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久々に寮に帰った俺は、掲示板の張り紙を見て絶句した。
「部屋割りの変更?」
ぺらっと薄い一枚の紙に書かれていた内容といえば、絶望なんだか希望なんだかわからない内容。日付を見れば貼られたのはだいぶ前で、確認してなかった俺の落ち度なんだけど!
え、誰かに聞きたいな……と周囲を見渡すも、寮母さん──とはいうが男だ──と目が合った瞬間心が折れた。
我ながら気持ち悪いくらい繊細なんだけど、なんか見られてる時に行動するのが無理み。誰も俺を気にしないで欲しい。
顔を逸らして部屋に一旦足を向ける。とりあえず荷物は撤収した方がいいだろう、あとは自分で見て判断
「田中くん、張り紙ちゃんと見た?」
アァッ話しかけられた!
「……見たよ~! え、ビックリしたんだけど? 言ってくれたらよかったじゃ~ん!」
「事前告知したよ、田中くんが全然帰ってこないだけで」
めっちゃ正論言われた!
「いやぁ~はは……委員会の仕事が楽しすぎて?」
「ふーん? まぁいいけど……変更とはいえ大々的じゃなくてね、二年生に今度転校生が来るんだ」
「こんな時期に~? 普通に入学式から来たら良くね?」
「それがなんか、理事長の意向らしくて」
ふーん、と相槌を打ちながら、ほんのり転校生という存在に胸をそわつかせる。まるで物語の主人公みたいじゃん? わくわくするね。
まぁ俺は後輩の顔を全然覚えてない──話したことない人しか居ないので──ので関係ない話なんだが。誰が転校生かもわかんないよ。
「だから田中くんと他数人の部屋を変えたんだけど」
「ワッッッ、じゃあなおさら直接言って」
唐突に関係ある話になってきちゃった。えっ、三年になって新たに人間関係作るの無理すぎるんだけど。もう三年相手に使うCP(コミュニケーションポイント)が残ってないよ。
「でも田中くん、全然私物なかったから……親御さんに協力してもらって家具とか移動しておいたよ、これ次の部屋の鍵ね」
「そこまでするなら声かけて~?? なんで直俺じゃなくて母さんなの?」
文句を言いながら鍵を受け取ってしまう。弱い人間……。
ここ最近母さんから私物要るのかLINEが多かったの、そういうことなんだ。シンプルにやめて欲しい。
とはいえ部屋に見られると恥ずかしいものを隠しているわけでもなく、何なら見られたくないものとかもないので言うほど困っているわけではない。
寮母さんと別れエレベーターに乗り、部屋番号を確認する。
「へぇ~最上階。眺め良さそ」
我が寮は高校だけでなく、初等部から付属大学までの人間を押し込められる二十階建てのマンションであることが特徴だ。
基本的に学年が上がるごとに階層も上がって行き、使える広さも上がる。
初等部の子らなんかは好奇心で身を乗り出したりするので高いところに住めないのだ。寮母さんが駆け付けやすい、目の届くところという意味もある。
「上の階ってことは大学生とか? 歳上かぁ~……」
音の出ないエレベーターの中、ため息を吐く。もう全方位人見知りである。今から相手水瀬とかになんないかな。あいつ実家通いだけど。
エレベーターが止まり、チン、と軽い音が鳴る。
憂鬱な気持ちで外に出て。
「えっ」
困惑する。
高級感のある内装、シャンデリアのような形をした照明に美しく曲線を描く柱。まさに城みたいなそこには行き止まりにはめ殺しの洒落た窓が取り付けられており、眺めも光の入り方も満点だ。
が。
「……部屋数少なくない?」
部屋数が少なすぎる。
困惑して調べれば、二十階には三部屋しかないらしい。三部屋! だだっ広い最上階で三部屋である。
気が狂ったか? ちなみに俺が元いた十三階は七部屋あった。
「ええと、2001……馬鹿みたいな数字だな、2001ってどこ」
ルームキーを握りしめた手が汗ばんでいる。こんな部屋で普通に暮らしてる金持ち、気が合わないどころの話ではない。金銭感覚が合わない相手とは仲良くなれないんだぞ! 俺は誰とも仲良くなれないけど。
コツコツと地面を踏み鳴らし、扉を探す。扉が少ないのですぐに見つかった。
「ええと、同居人は」
息を呑む。
儀礼として確認した表札には、俺の名前ともう一つ、とんでもない名前が刻まれていた。
「……武藤、瑛一……」
どうやら俺は、今世紀最大の幸運にして試練を掴んでしまったらしい。ヒャッホウ神様ありがとう! 嘘です死にまーーす。情緒ガッタガタである。
「部屋割りの変更?」
ぺらっと薄い一枚の紙に書かれていた内容といえば、絶望なんだか希望なんだかわからない内容。日付を見れば貼られたのはだいぶ前で、確認してなかった俺の落ち度なんだけど!
え、誰かに聞きたいな……と周囲を見渡すも、寮母さん──とはいうが男だ──と目が合った瞬間心が折れた。
我ながら気持ち悪いくらい繊細なんだけど、なんか見られてる時に行動するのが無理み。誰も俺を気にしないで欲しい。
顔を逸らして部屋に一旦足を向ける。とりあえず荷物は撤収した方がいいだろう、あとは自分で見て判断
「田中くん、張り紙ちゃんと見た?」
アァッ話しかけられた!
「……見たよ~! え、ビックリしたんだけど? 言ってくれたらよかったじゃ~ん!」
「事前告知したよ、田中くんが全然帰ってこないだけで」
めっちゃ正論言われた!
「いやぁ~はは……委員会の仕事が楽しすぎて?」
「ふーん? まぁいいけど……変更とはいえ大々的じゃなくてね、二年生に今度転校生が来るんだ」
「こんな時期に~? 普通に入学式から来たら良くね?」
「それがなんか、理事長の意向らしくて」
ふーん、と相槌を打ちながら、ほんのり転校生という存在に胸をそわつかせる。まるで物語の主人公みたいじゃん? わくわくするね。
まぁ俺は後輩の顔を全然覚えてない──話したことない人しか居ないので──ので関係ない話なんだが。誰が転校生かもわかんないよ。
「だから田中くんと他数人の部屋を変えたんだけど」
「ワッッッ、じゃあなおさら直接言って」
唐突に関係ある話になってきちゃった。えっ、三年になって新たに人間関係作るの無理すぎるんだけど。もう三年相手に使うCP(コミュニケーションポイント)が残ってないよ。
「でも田中くん、全然私物なかったから……親御さんに協力してもらって家具とか移動しておいたよ、これ次の部屋の鍵ね」
「そこまでするなら声かけて~?? なんで直俺じゃなくて母さんなの?」
文句を言いながら鍵を受け取ってしまう。弱い人間……。
ここ最近母さんから私物要るのかLINEが多かったの、そういうことなんだ。シンプルにやめて欲しい。
とはいえ部屋に見られると恥ずかしいものを隠しているわけでもなく、何なら見られたくないものとかもないので言うほど困っているわけではない。
寮母さんと別れエレベーターに乗り、部屋番号を確認する。
「へぇ~最上階。眺め良さそ」
我が寮は高校だけでなく、初等部から付属大学までの人間を押し込められる二十階建てのマンションであることが特徴だ。
基本的に学年が上がるごとに階層も上がって行き、使える広さも上がる。
初等部の子らなんかは好奇心で身を乗り出したりするので高いところに住めないのだ。寮母さんが駆け付けやすい、目の届くところという意味もある。
「上の階ってことは大学生とか? 歳上かぁ~……」
音の出ないエレベーターの中、ため息を吐く。もう全方位人見知りである。今から相手水瀬とかになんないかな。あいつ実家通いだけど。
エレベーターが止まり、チン、と軽い音が鳴る。
憂鬱な気持ちで外に出て。
「えっ」
困惑する。
高級感のある内装、シャンデリアのような形をした照明に美しく曲線を描く柱。まさに城みたいなそこには行き止まりにはめ殺しの洒落た窓が取り付けられており、眺めも光の入り方も満点だ。
が。
「……部屋数少なくない?」
部屋数が少なすぎる。
困惑して調べれば、二十階には三部屋しかないらしい。三部屋! だだっ広い最上階で三部屋である。
気が狂ったか? ちなみに俺が元いた十三階は七部屋あった。
「ええと、2001……馬鹿みたいな数字だな、2001ってどこ」
ルームキーを握りしめた手が汗ばんでいる。こんな部屋で普通に暮らしてる金持ち、気が合わないどころの話ではない。金銭感覚が合わない相手とは仲良くなれないんだぞ! 俺は誰とも仲良くなれないけど。
コツコツと地面を踏み鳴らし、扉を探す。扉が少ないのですぐに見つかった。
「ええと、同居人は」
息を呑む。
儀礼として確認した表札には、俺の名前ともう一つ、とんでもない名前が刻まれていた。
「……武藤、瑛一……」
どうやら俺は、今世紀最大の幸運にして試練を掴んでしまったらしい。ヒャッホウ神様ありがとう! 嘘です死にまーーす。情緒ガッタガタである。
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