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5、占い師たちの密談(みつだん)
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七実の体が扉の外に吸い込まれ、扉がパタンと音を立て閉まると、先ほどまで七実が座っていた席にオーナーと呼ばれた青年が静かに座り、七実が占い師と呼んでいた女性に話しかける。
「25円だけ返しに、アイツは本当にまたココに来ると思うのか?
この国の紙幣価値としては、低いものなんだろう?
大体お前は、ちゃっかり25代目と名乗るな!
このミッションが無事に終わるまでは、お前はまだ見習いなんだからな!」
見習いという言葉が出てきたあたりから、占い師と呼ばれた彼女はプクッと頬を膨らませると、両肘をテーブルの上につき、指を交互に組んだ手の甲の部分に顎を乗せ、青年に反論した。
「大丈夫、七実と話しながら、必ず返しにくるように、繰り返し暗示をかけておいたわ。
あれだけしっかりかけたなら、間違いなく発動すると思う」
彼女が放った言葉を聞いた青年は、慌てたように腰を浮かせる。
「おまっえ、なぁ、ミッションに神力を使用することを、先代は禁止したハズだぞ!」
語気を強めた青年に怯むことなく、彼女は顎を乗せていた片手だけを引き抜くと、今度は自分の長い銀髪を少し手に取り、その毛先をじっくり見ながら、青年の苦情に対応する。
「はいはいはい、ご安心くださいませ、先代のお目付け役、失礼、審査官サマ。
私が使ったのは、おまじないであって、神力ではございません。
ホラ、七実の言葉を借りると、私のおまじないに七実がかかるのも八卦、かからぬも八卦……またココに来るのも来ないのも、七実の自由だわ」
そう言って、毛先をパサリと払うと、青年の瞳を彼女はジッと見つめた。
互いが見つめ合うこと、2、3秒……先に視線を外したのは青年のほうだった。
「まったく……上手い言い訳だなぁ。
はぁ~、知らんぞ、オレは。
ただひとつ忠告するならば、お前の神力は、歴代最高に強いということだ。
その影響力について、常に配慮を忘れるな。
そんなことより、コッチのほうが重要だ!
まずは、コレを見ろ!」
青年は空気を変えるようにそう言うと、空中に手をかざし、瞬時に現れた雑誌を、バサッと机の上に置く。
雑誌の表紙を彼女がひと目見た瞬間、今度は彼女が椅子から腰を浮かせた。
「ちょっ、ちょっと、ちょっと、待ってよ、コレ!
『イケメンズ』最新号じゃない!」
「よく知ってたな」
なぜか青年は、少し得意気に彼女の指摘を肯定する。
「この前、やっと終了した24件目のミッション完了の確認作業と、七実たちの事前調査でこの国に来た時、コンビニというお店に置いてあったこの雑誌を、何気にパラパラめくってみたら……」
青年は彼女の言葉の続きを予想していたかのように、引き取った。
「好みの顔が出てきた……と」
「そっ、そっ、そっ、そうなの!
ちょっと、なんで分かるのぉ!」
占い師と名乗る彼女は、興奮のあまり、両手をバンとテーブルにつく。
青年は、ニヤリと笑みを浮かべると、雑誌をパラパラめくり、ある1ページを開くと、ズイッと雑誌ごと彼女の目の前に押し出した。
「じゃあ、話は早いな。
このページを見てみろ」
そのページを見た瞬間、彼女の目がクワッと見開く。
「やだっ、ちょっと、コレ、雑誌イケメンズの人気コーナー、街でとらえた今月のイケメン25ズじゃない!」
「なんで25人なんだ?」
青年の不思議そうな問いかけに、彼女は信じられないとばかりにさらに目を開くと、呆れた口調で質問に答えた。
「この雑誌、イケメンズの発売日が25日なのよ!」
青年はウンウンとふたつほど頷き、理解の意を示すと、さりげなく、ある枠を指さす。
「なるほど、それでこの人数なのか。
オイ、ココを見てみろ」
青年に言われた通り、素直に覗き込んだ彼女は、今度はガバッと机から上体を起こすと、雑誌を指さしながら、ふるえる声で青年に問いただした。
「なっ、なっ、なんで、審査官がシレッと載ってるのよぉ~!」
彼女の驚きを軽く笑うと、さらに青年は情報を加える。
「しかも見ろよ、オレが今月のイケメンキング賞だ!
コメントは、ズバ抜けた美貌で文句ナシの1位獲得!だってさ。
確かにズバ抜けているよな……オレって人外だし」
クスクス笑い続ける青年同様、稀有な美を持つ彼女は、指をさす標的を雑誌から今度は青年に変えると、猛烈に批判した。
「審査官こそ、何やってるのよ!
雑誌に自分の姿を撮らせるばかりか、掲載までさせるなんて!
それこそ先代が知ったら、激オコプンプン丸だからねっ!」
美女が怒ると相当な迫力なのだが、青年はソレをモノともせず、困惑顔で彼女に質問する。
「なんだよ……その意味フ、ワード」
青年に質問された彼女は瞬時に怒りをおさめると、逆に青年に質問し返した。
「なんかね、よく分からないけど、街を歩いてたら聞こえてきたので、響きがカワイくて使ってみたのよ。
それよりも意味フって何?」
キョトンとした表情を浮かべた彼女に、青年は直接答えることなく、解決手段を提案する。
「クークルというモノがあるらしいから、ソレで調べてみろよ」
「クークル?
聞いたことないなぁ。
それよりも……」
彼女は一瞬だけ考えたが、また批判内容を思い出したようで、青年をさらに追求しようと口を開きかけたが、青年のほうが、彼女の思惑を読むのが早かった。
「大丈夫だ、オレたちがこの国から去る時には、違う人物に差し替えられてるさ。
それよりお前、このミッションを早く完了させろよ!」
彼女の批判をかわすだけではなく、さらに青年は、自分に向けられた批判の矛先を彼女自身に押し返す。
「分かっているわよ、そんなコト!
私だって、早く正式な25代目と名乗りたいわよ!
でも、この25件目の最後のミッション、前世も今世も2人に恋愛感情が入っているだけに、なかなか難しいの!」
青年ははぁ~と息を長く吐くと、ため息まじりに彼女に言い聞かせた。
「仕方ないだろ、元はお前がうたた寝して、寝ぼけていたせいで起こしたミスなんだからな」
「分かっているわよ!
だからマジメに、取り組んでいるんじゃない!」
自分の非は自覚しているようで、答える彼女の声は少し小さい。
一回だけふぅ~と彼女もため息をつくと、視線を水晶に向けた。
水晶には、足早に歩く七実が映しだされている。
「さぁ、拗れた糸を戻すには、どうすればいいのかしら?」
彼女の呟きは、薄暗い闇の中へと静かに消えていった。
「25円だけ返しに、アイツは本当にまたココに来ると思うのか?
この国の紙幣価値としては、低いものなんだろう?
大体お前は、ちゃっかり25代目と名乗るな!
このミッションが無事に終わるまでは、お前はまだ見習いなんだからな!」
見習いという言葉が出てきたあたりから、占い師と呼ばれた彼女はプクッと頬を膨らませると、両肘をテーブルの上につき、指を交互に組んだ手の甲の部分に顎を乗せ、青年に反論した。
「大丈夫、七実と話しながら、必ず返しにくるように、繰り返し暗示をかけておいたわ。
あれだけしっかりかけたなら、間違いなく発動すると思う」
彼女が放った言葉を聞いた青年は、慌てたように腰を浮かせる。
「おまっえ、なぁ、ミッションに神力を使用することを、先代は禁止したハズだぞ!」
語気を強めた青年に怯むことなく、彼女は顎を乗せていた片手だけを引き抜くと、今度は自分の長い銀髪を少し手に取り、その毛先をじっくり見ながら、青年の苦情に対応する。
「はいはいはい、ご安心くださいませ、先代のお目付け役、失礼、審査官サマ。
私が使ったのは、おまじないであって、神力ではございません。
ホラ、七実の言葉を借りると、私のおまじないに七実がかかるのも八卦、かからぬも八卦……またココに来るのも来ないのも、七実の自由だわ」
そう言って、毛先をパサリと払うと、青年の瞳を彼女はジッと見つめた。
互いが見つめ合うこと、2、3秒……先に視線を外したのは青年のほうだった。
「まったく……上手い言い訳だなぁ。
はぁ~、知らんぞ、オレは。
ただひとつ忠告するならば、お前の神力は、歴代最高に強いということだ。
その影響力について、常に配慮を忘れるな。
そんなことより、コッチのほうが重要だ!
まずは、コレを見ろ!」
青年は空気を変えるようにそう言うと、空中に手をかざし、瞬時に現れた雑誌を、バサッと机の上に置く。
雑誌の表紙を彼女がひと目見た瞬間、今度は彼女が椅子から腰を浮かせた。
「ちょっ、ちょっと、ちょっと、待ってよ、コレ!
『イケメンズ』最新号じゃない!」
「よく知ってたな」
なぜか青年は、少し得意気に彼女の指摘を肯定する。
「この前、やっと終了した24件目のミッション完了の確認作業と、七実たちの事前調査でこの国に来た時、コンビニというお店に置いてあったこの雑誌を、何気にパラパラめくってみたら……」
青年は彼女の言葉の続きを予想していたかのように、引き取った。
「好みの顔が出てきた……と」
「そっ、そっ、そっ、そうなの!
ちょっと、なんで分かるのぉ!」
占い師と名乗る彼女は、興奮のあまり、両手をバンとテーブルにつく。
青年は、ニヤリと笑みを浮かべると、雑誌をパラパラめくり、ある1ページを開くと、ズイッと雑誌ごと彼女の目の前に押し出した。
「じゃあ、話は早いな。
このページを見てみろ」
そのページを見た瞬間、彼女の目がクワッと見開く。
「やだっ、ちょっと、コレ、雑誌イケメンズの人気コーナー、街でとらえた今月のイケメン25ズじゃない!」
「なんで25人なんだ?」
青年の不思議そうな問いかけに、彼女は信じられないとばかりにさらに目を開くと、呆れた口調で質問に答えた。
「この雑誌、イケメンズの発売日が25日なのよ!」
青年はウンウンとふたつほど頷き、理解の意を示すと、さりげなく、ある枠を指さす。
「なるほど、それでこの人数なのか。
オイ、ココを見てみろ」
青年に言われた通り、素直に覗き込んだ彼女は、今度はガバッと机から上体を起こすと、雑誌を指さしながら、ふるえる声で青年に問いただした。
「なっ、なっ、なんで、審査官がシレッと載ってるのよぉ~!」
彼女の驚きを軽く笑うと、さらに青年は情報を加える。
「しかも見ろよ、オレが今月のイケメンキング賞だ!
コメントは、ズバ抜けた美貌で文句ナシの1位獲得!だってさ。
確かにズバ抜けているよな……オレって人外だし」
クスクス笑い続ける青年同様、稀有な美を持つ彼女は、指をさす標的を雑誌から今度は青年に変えると、猛烈に批判した。
「審査官こそ、何やってるのよ!
雑誌に自分の姿を撮らせるばかりか、掲載までさせるなんて!
それこそ先代が知ったら、激オコプンプン丸だからねっ!」
美女が怒ると相当な迫力なのだが、青年はソレをモノともせず、困惑顔で彼女に質問する。
「なんだよ……その意味フ、ワード」
青年に質問された彼女は瞬時に怒りをおさめると、逆に青年に質問し返した。
「なんかね、よく分からないけど、街を歩いてたら聞こえてきたので、響きがカワイくて使ってみたのよ。
それよりも意味フって何?」
キョトンとした表情を浮かべた彼女に、青年は直接答えることなく、解決手段を提案する。
「クークルというモノがあるらしいから、ソレで調べてみろよ」
「クークル?
聞いたことないなぁ。
それよりも……」
彼女は一瞬だけ考えたが、また批判内容を思い出したようで、青年をさらに追求しようと口を開きかけたが、青年のほうが、彼女の思惑を読むのが早かった。
「大丈夫だ、オレたちがこの国から去る時には、違う人物に差し替えられてるさ。
それよりお前、このミッションを早く完了させろよ!」
彼女の批判をかわすだけではなく、さらに青年は、自分に向けられた批判の矛先を彼女自身に押し返す。
「分かっているわよ、そんなコト!
私だって、早く正式な25代目と名乗りたいわよ!
でも、この25件目の最後のミッション、前世も今世も2人に恋愛感情が入っているだけに、なかなか難しいの!」
青年ははぁ~と息を長く吐くと、ため息まじりに彼女に言い聞かせた。
「仕方ないだろ、元はお前がうたた寝して、寝ぼけていたせいで起こしたミスなんだからな」
「分かっているわよ!
だからマジメに、取り組んでいるんじゃない!」
自分の非は自覚しているようで、答える彼女の声は少し小さい。
一回だけふぅ~と彼女もため息をつくと、視線を水晶に向けた。
水晶には、足早に歩く七実が映しだされている。
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