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四章
狂った家族
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月夜はぞっとしてすぐさま部屋から逃げだした。
当然暁未は追いかけてきたが、月夜は必死に廊下を走った。
とにかく両親へ伝えなければと思い、急いで彼らの部屋へ向かったが、突如ぴたりと静止した。そこにはおぞましい光景が広がっていたのだ。
使用人たちが怪我を負って倒れている。強烈な稲光が庭を走り、その明かりで倒れている者たちが血まみれになっているのがわかった。
生きているのか死んでいるのかわからない。月夜は足がすくんで震えた。
雷鳴が轟く中、背後からゆっくり近づいてきた暁未は、微笑を浮かべながら言った。
「あたしの邪魔をするから、みーんな寝てもらったの」
「おねぇ、さま……」
尋常じゃない。月夜は覚醒しても見境なく人を襲ったりしなかった。けれど、暁未は違う。
月夜が逃げるように走ると、暁未も駆け足で追いかけてきた。
「逃がさないわよ、月夜」
暁未は屋敷の障子や襖を破壊しながら月夜を追う。
その騒ぎに次々と使用人たちが起きてきて、暁未を見るなり悲鳴を上げながら逃げだした。
「いったい何事です?」
「どうしたんだ?」
両親が騒ぎに気づいて起きてきたが、すでに屋敷の中は暁未に破壊され、大騒動になっていた。
暁未がぴたりと静止して、両親ににっこり笑顔を向ける。
しかし両親は恐怖に怯え、母にいたっては大声で暁未を罵倒したのだった。
「いやあっ! 化け物よ!」
母のその声に暁未はぴくりと真顔になり、目を瞠った。
暁未はゆっくりと両親に近づいていくが、彼らは驚愕の表情で逃げようとする。
「お母さま? どうなさったの? あたしはちゃんと月夜と同じ身体になったのよ」
慌てふためく両親に、暁未は首を傾げながら問う。
「あたし、いい子でしょ? ねえ、お父さま。お父さまの言うとおり淑やかな令嬢になったのよ。褒めてちょうだいよ。ねえ、昔みたいに頭を撫でて賢い子だって言ってよ」
暁未は父の眼前まで迫り、ぐいっと顔を上げてまっすぐ見上げた。
父は驚愕のあまり硬直し、手足が震えている。
「だから、嫌なんだ……だから、この家の血筋は……せっかくお前たちを人間として育ててやったのに……何なんだ、これは」
父はぼそぼそと言い洩らす。それを聞いた暁未は顔色を変えて困惑しながら誰にでもなく問うた。
「どうして? 寝る間も惜しんで勉強したのに、先生に叩かれても耐えたのに……やっと月夜と同じあやかしになれたのに、なぜ誰も認めてくれないの?」
父は気持ち悪いものでも見るように暁未を凝視する。
暁未は泣きそうな顔ですがりつく。
「ねえ、お父さま!」
「黙れ! お前などもう娘ではない!」
拒絶されたことに驚いた暁未はしばし放心状態になった。暁未がちらりと父のとなりへ目を向けると、母はびくりと震え、思いきり目をそらした。
暁未の表情は赤く染まり、髪の毛が逆立つ。怒りで震え、それが周囲に殺気を振りまいた。
びりびりとした気迫を放ちながら両親へ近づく暁未の前に突如月夜が割って入った。
「お姉さま、だめ! その力を使ったら、お父さまとお母さまが死んでしまう」
暁未から放たれる気迫は、月夜が護身のために光汰に噛みついたときよりもはるかに強大な力だ。それを月夜はわずかに残った妖力で感じとっていた。
当然暁未は追いかけてきたが、月夜は必死に廊下を走った。
とにかく両親へ伝えなければと思い、急いで彼らの部屋へ向かったが、突如ぴたりと静止した。そこにはおぞましい光景が広がっていたのだ。
使用人たちが怪我を負って倒れている。強烈な稲光が庭を走り、その明かりで倒れている者たちが血まみれになっているのがわかった。
生きているのか死んでいるのかわからない。月夜は足がすくんで震えた。
雷鳴が轟く中、背後からゆっくり近づいてきた暁未は、微笑を浮かべながら言った。
「あたしの邪魔をするから、みーんな寝てもらったの」
「おねぇ、さま……」
尋常じゃない。月夜は覚醒しても見境なく人を襲ったりしなかった。けれど、暁未は違う。
月夜が逃げるように走ると、暁未も駆け足で追いかけてきた。
「逃がさないわよ、月夜」
暁未は屋敷の障子や襖を破壊しながら月夜を追う。
その騒ぎに次々と使用人たちが起きてきて、暁未を見るなり悲鳴を上げながら逃げだした。
「いったい何事です?」
「どうしたんだ?」
両親が騒ぎに気づいて起きてきたが、すでに屋敷の中は暁未に破壊され、大騒動になっていた。
暁未がぴたりと静止して、両親ににっこり笑顔を向ける。
しかし両親は恐怖に怯え、母にいたっては大声で暁未を罵倒したのだった。
「いやあっ! 化け物よ!」
母のその声に暁未はぴくりと真顔になり、目を瞠った。
暁未はゆっくりと両親に近づいていくが、彼らは驚愕の表情で逃げようとする。
「お母さま? どうなさったの? あたしはちゃんと月夜と同じ身体になったのよ」
慌てふためく両親に、暁未は首を傾げながら問う。
「あたし、いい子でしょ? ねえ、お父さま。お父さまの言うとおり淑やかな令嬢になったのよ。褒めてちょうだいよ。ねえ、昔みたいに頭を撫でて賢い子だって言ってよ」
暁未は父の眼前まで迫り、ぐいっと顔を上げてまっすぐ見上げた。
父は驚愕のあまり硬直し、手足が震えている。
「だから、嫌なんだ……だから、この家の血筋は……せっかくお前たちを人間として育ててやったのに……何なんだ、これは」
父はぼそぼそと言い洩らす。それを聞いた暁未は顔色を変えて困惑しながら誰にでもなく問うた。
「どうして? 寝る間も惜しんで勉強したのに、先生に叩かれても耐えたのに……やっと月夜と同じあやかしになれたのに、なぜ誰も認めてくれないの?」
父は気持ち悪いものでも見るように暁未を凝視する。
暁未は泣きそうな顔ですがりつく。
「ねえ、お父さま!」
「黙れ! お前などもう娘ではない!」
拒絶されたことに驚いた暁未はしばし放心状態になった。暁未がちらりと父のとなりへ目を向けると、母はびくりと震え、思いきり目をそらした。
暁未の表情は赤く染まり、髪の毛が逆立つ。怒りで震え、それが周囲に殺気を振りまいた。
びりびりとした気迫を放ちながら両親へ近づく暁未の前に突如月夜が割って入った。
「お姉さま、だめ! その力を使ったら、お父さまとお母さまが死んでしまう」
暁未から放たれる気迫は、月夜が護身のために光汰に噛みついたときよりもはるかに強大な力だ。それを月夜はわずかに残った妖力で感じとっていた。
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