私が好きなのはあなたじゃないですよ?

夜明シスカ

文字の大きさ
37 / 55

出立前日

しおりを挟む
それから2時間ほどだろうか、すっかり寝てしまっていた彼女は目を覚ました。
「ここは・・どこ・・っ?」
見慣れた自分の小屋じゃないことはわかる。
私、シェリアーナ・ルティはルティ伯爵夫人である。
それにしては現在の健康状態は最悪だし、着ている物も質素で髪や肌の状態もね・・・
控えめに言って酷い。
それしか言えないと思うわ。
ここ最近は吐血もしていて、まさかもう死んでしまうのかもしれないと思っていた。
そんな時に・・
そうだわ!
確かルティ家の使用人だという人たちが来たのだ。
明日には辞めると言っていたわ。
しかも、そのあと私にここから出ないかと提案してくれて、一緒に連れ出してくれたのだ。

森の小屋に入れられた当初は、何度も脱走を試みたけれど何時間歩いても全然出られなくて諦めたものだ。

それがどうか・・30分ほど歩いて森から抜けていたのだ。
まさかこんな短時間で出てきた。
思えばあそこに入れられた恐怖でパニックになって冷静に考えられなかった結果、脱出することが出来なかったのかもしれない。
なにはともあれ、死ぬ前に出られたことに感謝しかない。
「ふぅ・・」
と一息吐くと、カタッと隣で音がした。
視線を向けると、一人の女性が居る。
そおっと近づいて来て、
「奥様??お目覚めですか?」
と優しく聞いてきた。
「??えぇ。ごめんなさい、あの、あなた・・ゴホ・・は?」
咳が出てしまう・・

クスリと笑って、彼女は話し出す。
「初めまして、奥様。
私はルティ家でメイドをしています、ユーリと申します。
まぁ、私も明日にはみんなとこちらを出てきいきますが・・
というより、私もそうですが使用人一同みんなで屋敷を出ることにしました。
もちろん、奥様も一緒にですよ」
ニコッと微笑んでくれる。
温かい・・
人が居る・・
独りじゃない・・
嬉しくて、気恥ずかしくて涙が出た。

「奥様っすみません、泣かせるようなことは言ってないはずですがっっ
どこか痛みますか??」
その気遣いすらも嬉しい。
「ありが・・とう・・んっゴホゴホ」
我慢するけど、どうしても止まらない咳。
「奥様、とりあえずこちらをどうぞ。
喉に優しいハチミツ湯です。
ぬるめにしたのですぐに飲めるはずです。」
そう言って、一匙すくって毒味をしてから渡してくれた。
優しい子・・
ありがとうの心込めて、ペコリとお辞儀をした。
そうすると、彼女は頷いて微笑んでくれた。
「では、何か食べられますか?
一応病気のときでも食べられるような玉子粥を用意させたのですが・・
えっと、”はい”なら右手を出すでしたね?
ルーチェさんからそうするようにと言いつけられております。」
ルーチェ、あの迎えに来てくれたときの執事ね。
ありがたいわ・・
そして、右手を差し出して”はい”を示すと、
「わかりました!食べられるだけで結構ですから、無理なさらないでくださいね。では、持ってくるよう言ってきます~」
部屋の扉のほうへ行って、廊下で何か伝えている。
少ししてすぐに玉子粥を持ってきてくれたようだ。
ありがたくいただく・・久しぶりにこんなまともな食べ物を口にした。
温かくて体に染み渡る。
「あり・・がと」
と伝えると、ユーリもニッコリ微笑んでくれて食べたあとは湯浴みは無理だろうからと温かいお湯で体を拭いて着替えさせてくれた。
ここ何年も肌を通したことのなかった、上等な寝間着。
懐かしい肌触りにまたも涙する。

「奥様、明日は朝早くから出立しますので、今日はもうお休みください。
常にメイドがこちらに一人控えるようにしておりますので、些細なことでも何かありましたらお伝えくださいね。
では、私は一旦下がらせていただきます」
「お・・やすみ・・」と言って手をあげた。
「はい、おやすみなさいませ、奥様。今日はゆっくりと良い夢が見られますように。明日は楽しみですね♪」
と言ってお辞儀をして部屋を去っっていった。
代わりに違うメイドが来て、
「奥様、私はメイドのレベッカと申します。今夜は私が付いていますので、安心してお休みくださね。」
「えぇ・・」と言って、限界が来てそのまま眠り落ちていった。

その夜、使用人たちと楽しく暮らす自分の夢を見た。
こんなにワクワクしたのはいつぶりだろう??
ふふっ

シェリアーナが寝言で小さく笑っているのをレベッカは見ていた。
どうかこの先、この綺麗な私たちの御主人様が楽しく過ごせますようにと祈って。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

【完結】私を捨てた国のその後を見守ってみた。

satomi
恋愛
侯爵令嬢のレナは公然の場でというか、卒業パーティーで王太子殿下イズライールに婚約破棄をされた挙句、王太子殿下は男爵令嬢のラーラと婚約を宣言。 殿下は陛下や王妃様がいないときを狙ったんでしょうね。 レナの父はアルロジラ王国の宰相です。実家にはレナの兄が4名いますがみんなそろいもそろって優秀。 長男は領地経営、次男は貿易商、3男は情報屋、4男は…オカマバー経営。 レナは殿下に愛想をつかして、アルロジラ王国の行く末を見守ろうと決意するのです。 次男監修により、国交の断絶しているエミューダ帝国にて。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...