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転校生の言葉にひそひそ声が加速する。俺のコミュ障イヤーは陰口だけに強く反応するので、ヒソヒソの中に混じっている「チャラ男のくせに調子乗りすぎ」「武藤さまと格が同じだとでも思ってんの?」「幻滅した」などの声をしっかりと聞きとった。死にたい。
「ち、ちがうよぉ!? おれはそんなつもりで言ったんじゃ……」
「何もんか知らんが、あの男センパイに生意気言いよって! 言うてくれたらシメときますよ!」
「シ、シメるな! 暴力しかないのか選択肢に!」
慌てて訂正するもデカい声の勢いに押され、周囲が納得し始める。
俺はどうやらすっかり、従うフリをして着々と手駒を増やしていた反会長派だと勘違いされたらしい。俺の今まで積み上げてきた信頼が! それは元からなかったかもしれんけども……。
武藤さまは無言で俺を睨みつけ、開けられた道を歩く。その後ろに続く執行部がそれぞれ俺と後輩二人に声をかける。
「へぇ、早速手懐けた様子で。感心しますよ」
「思ってないくせに!」
「でもでも、ボク達は気に入っちゃったかも!」
「「会長に逆らうなんて!」」
「今までの従順さは演技……そういうことかな!? ハッハ! 面白いじゃないか!」
「……危険」
ヒョエ~! 怖いよ~みんな言葉の裏に圧を感じるよ~! コミュ障イヤーは言外の圧や嫌悪を感じる能力に大変優れているが、コミュ障ブレインは圧を感じた瞬間萎縮する。俺はレスバというもので勝ったことがない。
(犬神さまだけはそのまま危険認定してきてるけども!)
穏やかな相手に嫌われるのはそれ相応の悲しみがあるというものである。俺はただ顔のいい男、または武藤さまのオタクをしたいだけだというのに。どうして。
去っていく背中を目で追っていると、後輩がきょとんとした顔でこちらを見ていた。こちらもこちらでだいぶ怖い。煽りが間髪入れなすぎる。
後輩にドン引きしていると、人混みの奥の方からこちらに向かって声が聞こえてきた。
「おーい! 大月! 良かった、合流できた!」
「テメェ獅童! 無理やり引っ張ってきやがって!」
そういえば、さっき誰か呼んでたな。
聞き馴染みのない名前を叫びながらまたイケメン二人が登場する。爽やか系のイケメンとちょっとアウトローな感じの男前だ。あれらは確か……
「祐司! 政広! わり、ちょっちセンパイと話しとったんよ!」
やっぱり。人混みから這い出てきた二人は、二年生の中でもかなり有名な生徒である。
生徒会役員以外にも顔が良く目立っている生徒には非公認の親衛隊がつくこともあり、この二人──市ヶ谷祐司、東郷政広は親衛隊を持っている生徒だ。
ちなみに爽やかイケメンが市ヶ谷くんで不良男前が東郷くんね。
「え、なに? 知り合い?」
「ああ、両隣に座っとったけん話しかけたとですよ。ほんだら意外と意気投合ばして」
「コミュ力」
両隣に座ってた相手に初日で話しかけて仲良くなって食堂まで来ることある? 俺なら話しかけるのに一週間を要すんだけど。
「……って、え! 大月、この人がセンパイ?」
「名前も知らんって言ってたよなァ……? ンでチャラ男がここにいんだよ!」
市ヶ谷くんが目を瞬かせて俺を見る。その動作すらも爽やかで、自然にセットされた黒髪とゆるりと吊った二重に映えている。
反転、東郷くんは俺を見て明確に嫌悪感を示した。赤メッシュの入った金髪にバチバチに開けたピアス、俺より少し背の高い彼は俺のことがめちゃくちゃ嫌いだ。
コミュ障はね、そういうのわかるよ。常に嫌悪という感情に怯えてるから。
「酷い言い草だなぁ~」
「ほんまですね! 吊るしますか」
「対話とか知らない?」
切り捨てがあまりにも早すぎる。効いてないアピを一瞬で超えてきた。
「チャラ男テメェ……どうやってその狂犬懐かせてやがる、何かしやがってんなら容赦はしねぇぞ」
「田中委員長、大月はまだ入学初日です。手を出すというのなら生徒会執行部に報告して……」
「何もしてないんだけど本当に」
俺のイメージは一体どうなっているのか。というか狂犬と言われるような言動を既にしてるの? 何してるの?
「嘘つけ! 入学初日、転ばせようとしたとした生徒の足持って投げ飛ばして窓割ったヤツが何もせず懐くわけねぇだろ!!」
「何してんのォ!?!?」
思わず転校生──大月獅童くんかな。名前いかつっ──を振り返ると、叱られたポメラニアンみたいにしょんぼりとした。そのしょんぼりの使い道絶対違うけど!?
「大月くん、あのね~あんまりお説教みたいなの言いたくないんだけど」
「獅童です!」
「え? いや、大月くん」
「獅童です!」
「やちょっ、基本俺苗字で固定したいっていうか」
「獅童です!!」
「おおつきく」
「獅童です!!!!」
「ハイ……獅童くん……」
俺は弱い。昨日ぶり二回目の自覚である。そして全然手懐けられてない。全員目腐ってるんじゃないのか?
「!? 獅童が敬語を使う……!?」
「大月、人を敬えたのか……」
「ッチ、認めたかねぇが実力は本物みてぇだな」
手懐けられてはいたらしい。やばい転校生に目をつけられたかもしれん。
「ち、ちがうよぉ!? おれはそんなつもりで言ったんじゃ……」
「何もんか知らんが、あの男センパイに生意気言いよって! 言うてくれたらシメときますよ!」
「シ、シメるな! 暴力しかないのか選択肢に!」
慌てて訂正するもデカい声の勢いに押され、周囲が納得し始める。
俺はどうやらすっかり、従うフリをして着々と手駒を増やしていた反会長派だと勘違いされたらしい。俺の今まで積み上げてきた信頼が! それは元からなかったかもしれんけども……。
武藤さまは無言で俺を睨みつけ、開けられた道を歩く。その後ろに続く執行部がそれぞれ俺と後輩二人に声をかける。
「へぇ、早速手懐けた様子で。感心しますよ」
「思ってないくせに!」
「でもでも、ボク達は気に入っちゃったかも!」
「「会長に逆らうなんて!」」
「今までの従順さは演技……そういうことかな!? ハッハ! 面白いじゃないか!」
「……危険」
ヒョエ~! 怖いよ~みんな言葉の裏に圧を感じるよ~! コミュ障イヤーは言外の圧や嫌悪を感じる能力に大変優れているが、コミュ障ブレインは圧を感じた瞬間萎縮する。俺はレスバというもので勝ったことがない。
(犬神さまだけはそのまま危険認定してきてるけども!)
穏やかな相手に嫌われるのはそれ相応の悲しみがあるというものである。俺はただ顔のいい男、または武藤さまのオタクをしたいだけだというのに。どうして。
去っていく背中を目で追っていると、後輩がきょとんとした顔でこちらを見ていた。こちらもこちらでだいぶ怖い。煽りが間髪入れなすぎる。
後輩にドン引きしていると、人混みの奥の方からこちらに向かって声が聞こえてきた。
「おーい! 大月! 良かった、合流できた!」
「テメェ獅童! 無理やり引っ張ってきやがって!」
そういえば、さっき誰か呼んでたな。
聞き馴染みのない名前を叫びながらまたイケメン二人が登場する。爽やか系のイケメンとちょっとアウトローな感じの男前だ。あれらは確か……
「祐司! 政広! わり、ちょっちセンパイと話しとったんよ!」
やっぱり。人混みから這い出てきた二人は、二年生の中でもかなり有名な生徒である。
生徒会役員以外にも顔が良く目立っている生徒には非公認の親衛隊がつくこともあり、この二人──市ヶ谷祐司、東郷政広は親衛隊を持っている生徒だ。
ちなみに爽やかイケメンが市ヶ谷くんで不良男前が東郷くんね。
「え、なに? 知り合い?」
「ああ、両隣に座っとったけん話しかけたとですよ。ほんだら意外と意気投合ばして」
「コミュ力」
両隣に座ってた相手に初日で話しかけて仲良くなって食堂まで来ることある? 俺なら話しかけるのに一週間を要すんだけど。
「……って、え! 大月、この人がセンパイ?」
「名前も知らんって言ってたよなァ……? ンでチャラ男がここにいんだよ!」
市ヶ谷くんが目を瞬かせて俺を見る。その動作すらも爽やかで、自然にセットされた黒髪とゆるりと吊った二重に映えている。
反転、東郷くんは俺を見て明確に嫌悪感を示した。赤メッシュの入った金髪にバチバチに開けたピアス、俺より少し背の高い彼は俺のことがめちゃくちゃ嫌いだ。
コミュ障はね、そういうのわかるよ。常に嫌悪という感情に怯えてるから。
「酷い言い草だなぁ~」
「ほんまですね! 吊るしますか」
「対話とか知らない?」
切り捨てがあまりにも早すぎる。効いてないアピを一瞬で超えてきた。
「チャラ男テメェ……どうやってその狂犬懐かせてやがる、何かしやがってんなら容赦はしねぇぞ」
「田中委員長、大月はまだ入学初日です。手を出すというのなら生徒会執行部に報告して……」
「何もしてないんだけど本当に」
俺のイメージは一体どうなっているのか。というか狂犬と言われるような言動を既にしてるの? 何してるの?
「嘘つけ! 入学初日、転ばせようとしたとした生徒の足持って投げ飛ばして窓割ったヤツが何もせず懐くわけねぇだろ!!」
「何してんのォ!?!?」
思わず転校生──大月獅童くんかな。名前いかつっ──を振り返ると、叱られたポメラニアンみたいにしょんぼりとした。そのしょんぼりの使い道絶対違うけど!?
「大月くん、あのね~あんまりお説教みたいなの言いたくないんだけど」
「獅童です!」
「え? いや、大月くん」
「獅童です!」
「やちょっ、基本俺苗字で固定したいっていうか」
「獅童です!!」
「おおつきく」
「獅童です!!!!」
「ハイ……獅童くん……」
俺は弱い。昨日ぶり二回目の自覚である。そして全然手懐けられてない。全員目腐ってるんじゃないのか?
「!? 獅童が敬語を使う……!?」
「大月、人を敬えたのか……」
「ッチ、認めたかねぇが実力は本物みてぇだな」
手懐けられてはいたらしい。やばい転校生に目をつけられたかもしれん。
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