イケメン騎士の貞操を奪ったのは誰だ!ーイケメン嫌いな私と彼の密かな追いかけっこの行方

黎明まりあ

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第3章 ウワサの行方(ゆくえ)

29、マル対(タイ)の疑問行動

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 何で、今日も姿を見かけるのよ?

 お昼休みを知らせるかねの音と共に、食堂へ向かっていたマーガレットだったが、遠くの方から、こちらへ向かってくる端正たんせいな顔立ちをみとめた瞬間、クルリと方向転換てんかんし、来た道を引き返す。

 おかしい

 この道の先は、下級官吏かんりが利用する食堂があるだけで、間違っても王太子の側近そっきん近衛このえ騎士様のような、上級官吏かんりの方々が利用する食堂はない。

 そういった方々の建物は、全てこちらとは、反対側に位置するのである。

 今まで、こんな所でエドワード様を見ることなど、ありなかったはずなのに!

 もう!なんなのよ、コレ?

 おかげで、自分の周囲でキャーッキャーッと、爆弾のように悲鳴が上がりまくっている。

 ちっ、さわがしいな!

 お腹がいているせいか、マーガレットの機嫌も、マリコさん仕込じこみの言葉づかいも、悪くなる一方だ。

 マーガレットはあせっていた。

 なるべく早くマルタイいて、別ルートで食堂に行かないと、貴重なお昼休みがなくなってしまう!

 ファンクラブ会員にとっては神のような存在でも、マーガレットにとっては、厄介やっかいゴトでしかない、エドワード様。

 もちろん、不敬ふけいであると、十分自覚じかくしている。

 だが、あの大先輩にくぎを刺され、2度と近寄らない!と、マーガレットは心にちかった。

 にも関わらず、その次の日から、毎日、回避かいひ対象者、マリコさんから教わった通称つうしょう、マルタイである、エドワード様と遭遇そうぐうするようになってしまったのである。

 もう何年も働いている場所なので、どういう道があるのか、マーガレットもよく知っている。

 その知識を駆使くしし、あらゆる裏道を使って、エドワード様に会わないよう、けにけ、さすがにこの道はエドワード様は知らないだろうとホッとしていると、敵もさるもの、肩で息をしているマーガレットの目の前をこれ見よがしに横切ったりするのだ!

 しかも、接触せっしょく寸前すんぜんの、ギリギリの真横まよこを。

 この時、勤務、表情がほとんど動くことがないとうわさされている、エドワード様の彫像ちょうぞうのような顔立ちの口角こうかくが、ニィッと上がるのを、マーガレットは目撃もくげきしている。

 そしてエドワード様が立ち去ると、なんだかマーガレットの記憶を刺激しげきする、ものすごくイイにおいが、トドメとばかりに立ち込めるのだ。

 毎回そのにおいを、すかさずスンスンといでしまう自分に、マーガレットは、めちゃくちゃ自己嫌悪けんおおちいる。

 少し前まで、自分に関係ない、くもの上の人だったのに、こんなに振り回すエドワード様にも、振り回される自分にも、心底しんそこ、腹立つわぁぁぁ~

 余分よぶんなそんな事も思い出しながら、ドスドスと足音荒く、マーガレットは歩き続けた。

 ようやく大回りした別ルートで、マルタイであるエドワード様に再び会う事もなく、無事、食堂内に入ったマーガレットは、すみ空席くうせきを見つけて座ると、定食の付け合わせのサラダからパリパリと食べ始め、いつものように周囲のうわさ話に耳をかたむける。

 やっぱり今日の話題も、エドワード様だった。

「ねぇねぇ、最近なんでエドワード様は、毎日、この食堂辺りを彷徨うろついているのかしら?」

「さあ?
 なんか任務にんむがあるんじゃないの?」

「え~っ、理由なんてなくていいじゃん!
 毎日、あのおキレイな顔、拝見はいけんできるなんて、幸せのきわみじゃない?」

 マーガレットはチラッと隣のテーブルの4人組をうかがい見た。

 4人とも、口も食事をする手も休めず、高速で動かし続けている……もはや職人わざだ。

 モギュモギュと咀嚼そしゃくを終えた1人が、ちょっと考え込んでから、この一言を仲間の3人に投げかけた。

「でっ、でも、意外にもエドワード様って、落とし物が多いのよねぇ~」

 同じようにモグモグと口を動かしながら、次に口に運ぶ予定のっぱに、マーガレットは、グサッとフォークを突き刺して、いち早く脳内のうない同意どういした。

 そう!
 エドワード様は、落とし物が多い!!

「えっ、えっ、何を落とすの?」

 聞いていた仲間が、さっそく前のめりで話題に乗る。

「それがね、いつも決まっていて、ハンカチなの……だけどね、エドワード様の持ち物にしては、ばんで、古びているらしいの」

「ハイっ!
 それについての新情報を、ワタクシィ~、入手しました!」

 長い髪を編み込んだ可愛らしい子が、自身の胸元まで、手をげる。

 しかも彼女は続けて、げた手の人差し指をあごに当て、上目うわめづかいをし、首をかしげげてとぼける技も披露ひろうした。

「そ・れ・は・ねぇ~、えぇっとぉ~」

 ウワッ!
 らしの上級者テク!!
 スゴっ!!!

 マーガレットは横で披露ひろうされている女子テクに、素直すなおに感動していたが、同席している同僚どうりょう女子には、不評ふひょうのようだった。

「そのテク、私たちにはらないから!
 勿体もったいぶらず、早く言うべし!!」

 そう言うと、情報を待ちきれない仲間が、女子テク高めの子の結んでいる髪をグワシッと つかんだようで、たちまち甲高かんだかい悲鳴が響く。

「あっ、もうヤメてよ!
 せっかくの髪型がぁ~!!
 はい、はい、もう言うよぉ~」

 髪をつかまれた子が口を開こうとすると、すかさず、真向かいに座った2人が、先に情報を暴露ばくろした。

「ハンカチの片隅かたすみ刺繍ししゅうがしてあるんですって!
 イチゴの!!」

「あら、私が入手にゅうしゅした情報だと、てんとう虫って聞いたわよ」

「ちょっ、ちょっと!
 なんでその情報知ってるのに、先に言い出さなかったの!
 ズルいよ~!!
 それに微妙びみょうに違うし……がらはイチゴだよ!」

「てんとう虫だよ!」

 一気にキャーキャーさわがしくなったテーブルに、マーガレットは耳をふさぎたくなったが、次の一言で、その動きを止めた。

「「どっちにせよ、その刺繍ししゅう、ド下手へたなの!!」」

 言いあらそいをしてた2人の声が、最後は綺麗にハモった。
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