推し様たちを法廷で守ったら気に入られちゃいました!?~前世で一流弁護士の僕が華麗に悪役を弁護します~

いつく しいま

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第一章 推し様たちとの出会い

1. 僕は清廉潔白です!

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 さて。突然だが〝守る〟の類義語は何があると思う?
 僕が何個か思いついたものを挙げようか。
『庇護する』『死守する』『守護する』
 この文字の連なりで何を思う? それともどうでもよくて集中する気になれない?

 羨ましい。僕もそう思えたら良かった。

「はぁ…」

 そんなどうでもいいことを考えて、現実から逃げたい状況なんだ。頭を逃避させないと、身が持たない。
 夜明けの牢獄で、僕は仰向けに倒れていた。

 ここ、僕が超やり込んでたゲームの世界じゃないか? 
 ……とか。
 しかも今脳裏にあるのは、前世の記憶だ。
 ……なんて。

 頭頂部がずきずきと痛い。
 石床の冷気が膝から腰へと這い上がってくる。高い位置にある小さい窓から、光が差し始めていた。いまは朝らしい。倒れたまま、片手だけを天井に向けてまっすぐ伸ばす。看守が呆れた顔でこちらを一瞥して、また前を向いた。

 牢屋生活に気が狂い、さっきまで鉄格子に頭をごんごんぶつけていたのは他でもない僕だ。

 多分それがトリガーになったんだと思う。

 こめかみに鈍い痛みが寄せては返す中で、断片的な言葉が頭の奥で弾けた。

 木槌の音。法廷の机。
『異議ありっ!』

 それは、僕の声だ。
 訴え弁じ、言葉を武器に戦っていた。

 前世、遥か彼方の異世界の日本で―――僕は若手の一流弁護士として名を馳せていた。

 勝訴の夜も、事務所に帰ると誰もいなかった。
 声をかける相手がいないから、判決の余韻を飲み込む場所がなかった。冷徹すぎる愛想のない弁護士だと好き勝手に噂されていたけど、実際そんなことはなかった。
 人並みに泣くし、人並みに笑うのに。
 そんな孤独を癒してくれたのは、一本のPCゲームだ。

 キャラクターの内面もゲーム画面のビジュアルも組み込まれたシナリオも、全部が台風みたいに僕を刺激した。誰もいないオフィスで、モニターに映る推しの笑顔だけが僕を救った夜があった。
 王道BLファンタジーゲーム『蒼き誓約と王子の夜明け』。キャラクターはおおまかに二つの種族に分かれていて、プレイヤーはどちらかに所属することができる。

「その世界の構図が、今いるここと同じなんだけど……」

 英雄族とヴィラン族に分かれ、二千年もの間対立している世界。もんのすごくセクシーでかっこいいヴィランたちは、僕にとって愛すべき信仰対象だった。

「……つまり推したちがこの世界にいる、存在する……」

 手を下ろして、天井を見る。
 むくりと起き上がり、正座した。
 現状を整理しよう。

 まずは檻の隅にできた水たまりの反射で、自分の顔を確認する。ホワイトブロンドの髪に、年の割には幼い顔が映った。

 僕の名前はレオン・カーティス、十七歳の下級兵だ。

 母と弟三人を養っている。だけど訓練中に何者かに血を浴びせられて、そのまま通り魔殺人の犯人として捕まった。つまり冤罪。
 三日後に予審がある。
 弟たちは今日も肌寒いだろうか。母は眠れているだろうか。
 僕が居なければ、家族は路頭に迷う。なので、余計に保釈をとらなきゃまずい。

 それと前世の記憶を思い出した今、頭の中で違うベクトルも同時進行してる。

「推しをこの手で弁護したい……」

 僕は、以前の人生ではちゃんと誰かを守れていたんだ。そんな前世でどうしようもない時に、画面の向こうから救ってくれたキャラクターが、この世界にいるのなら。
 このままだと恩人たちはヴィランとしての迫害や、冤罪によって報われないのなら―――

 一つだけため息を吐いて顔を上げた。
 椅子に座って見張り番をしている看守に話しかける。

「すみませんっ」
「……ん?」

 薄く赤みがかった髪の看守が、あくびをしながら迷惑そうに振り向いた。

「頼みたいことがあります」

「刑罰免除の相談か? そういうのは弁護人に頼むんだな」

「いいえ」

 正座のまま背筋を伸ばす。人に話を聞いてもらうなら、こちらが一番相手の顔を見てはっきり喋ることが大切だ。

「弁護人はいりません。その代わり――僕自身に、弁論の余地をいただく時間が欲しいです」

 看守はぽかんとした顔になる。

「………頭打っておかしくなったか?」

「十回程度打ちましたね。だけどそんなこと言っても、僕は曲がりませんよ」

 澄んだ目で、まっすぐ看守を見据えた。

 推しを守る。しかし牢屋で暮らし続けるんだったら元も子もない。まずは法廷で、自分の冤罪を証明する。
 さて。突然だが〝守る〟の対義語は何があると思う?
 もちろん『攻める』だよね! じゃあ今は攻め時だ。

 さて、一流の腕を見せてみようじゃないか。
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