間違いなく死にます。」
「だったら……!」
「ですが、それはあくまで普通の人間ならの話。彼は特別です。彼の体にはコナーくんと雷の神チャク様の魂二つが宿っています。チャク様の生まれ変わりと言ってもいいでしょう。」
「神様の生まれ変わり……?」
驚きで言葉が詰まる。
「そうです。雷の魔力を受け取る器にチャク様の魂を使うので、コナーくんの体への影響はないのです。」
「なるほど……取り乱してしまい申し訳ありません。」
「コナー・エイベルさん、これはあなたにしかできないことなのです、頼まれてくれますね?」
世界から魔物を消すためとか、俺には荷が重すぎる。正直な話やりたくない……。
「できる限りのことはやってみます……」
やりたくないことをやりたくないと言えないこの口が今はただ憎い。
「……コナーくん、君にしか出来ないからといって、君がやらなくちゃいけないわけじゃないんだよ。」
俺の顔に不安が滲み出ていたのかマルク王が話を始めた。
「何を言っているのですか?マルク王。」
エクレレと名乗る天使の顔は笑顔だが明らかにマルク王に対して怒りをあらわにしていた。
「君はまだ大人の世界に足を踏み入れたばかりなんだ、君が本当の意味で大人になるまでは、我々大人が君のことを守ってみせる。君は君が大人になれた時に大人としての役目を果たしてくれればいい。」
マルク王の言葉に天使の顔から笑顔が消え、俺の顔からは涙がこぼれた。それから少し俺が覚悟を決めるまでの時間、応接間に沈黙が流れた。
「エクレレ様、マルク様。俺、やります!」
「本当にいいんだね?」
マルク王が心配そうに見つめている。
「俺にしかできないことなんですよね……それに前世の年齢も合わせると三十二歳ですよ、俺も充分大人です!」
「……すまない」
「そんな顔しないでください。マルク様たちのように、守るべきもののために戦えることを嬉しく思います。」
「話はまとまったようですね。それでは早速、コナー・エイベルには神の眠る土地に向かっていただきます。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる